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I ニナルティナ王国とリュフミュラン国
対決 3 屋根で滑る女神、 渾身の一撃と再会…
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砂緒は一通り大きな窓から戦闘を見届けると、すぐに一般人侵入禁止の業務用階段を探し、展望台よりさらに上の階に出ると、鍵が閉じられていた業務用ドアを叩き潰して展望台の屋根の上に出た。もともと恐怖心がほぼ無いので、普段の地面の様にすたすたと歩きギリギリ際々の下が覗ける所まで来ると、屋根に手をついて落ちそうなくらいに身を乗り出して下を覗き込む。
「さあ、効くかどうか不明ですが、一発お見舞いしてみましょうか!」
そう言うと、魔ローダーが隠されていた基壇を潰した時の要領で、かつての建物だった時の全重量を拳の一点に込めるイメージを始めた。みるみる内に拳が透明な白色になり輝き始めた。
「ああ!? 何をしているんですかフルエレ、今は頑張らなくて良いのですよ!!」
砂緒が落下しながら、群青色魔ローダーに拳で一撃を加えてやろうと画策した途端に、フルエレの魔ローダーが二本目のタワーを倒されてなるまいと、三毛猫と揉み合いを始めた。
「だから止めなさいと言ってるでしょーーーーーっ!!」
叫ぶフルエレ。三毛猫もタワーへの攻撃を止めてフルエレに応戦する。長剣をシャッシャッと振り回し、周囲の建物の角っこや地面に転がる大型の魔車等を切り刻んで行く。その度にフルエレの魔ローダーが右に左に体を動かしてなんとかよけ続ける。
「だいぶ動きが良くなって来ましたよ! 本当に残念ですね、貴方にも武器があれば良かった!」
「だったらそれを頂戴ーーー!!」
フルエレはカッとなって、思わず転がっていた魔車を投げつけてしまう。簡単に弾かれる車体。
「あっ」
中に誰も乗っていないか慌てて拾って確認するが、ドアは閉じられたままでガラスも割れておらず、その状況で中に誰も乗っていなかった。
「ホッ……」
「隙あり!!」
万華鏡の様に魔車を顔に近づけて覗き込む、フルエレの魔ローダーに三毛猫の魔ローダール・二が斬りかかる。
はっっしっ!!
「おおおおおお!? 真剣白刃取りですと??」
上から覗き込む砂緒が驚嘆の声を上げる。偶然にもフルエレは三毛猫のル・二が振り下ろした長剣を両手で挟み込む。
「なんだと!? こんな技をどこで……」
「偶然!」
ぐぎぎぎぎぎと、両者は力比べをした。
「よっと……フルエレさん凄いですわね!」
「うわああああ!!」
砂緒が少し上を見ると、エレベーターガールに扮装した女神が展望台の屋根に手を着きながら、恐々降りて来ていた。
「何故来た貴様!!」
「まだ、伝える事を忘れていたのですわ!」
砂緒は一瞬だが女神のタイトスカートのスリットから覗く、パンストに包まれた大腿に目が行き、慌てて視線を逸らした。
「あ~今一瞬見たでしょう!」
「そんな事が言いたかったのですか?」
「違うの! 貴方にはまだ巨大化する能力があるのよ!」
「巨大化ですと?」
女神が帽子を押さえながら叫ぶ。
「ええ! でも人間がそのまま巨大化したら不気味ですから、やっぱり却下って事にしてたんですけど、魔ローダーに乗った時だけ発動出来るみたいなのですわ!」
「なる程……最初に魔ローダーに乗った時に大きく感じたのは、錯覚では無かったのですね」
その時、真剣白刃取りで力比べをしていた二機の魔ローダーが引き離され、フルエレの機体がニナルティナ湾タワーに背中から叩き付けられた。
「きゃああああああ!!」
ズザアアアアアアーと女神が滑り落ちる。慌てて砂緒が女神の手首を掴んだ。
「女神さん、貴方は落ちたらどうなるのですか? 死ぬのですか??」
「落ちても死なないし、そもそも浮く事も出来るしその前に違う次元に移動出来ますわよ」
「じゃ、なんできゃあああとか言ってるんですか?」
「ノリですわ」
「落とします」
「分かりました分かりましたわ、もう帰ります。また会えると良いですわね!」
「あっ」
砂緒が手首を掴んでいた女神は、一瞬で輝く粒子になって消えた。
「フルエレ、今は手を抜いて下さい」
下ではタワーを巡る攻防が続いている。
「きゃあああああああああ」
今度の叫び声は消えた女神では無く、フルエレの魔ローダーからでフルエレの機体は再び地面に叩き付けられた。
「そこで二本目のニナルティナ湾タワーが崩れる様を見ていなさい!」
そう三毛猫が言うと、塔にギリギリまで近づき、剣を振り下ろそうと構えた。
「今ですね!」
砂緒は一旦屋根の根元まで後退すると、一気に全速力で走り出した。と、同時に拳が白く透明になって輝き始める。
「てやああああああああああ!!!」
展望台の屋根の際まで行くと、加速を付けて躊躇無く飛び降りた。そのまま三毛猫の魔ローダール・二目掛けてダイブする。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!」
三毛猫は全く気付いていなかった。ぐんぐん近づく砂緒の拳。
グギイイイイイイイイインンンン!!!
砂緒の拳はル・二の長剣を握っている側の、人間で言えば鎖骨や肩甲骨や肩の辺りを直撃した。
「ぐがあああああ!?」
全くの不意打ちの突然の痛みにのけ反る三毛猫。ル・二は剣を落とし、握っていた方の手の肩は酷い脱臼か骨折でもした様に、その位置がダランと下がり、プレートアーマー越しからでもその状態異常が理解出来た。そしてル・二はそのままその場に座り込んだ。中の三毛猫も同様に自分の肩を押さえて冷や汗をかいた。
「何が……起こった!?」
呟く三毛猫。
「何!? 何がどうしたの??」
倒れていたフルエレの魔ローダーは、辺りを見回した。座り込み肩がダランと垂れ下がる三毛猫の魔ローダー。意味が分からず呆然としていると、聞き慣れた声が聞こえる。
「おおおいーー!! フルエレ、早く私を回収するのです! 乗せて下さい!」
「ああああ!! ああぁ!! 砂緒!! 来てくれたんだ」
一瞬でフルエレの目に涙が溢れる。しかしその声が当然三毛猫の魔ローダーのマイクにも拾われていた。
「ふざけた……真似を……させるかあああ!!」
痛みを我慢し、再び立ち上がろうとする三毛猫のル・二だった。
「いっけえ! 物理弾三連射!!!」
その時突然魔戦車の咆哮が光った。ずっと建物の陰に隠れて様子を伺っていた、速き稲妻メランの魔戦車だった。
ドドドン!!!
三発の物理弾がル・二の肩口に連続ヒットした。
「ぐわあああああああああ」
痛んでいた肩口に見事命中し、三毛猫は再び肩を押さえて座り込む。
「わはっ当たっちゃったあ! 逃げるよ!!」
「了解!!」
魔戦車はギュワーーーっと後退して建物の陰に隠れる。今度こそ魔戦車は姿をくらました。
「今だわ!!」
フルエレは魔ローダーで走り出すと、鼠を捕まえる様に砂緒をひょいっと掴むと、自分の座席のハッチを開け砂緒を放り込んだ。
「あはっ砂緒……ああっあああっ!! 来てくれた!!」
操縦席に入るなりバシャッとハッチが閉じられ、いきなりフルエレが座席から立ち上がって砂緒にがばあっと抱き着いた。
「砂緒、砂緒……!!」
「フルエレ……」
フルエレは抱き着いて涙を流し、砂緒も久しぶりの感覚に浸りフルエレを抱きしめた。
「凄く怖かったのよっ! 一人でずっと戦ってたの!!」
「分かっていますよ、本当によくやりましたね」
砂緒は久しぶりに短くなってしまった金色の髪を撫ぜながら言った。
「……私ずっと、砂緒は頭がおかしくて、私が……この子を導かなきゃ……とか思っていたの、でも違ったわ……私が砂緒が居ないと不安なの、私の方が砂緒にいつも一緒に居て欲しかったの……」
フルエレは涙を流しながら猫の様に、ぐりぐり耳や頭を砂緒の頬にこすり付ける。
「一部ひっかかる所はありますが、私も同じですよ。フルエレは弱々しくて、最初こんな人間が良く一人で生きていられるなって思っていました。でも今は……私もフルエレが近くに居ないと何も面白く無いです。お城の生活も牢屋に一緒に居た時に比べたら……いつも一緒に居た時に比べたら何の価値も無かったです」
二人は戦闘中なのも忘れ、フルエレは少し恥ずかしそうな笑顔で、目を潤ませながら狭い座席で見つめ合った。
「貴方達……全部スピーカーで流れてるって気付いていますか? 戦闘中に何を始めるんですかね? とても不快ですよ」
三毛猫は肩の痛みに全身をブルブル震わせながら、なんとか魔ローダーを立ち上がらせた。
「えええ!?」
フルエレは口に手を当てて絶句して赤面した。
「別に何を恥ずかしがるのですか? もっともっと皆に仲の良さをアピールしましょう」
「どうすれば音消せるの!? やっぱり貴方はしばらく黙っててよっ!!」
「ではこうしましょう」
よろよろ立ち上がる三毛猫の魔ローダーを見て、砂緒は身を屈めてフルエレの掌の上から操縦桿を握ると機体を走り出させ、ル・二の肩を思い切り蹴り上げる。
「ぐわああああああああああ」
再び崩れ落ちるル・ニ。
「この者を始末する前に、先に竜達を始末します」
そう言うと砂緒は、梯子を下りて下の座席に入った。
「なんと……兎幸が寝ているではないですか!」
「そうなの! 疲れて寝ちゃっているのよ、起こさないでね!」
「では仕方が無いですね。魔法自動人形の兎幸が電気に耐性がある事を祈りましょう!」
「ええ!?」
砂緒はバシャッと上下の操縦席の間にあるシャッターを閉じた。そしてシートベルトで固定された兎幸を起こさない様に操縦桿を握る。
「巨大化していない状態で、威力がどれ程の物か不明ですが、試してみましょうか……」
砂緒が握る操縦桿にバチバチと電気が伝わり始めた。二人が乗る魔ローダーが片腕を上げ、その指先から激しい稲妻が空に向かって伸び始めた。途端に雷雲が沸き起こり、空の一面に竜の様に稲妻が走り始めた。
「何だ!? 何が起こってるんだ!?」
怪我人救助に当たっている兵士や一般人が空を見上げた。
「凄い……広範囲に攻撃指定されていくわ……」
フルエレがモニター画面を見ると、港湾都市全面に散らばるニ十匹程のサーペントドラゴンに攻撃範囲が広がって行く。
「効くかどうか不明ですが、三毛猫にも当てておきましょうか」
砂緒が言うと、面前の三毛猫のル・ニにも攻撃範囲指定のカーソルがピッと付与された。
「では撃ちます!!」
二人の魔ローダーの腕が振り下ろされた。
「さあ、効くかどうか不明ですが、一発お見舞いしてみましょうか!」
そう言うと、魔ローダーが隠されていた基壇を潰した時の要領で、かつての建物だった時の全重量を拳の一点に込めるイメージを始めた。みるみる内に拳が透明な白色になり輝き始めた。
「ああ!? 何をしているんですかフルエレ、今は頑張らなくて良いのですよ!!」
砂緒が落下しながら、群青色魔ローダーに拳で一撃を加えてやろうと画策した途端に、フルエレの魔ローダーが二本目のタワーを倒されてなるまいと、三毛猫と揉み合いを始めた。
「だから止めなさいと言ってるでしょーーーーーっ!!」
叫ぶフルエレ。三毛猫もタワーへの攻撃を止めてフルエレに応戦する。長剣をシャッシャッと振り回し、周囲の建物の角っこや地面に転がる大型の魔車等を切り刻んで行く。その度にフルエレの魔ローダーが右に左に体を動かしてなんとかよけ続ける。
「だいぶ動きが良くなって来ましたよ! 本当に残念ですね、貴方にも武器があれば良かった!」
「だったらそれを頂戴ーーー!!」
フルエレはカッとなって、思わず転がっていた魔車を投げつけてしまう。簡単に弾かれる車体。
「あっ」
中に誰も乗っていないか慌てて拾って確認するが、ドアは閉じられたままでガラスも割れておらず、その状況で中に誰も乗っていなかった。
「ホッ……」
「隙あり!!」
万華鏡の様に魔車を顔に近づけて覗き込む、フルエレの魔ローダーに三毛猫の魔ローダール・二が斬りかかる。
はっっしっ!!
「おおおおおお!? 真剣白刃取りですと??」
上から覗き込む砂緒が驚嘆の声を上げる。偶然にもフルエレは三毛猫のル・二が振り下ろした長剣を両手で挟み込む。
「なんだと!? こんな技をどこで……」
「偶然!」
ぐぎぎぎぎぎと、両者は力比べをした。
「よっと……フルエレさん凄いですわね!」
「うわああああ!!」
砂緒が少し上を見ると、エレベーターガールに扮装した女神が展望台の屋根に手を着きながら、恐々降りて来ていた。
「何故来た貴様!!」
「まだ、伝える事を忘れていたのですわ!」
砂緒は一瞬だが女神のタイトスカートのスリットから覗く、パンストに包まれた大腿に目が行き、慌てて視線を逸らした。
「あ~今一瞬見たでしょう!」
「そんな事が言いたかったのですか?」
「違うの! 貴方にはまだ巨大化する能力があるのよ!」
「巨大化ですと?」
女神が帽子を押さえながら叫ぶ。
「ええ! でも人間がそのまま巨大化したら不気味ですから、やっぱり却下って事にしてたんですけど、魔ローダーに乗った時だけ発動出来るみたいなのですわ!」
「なる程……最初に魔ローダーに乗った時に大きく感じたのは、錯覚では無かったのですね」
その時、真剣白刃取りで力比べをしていた二機の魔ローダーが引き離され、フルエレの機体がニナルティナ湾タワーに背中から叩き付けられた。
「きゃああああああ!!」
ズザアアアアアアーと女神が滑り落ちる。慌てて砂緒が女神の手首を掴んだ。
「女神さん、貴方は落ちたらどうなるのですか? 死ぬのですか??」
「落ちても死なないし、そもそも浮く事も出来るしその前に違う次元に移動出来ますわよ」
「じゃ、なんできゃあああとか言ってるんですか?」
「ノリですわ」
「落とします」
「分かりました分かりましたわ、もう帰ります。また会えると良いですわね!」
「あっ」
砂緒が手首を掴んでいた女神は、一瞬で輝く粒子になって消えた。
「フルエレ、今は手を抜いて下さい」
下ではタワーを巡る攻防が続いている。
「きゃあああああああああ」
今度の叫び声は消えた女神では無く、フルエレの魔ローダーからでフルエレの機体は再び地面に叩き付けられた。
「そこで二本目のニナルティナ湾タワーが崩れる様を見ていなさい!」
そう三毛猫が言うと、塔にギリギリまで近づき、剣を振り下ろそうと構えた。
「今ですね!」
砂緒は一旦屋根の根元まで後退すると、一気に全速力で走り出した。と、同時に拳が白く透明になって輝き始める。
「てやああああああああああ!!!」
展望台の屋根の際まで行くと、加速を付けて躊躇無く飛び降りた。そのまま三毛猫の魔ローダール・二目掛けてダイブする。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!」
三毛猫は全く気付いていなかった。ぐんぐん近づく砂緒の拳。
グギイイイイイイイイインンンン!!!
砂緒の拳はル・二の長剣を握っている側の、人間で言えば鎖骨や肩甲骨や肩の辺りを直撃した。
「ぐがあああああ!?」
全くの不意打ちの突然の痛みにのけ反る三毛猫。ル・二は剣を落とし、握っていた方の手の肩は酷い脱臼か骨折でもした様に、その位置がダランと下がり、プレートアーマー越しからでもその状態異常が理解出来た。そしてル・二はそのままその場に座り込んだ。中の三毛猫も同様に自分の肩を押さえて冷や汗をかいた。
「何が……起こった!?」
呟く三毛猫。
「何!? 何がどうしたの??」
倒れていたフルエレの魔ローダーは、辺りを見回した。座り込み肩がダランと垂れ下がる三毛猫の魔ローダー。意味が分からず呆然としていると、聞き慣れた声が聞こえる。
「おおおいーー!! フルエレ、早く私を回収するのです! 乗せて下さい!」
「ああああ!! ああぁ!! 砂緒!! 来てくれたんだ」
一瞬でフルエレの目に涙が溢れる。しかしその声が当然三毛猫の魔ローダーのマイクにも拾われていた。
「ふざけた……真似を……させるかあああ!!」
痛みを我慢し、再び立ち上がろうとする三毛猫のル・二だった。
「いっけえ! 物理弾三連射!!!」
その時突然魔戦車の咆哮が光った。ずっと建物の陰に隠れて様子を伺っていた、速き稲妻メランの魔戦車だった。
ドドドン!!!
三発の物理弾がル・二の肩口に連続ヒットした。
「ぐわあああああああああ」
痛んでいた肩口に見事命中し、三毛猫は再び肩を押さえて座り込む。
「わはっ当たっちゃったあ! 逃げるよ!!」
「了解!!」
魔戦車はギュワーーーっと後退して建物の陰に隠れる。今度こそ魔戦車は姿をくらました。
「今だわ!!」
フルエレは魔ローダーで走り出すと、鼠を捕まえる様に砂緒をひょいっと掴むと、自分の座席のハッチを開け砂緒を放り込んだ。
「あはっ砂緒……ああっあああっ!! 来てくれた!!」
操縦席に入るなりバシャッとハッチが閉じられ、いきなりフルエレが座席から立ち上がって砂緒にがばあっと抱き着いた。
「砂緒、砂緒……!!」
「フルエレ……」
フルエレは抱き着いて涙を流し、砂緒も久しぶりの感覚に浸りフルエレを抱きしめた。
「凄く怖かったのよっ! 一人でずっと戦ってたの!!」
「分かっていますよ、本当によくやりましたね」
砂緒は久しぶりに短くなってしまった金色の髪を撫ぜながら言った。
「……私ずっと、砂緒は頭がおかしくて、私が……この子を導かなきゃ……とか思っていたの、でも違ったわ……私が砂緒が居ないと不安なの、私の方が砂緒にいつも一緒に居て欲しかったの……」
フルエレは涙を流しながら猫の様に、ぐりぐり耳や頭を砂緒の頬にこすり付ける。
「一部ひっかかる所はありますが、私も同じですよ。フルエレは弱々しくて、最初こんな人間が良く一人で生きていられるなって思っていました。でも今は……私もフルエレが近くに居ないと何も面白く無いです。お城の生活も牢屋に一緒に居た時に比べたら……いつも一緒に居た時に比べたら何の価値も無かったです」
二人は戦闘中なのも忘れ、フルエレは少し恥ずかしそうな笑顔で、目を潤ませながら狭い座席で見つめ合った。
「貴方達……全部スピーカーで流れてるって気付いていますか? 戦闘中に何を始めるんですかね? とても不快ですよ」
三毛猫は肩の痛みに全身をブルブル震わせながら、なんとか魔ローダーを立ち上がらせた。
「えええ!?」
フルエレは口に手を当てて絶句して赤面した。
「別に何を恥ずかしがるのですか? もっともっと皆に仲の良さをアピールしましょう」
「どうすれば音消せるの!? やっぱり貴方はしばらく黙っててよっ!!」
「ではこうしましょう」
よろよろ立ち上がる三毛猫の魔ローダーを見て、砂緒は身を屈めてフルエレの掌の上から操縦桿を握ると機体を走り出させ、ル・二の肩を思い切り蹴り上げる。
「ぐわああああああああああ」
再び崩れ落ちるル・ニ。
「この者を始末する前に、先に竜達を始末します」
そう言うと砂緒は、梯子を下りて下の座席に入った。
「なんと……兎幸が寝ているではないですか!」
「そうなの! 疲れて寝ちゃっているのよ、起こさないでね!」
「では仕方が無いですね。魔法自動人形の兎幸が電気に耐性がある事を祈りましょう!」
「ええ!?」
砂緒はバシャッと上下の操縦席の間にあるシャッターを閉じた。そしてシートベルトで固定された兎幸を起こさない様に操縦桿を握る。
「巨大化していない状態で、威力がどれ程の物か不明ですが、試してみましょうか……」
砂緒が握る操縦桿にバチバチと電気が伝わり始めた。二人が乗る魔ローダーが片腕を上げ、その指先から激しい稲妻が空に向かって伸び始めた。途端に雷雲が沸き起こり、空の一面に竜の様に稲妻が走り始めた。
「何だ!? 何が起こってるんだ!?」
怪我人救助に当たっている兵士や一般人が空を見上げた。
「凄い……広範囲に攻撃指定されていくわ……」
フルエレがモニター画面を見ると、港湾都市全面に散らばるニ十匹程のサーペントドラゴンに攻撃範囲が広がって行く。
「効くかどうか不明ですが、三毛猫にも当てておきましょうか」
砂緒が言うと、面前の三毛猫のル・ニにも攻撃範囲指定のカーソルがピッと付与された。
「では撃ちます!!」
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