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I ニナルティナ王国とリュフミュラン国
対決 2 ニナルティナ湾タワーを守れ!! エレベーターで再会…
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砂緒を乗せた魔戦車がようやく港湾都市の入り口に到着した。もう街に差し掛かる前からタウンハウスやアパートの複数階建築物が燃える様子が見えていて、近付くと中部各国軍やリュフミュラン正規軍や旧ニナルティナ軍の人々が、これ以上サーペントドラゴンが南下しない様に魔戦車で防衛線を張っていた。
「遅い! 何をやっていた砂緒! お前が一番必要な時に居ないってどういう事だ!」
「おい砂緒! フルエレはもう戦っているぞ!」
「お兄様何をしていたの? 冒険者隊の人達も怪我人救出に当たっていますよ!」
衣図ライグが魔戦車の隊列から飛んで出て来て叫ぶ。後ろからさらにイェラと猫呼クラウディアも出て来た。
「申し訳ない。まさかこんな事態になるとは思って無かったです! 最初は観光気分でノロノロ来ていたのです。一体何をどうすればいいのか教えて下さい。それにフルエレはどこにいるのですか?」
「ああ、みんな同じ様なもんだ。それだフルエレ! 物見の話によるとだな、フルエレは魔ローダーで一人でずっとドラゴンを狩り続けていたんだが、先程最新の報告では群青色の魔ローダーがもう一体現れて、どうやらそいつとやりやってるらしいぜ。それで俺たちは全てフルエレに任せっきりで、ドラゴンが南下しない様にだけ防衛線を張ってるって訳だ。情けないぜ」
衣図が頭を掻きながら申し訳なさそうに言った。
「なんと……フルエレが一人でですか? それは心配です。彼女は見た目から沈着冷静な聖女の様に思われがちですが、実は大変繊細かつ粗忽な部分が多々あるのです。一人で戦い続けているのは心に相当な負担のはずです。とにかく早く合流して上げたいものです。馬か何かありませんか?」
「何を言っているの!? もしかして一人で向かうつもりじゃないでしょうね?」
いきなりメランが割って入る。
「一人で行くつもりですが、何でしょうか?」
「ちょっといい加減にしてよ! 私達もう友達でしょう、何故頼まないの? 何故一緒に行こうと言ってくれないのっ!」
メランはえらい剣幕で砂緒に迫った。
「命の危険があります。そんな事に巻き込ませられません。貴方はここに居て防衛線のエースとして活躍するべきでしょう」
「ちょっと! 貴方達も砂緒の為に行ってくれるのよね?」
いきなりメランが回復職の少年と魔法剣士の少年に振る。正直に言って内心二人共そんな事に付き合いたくは無かったが、紅一点のリーダー的存在のメランに言われて渋々合意した。
「おー」
「そ、そうですね……」
「ほら! 二人共やる気まんまんよ!」
「私には嫌々にしか見えませんが」
「ほら、乗って!」
とにかく強引でぐいぐい前を行くタイプなメランの指示で、砂緒は魔戦車で港湾都市内部に向かう事となった。
「私達ももうすぐ怪我人救出で向かうつもりだ。恐ろしいがフルエレだけに苦労はさせられない」
「お兄様、濃い魔ローダーにもしかして三毛猫が乗っていても……殺して下さって結構です……」
大急ぎで向かう魔戦車の後ろから二人が手を振りながら走って追いかけ叫んだ。
「猫呼、イェラ気を付けるのですよ! 帰ってまた4人で楽しく夕食を食べましょう!」
砂緒も遠ざかりながら手を振って叫んだ。
「ああ、お兄様がまともな事言いだした……怖いです」
「今確実に兎幸の事忘れていたな」
二人は砂緒の魔戦車が見えなくなるまで手を振り続けた。
「しつっこい! なんで追いかけて来るのもう!」
雪乃フルエレの魔ローダーはなんとか誰も踏まない様に苦労しながらも、港湾都市を再び北上し港に向かっていた。その方が街の中よりも被害が少なくて済むと考えたからだが、もう残り二十匹前後のサーペントドラゴンは放置したままだ。まだまだ各地で赤い炎が見え、煙が立ち上っている。
「さあさあ、逃げているだけでは何も解決しませんよ! どうするんですか? この惨状を!」
三毛猫仮面の乗る魔ローダー、ル・二は魔車や馬車を蹴り、踏み、剣を振って建物を壊しまくりながら突き進む。
「どうするも何もそもそも私の責任じゃありません! 壊した者が悪いんです!!」
通信機能があるのか無いのか不明なので、二人とも外部魔法スピーカーで会話している。
「確かに正論ですね! ではお言葉通りに壊して壊して壊し続けましょうか」
そう言うとル・二は見えて来た二本のニナルティナ湾タワーの内の、一本に向かって突進を始めた。
「ちょっとどこに行くの!?」
今まで後ろを追いかけて来ていた三毛猫が不意に違う方向に走り出してびっくりする。
「そーら! こんな物は倒してしまいましょう! ははははは」
三毛猫の乗る魔ローダーは、複雑に鉄骨が組み合わされたニナルティナ湾タワーの根元部分にいきなりタックルを食らわす。グギイイイイイインという鈍く不気味な音がする。
「わわっ何をするの!! 中に人が居たらどうするのよ!」
フルエレは心配したが、既に避難済みで中に人は居なかった……
「そーらもう一回!!」
再びタワーにタックルを食らわすル・二。グギイイイイイン! 鈍い音と共に少し傾き始めるタワー。
「やめなさいって言ってるでしょーーーーーっ!」
堪らずフルエレの魔ローダーが剣を持つ手首を握り、群青色魔ローダーの巨体を押さえつけにかかる。
「ようやく戦う気になってくれましたか!」
ル・二は押さえつけて来たフルエレの魔ローダーの腰を掴むと、凄いパワーで相撲の様にぶん投げた。
「きゃああっ!」
遠くの海岸に投げ飛ばされるフルエレの魔ローダー。ドドドーンと凄まじい轟音が起きる。
「では今度はこうしましょうか!」
三毛猫は今度は魔ローダーの持つ長剣で、タワーの歪みかけた鉄骨の一部をシャシャッと切り裂く。バランスを欠いたタワーはとうとう倒壊を始めたのか、ギャワアアアという鉄同士が擦り合う様な不気味な音をたてながら小刻みに揺れ出した。
「だめっ!!」
すっかり中に人が居ると信じているフルエレは魔ローダーでタワーを支えた。
「何をしているんですか? さっさと倒してしまいましょうよ」
そう言いながらフルエレの魔ローダーの背中を蹴り始めた。
「痛い! 最悪……貴方猫呼ちゃんのお兄さんなんじゃないの? 猫呼ちゃんが悲しむ様な事は止めて!!」
一瞬濃い魔ローダーの動きが止まる。
「はて、誰ですかなそれは、そんな人物は知りませんが」
そう言うと今度はタワーを支える、さっきとは違う方の掌に剣先を突き刺した。
「ぎゃああああああああ」
魔法外部スピーカーで絶叫が流される。
「痛いでしょう! これ痛いって分かっててやってるのね? 最悪だわ」
「安心なさい、これで実際に傷つく事はありませんよ! あくまで気分だけ! 私も実際に女性に対して暴力を振るう様な事は反対です。ただ愛するだけ、安心して下さい!」
そう言って、突き刺ささったままの剣先をぐりぐりと回転し始めた。
「!!!!!!」
今度こそ表現のしようの無い激痛が走り、タワーから手を離し、剣先から逃げてしまった。
「そら、止めです!」
シャシャシャッと長剣を前後左右に振り続けると、とうとう轟音を立ててタワーが倒れかけ始めた。
「ああっタワーが……」
フルエレはタワーが凄まじい音を立てながら倒れる様を、指を咥えて見ているしか無かった。
ダダダダダーーーン……ドドドドドドドーーーン
表現の仕様の無い複雑で巨大な音を立てて最後まで倒れ込み、粉塵が舞い上がりその粉塵に隠れてしまう倒れたタワーの残骸。中に人は居なかったとは言え、周囲にどの様な被害をもたらせているか分からない。
「ハハハハハハハハ、愉快ですね」
「なんて事……」
フルエレは呆然と惨劇を見ているしか無かった。しかしその粉塵の中に砂緒が乗る魔戦車が疾走していた。
「前が見えないんですけど!?」
メランがキューポラから外に顔を出して、目を半開きにしながら周囲を見渡す。
「とにかくもう一本残ったタワーに向かって下さい、そこで降ろしてもらえば後は逃げてもらって結構です!」
「正気なの!? 今一本倒しちゃったのよ! 何で残りのもう一本に上るのよ!」
「そうですよ、馬鹿はもう一度同じ事を繰り返すという習性を利用するのです!!」
砂煙の中に隠れ、魔戦車はぎりぎりもう一本のタワーに接近すると、さっと砂緒が飛び降りメランに手を振った。
「気を付けて! これが最後なんて嫌ですよ~!」
メランも切ない顔をして手を振る。
「愛です愛、では!」
砂緒は久しぶりに手刀を切るとタワーの中に吸い込まれて行った。ギュワーっと急発進する魔戦車。とにかく踏まれない様に二体の魔ローダーから離れ、サーペントドラゴンに見つからない様に細心の注意で逃げまくる事にした。
「さて、階段を上るのはしんどそうですが……」
薄暗い非常階段を見上げてぞっとする砂緒。
「お客様……魔法力エレベーターが最上階の展望台までご案内します!」
砂緒は声のする方を思わず見た。なんと聞き覚えのある声だと思えば、最初にこの世界に導いた女神だった。
「何かご不満がありそうでしたので、遅れましたけど違う世界で再出発するかどうかお伺いに参りました……」
女神はエレベーターガールの顔でにっこり笑った。
「冗談言わないで下さい! とにかくエレベーターガールなら上に案内なさい!」
「それが答えなのね、分かりました。それではお乗りください、最上階展望台に参りま~す」
律儀に白い手袋の手を上に向ける女神。
「………」
無言で階数表示のランプを見つめる砂緒。
「今私の制服をじろじろ見ていますね、こういう制服が好きなのでしょう? 今度フルエレさんに着てもらえばどうでしょうか?」
「余計な事は言わずに早く着きなさい!」
余計な事を言われて無茶な事を言い返す砂緒。
「到着しました、最上階展望台で御座いま~す、あっ!」
エレベーターのドアが開いた途端に、砂緒は女神の事など一切無視して展望室の巨大なガラス窓に向かって走り出した。
「ははははは、案の定馬鹿は同じ事をしますね!」
約百メートルのニナルティナ湾タワーの展望室の窓から下を見ると、約二十五メートルの群青色魔ローダーが、タワーの鉄骨を蹴ったりタックルしたりしていた。
「遅い! 何をやっていた砂緒! お前が一番必要な時に居ないってどういう事だ!」
「おい砂緒! フルエレはもう戦っているぞ!」
「お兄様何をしていたの? 冒険者隊の人達も怪我人救出に当たっていますよ!」
衣図ライグが魔戦車の隊列から飛んで出て来て叫ぶ。後ろからさらにイェラと猫呼クラウディアも出て来た。
「申し訳ない。まさかこんな事態になるとは思って無かったです! 最初は観光気分でノロノロ来ていたのです。一体何をどうすればいいのか教えて下さい。それにフルエレはどこにいるのですか?」
「ああ、みんな同じ様なもんだ。それだフルエレ! 物見の話によるとだな、フルエレは魔ローダーで一人でずっとドラゴンを狩り続けていたんだが、先程最新の報告では群青色の魔ローダーがもう一体現れて、どうやらそいつとやりやってるらしいぜ。それで俺たちは全てフルエレに任せっきりで、ドラゴンが南下しない様にだけ防衛線を張ってるって訳だ。情けないぜ」
衣図が頭を掻きながら申し訳なさそうに言った。
「なんと……フルエレが一人でですか? それは心配です。彼女は見た目から沈着冷静な聖女の様に思われがちですが、実は大変繊細かつ粗忽な部分が多々あるのです。一人で戦い続けているのは心に相当な負担のはずです。とにかく早く合流して上げたいものです。馬か何かありませんか?」
「何を言っているの!? もしかして一人で向かうつもりじゃないでしょうね?」
いきなりメランが割って入る。
「一人で行くつもりですが、何でしょうか?」
「ちょっといい加減にしてよ! 私達もう友達でしょう、何故頼まないの? 何故一緒に行こうと言ってくれないのっ!」
メランはえらい剣幕で砂緒に迫った。
「命の危険があります。そんな事に巻き込ませられません。貴方はここに居て防衛線のエースとして活躍するべきでしょう」
「ちょっと! 貴方達も砂緒の為に行ってくれるのよね?」
いきなりメランが回復職の少年と魔法剣士の少年に振る。正直に言って内心二人共そんな事に付き合いたくは無かったが、紅一点のリーダー的存在のメランに言われて渋々合意した。
「おー」
「そ、そうですね……」
「ほら! 二人共やる気まんまんよ!」
「私には嫌々にしか見えませんが」
「ほら、乗って!」
とにかく強引でぐいぐい前を行くタイプなメランの指示で、砂緒は魔戦車で港湾都市内部に向かう事となった。
「私達ももうすぐ怪我人救出で向かうつもりだ。恐ろしいがフルエレだけに苦労はさせられない」
「お兄様、濃い魔ローダーにもしかして三毛猫が乗っていても……殺して下さって結構です……」
大急ぎで向かう魔戦車の後ろから二人が手を振りながら走って追いかけ叫んだ。
「猫呼、イェラ気を付けるのですよ! 帰ってまた4人で楽しく夕食を食べましょう!」
砂緒も遠ざかりながら手を振って叫んだ。
「ああ、お兄様がまともな事言いだした……怖いです」
「今確実に兎幸の事忘れていたな」
二人は砂緒の魔戦車が見えなくなるまで手を振り続けた。
「しつっこい! なんで追いかけて来るのもう!」
雪乃フルエレの魔ローダーはなんとか誰も踏まない様に苦労しながらも、港湾都市を再び北上し港に向かっていた。その方が街の中よりも被害が少なくて済むと考えたからだが、もう残り二十匹前後のサーペントドラゴンは放置したままだ。まだまだ各地で赤い炎が見え、煙が立ち上っている。
「さあさあ、逃げているだけでは何も解決しませんよ! どうするんですか? この惨状を!」
三毛猫仮面の乗る魔ローダー、ル・二は魔車や馬車を蹴り、踏み、剣を振って建物を壊しまくりながら突き進む。
「どうするも何もそもそも私の責任じゃありません! 壊した者が悪いんです!!」
通信機能があるのか無いのか不明なので、二人とも外部魔法スピーカーで会話している。
「確かに正論ですね! ではお言葉通りに壊して壊して壊し続けましょうか」
そう言うとル・二は見えて来た二本のニナルティナ湾タワーの内の、一本に向かって突進を始めた。
「ちょっとどこに行くの!?」
今まで後ろを追いかけて来ていた三毛猫が不意に違う方向に走り出してびっくりする。
「そーら! こんな物は倒してしまいましょう! ははははは」
三毛猫の乗る魔ローダーは、複雑に鉄骨が組み合わされたニナルティナ湾タワーの根元部分にいきなりタックルを食らわす。グギイイイイイインという鈍く不気味な音がする。
「わわっ何をするの!! 中に人が居たらどうするのよ!」
フルエレは心配したが、既に避難済みで中に人は居なかった……
「そーらもう一回!!」
再びタワーにタックルを食らわすル・二。グギイイイイイン! 鈍い音と共に少し傾き始めるタワー。
「やめなさいって言ってるでしょーーーーーっ!」
堪らずフルエレの魔ローダーが剣を持つ手首を握り、群青色魔ローダーの巨体を押さえつけにかかる。
「ようやく戦う気になってくれましたか!」
ル・二は押さえつけて来たフルエレの魔ローダーの腰を掴むと、凄いパワーで相撲の様にぶん投げた。
「きゃああっ!」
遠くの海岸に投げ飛ばされるフルエレの魔ローダー。ドドドーンと凄まじい轟音が起きる。
「では今度はこうしましょうか!」
三毛猫は今度は魔ローダーの持つ長剣で、タワーの歪みかけた鉄骨の一部をシャシャッと切り裂く。バランスを欠いたタワーはとうとう倒壊を始めたのか、ギャワアアアという鉄同士が擦り合う様な不気味な音をたてながら小刻みに揺れ出した。
「だめっ!!」
すっかり中に人が居ると信じているフルエレは魔ローダーでタワーを支えた。
「何をしているんですか? さっさと倒してしまいましょうよ」
そう言いながらフルエレの魔ローダーの背中を蹴り始めた。
「痛い! 最悪……貴方猫呼ちゃんのお兄さんなんじゃないの? 猫呼ちゃんが悲しむ様な事は止めて!!」
一瞬濃い魔ローダーの動きが止まる。
「はて、誰ですかなそれは、そんな人物は知りませんが」
そう言うと今度はタワーを支える、さっきとは違う方の掌に剣先を突き刺した。
「ぎゃああああああああ」
魔法外部スピーカーで絶叫が流される。
「痛いでしょう! これ痛いって分かっててやってるのね? 最悪だわ」
「安心なさい、これで実際に傷つく事はありませんよ! あくまで気分だけ! 私も実際に女性に対して暴力を振るう様な事は反対です。ただ愛するだけ、安心して下さい!」
そう言って、突き刺ささったままの剣先をぐりぐりと回転し始めた。
「!!!!!!」
今度こそ表現のしようの無い激痛が走り、タワーから手を離し、剣先から逃げてしまった。
「そら、止めです!」
シャシャシャッと長剣を前後左右に振り続けると、とうとう轟音を立ててタワーが倒れかけ始めた。
「ああっタワーが……」
フルエレはタワーが凄まじい音を立てながら倒れる様を、指を咥えて見ているしか無かった。
ダダダダダーーーン……ドドドドドドドーーーン
表現の仕様の無い複雑で巨大な音を立てて最後まで倒れ込み、粉塵が舞い上がりその粉塵に隠れてしまう倒れたタワーの残骸。中に人は居なかったとは言え、周囲にどの様な被害をもたらせているか分からない。
「ハハハハハハハハ、愉快ですね」
「なんて事……」
フルエレは呆然と惨劇を見ているしか無かった。しかしその粉塵の中に砂緒が乗る魔戦車が疾走していた。
「前が見えないんですけど!?」
メランがキューポラから外に顔を出して、目を半開きにしながら周囲を見渡す。
「とにかくもう一本残ったタワーに向かって下さい、そこで降ろしてもらえば後は逃げてもらって結構です!」
「正気なの!? 今一本倒しちゃったのよ! 何で残りのもう一本に上るのよ!」
「そうですよ、馬鹿はもう一度同じ事を繰り返すという習性を利用するのです!!」
砂煙の中に隠れ、魔戦車はぎりぎりもう一本のタワーに接近すると、さっと砂緒が飛び降りメランに手を振った。
「気を付けて! これが最後なんて嫌ですよ~!」
メランも切ない顔をして手を振る。
「愛です愛、では!」
砂緒は久しぶりに手刀を切るとタワーの中に吸い込まれて行った。ギュワーっと急発進する魔戦車。とにかく踏まれない様に二体の魔ローダーから離れ、サーペントドラゴンに見つからない様に細心の注意で逃げまくる事にした。
「さて、階段を上るのはしんどそうですが……」
薄暗い非常階段を見上げてぞっとする砂緒。
「お客様……魔法力エレベーターが最上階の展望台までご案内します!」
砂緒は声のする方を思わず見た。なんと聞き覚えのある声だと思えば、最初にこの世界に導いた女神だった。
「何かご不満がありそうでしたので、遅れましたけど違う世界で再出発するかどうかお伺いに参りました……」
女神はエレベーターガールの顔でにっこり笑った。
「冗談言わないで下さい! とにかくエレベーターガールなら上に案内なさい!」
「それが答えなのね、分かりました。それではお乗りください、最上階展望台に参りま~す」
律儀に白い手袋の手を上に向ける女神。
「………」
無言で階数表示のランプを見つめる砂緒。
「今私の制服をじろじろ見ていますね、こういう制服が好きなのでしょう? 今度フルエレさんに着てもらえばどうでしょうか?」
「余計な事は言わずに早く着きなさい!」
余計な事を言われて無茶な事を言い返す砂緒。
「到着しました、最上階展望台で御座いま~す、あっ!」
エレベーターのドアが開いた途端に、砂緒は女神の事など一切無視して展望室の巨大なガラス窓に向かって走り出した。
「ははははは、案の定馬鹿は同じ事をしますね!」
約百メートルのニナルティナ湾タワーの展望室の窓から下を見ると、約二十五メートルの群青色魔ローダーが、タワーの鉄骨を蹴ったりタックルしたりしていた。
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