男ですが聖女になりました

白井由貴

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IFストーリー(本編9話以降分岐)

IF 5話*

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※この『IFストーリー』は作者が考えていた複数ある没になったプロットの一つを文章化した『もしものお話』です。
※本編10話の途中でクロヴィスに出会わなかった世界線です。本編9話まで読み進めた後に読む事をおすすめします。




 今日はリアムが来る日だ。
 昨日はシスとユイットに散々抱かれたせいでまだ身体はだるいが、きっとポーションを飲めば少しは楽になるはずだと思っていた。しかしドミニクが来ない。いつもならもう来ている筈なのに、何故かドミニクが来なかった。

 俺は痛みが残り、情事後の気怠い身体を無理矢理奮い立たせてシャワー室へと向かう。後孔に指を突っ込むとドロリとした精液が大量に溢れ出てきて、思わず眉を顰めた。

「う、く……っ」

 最近は精液を掻き出す作業も自分ではしていなかったからか、うまく出来ない。漏れそうになる声を手の甲を噛んでなんとか堪え、俺は自分の胎内に残っている二人のモノを頑張って掻き出していた。

 ――その時だった。

 部屋の扉がガチャリと開いた音がし、誰かがこちらにやってくる足音が聞こえてきた。そしてシャワー室の扉が開かれる。俺は驚きのあまりそのままの状態で固まってしまった。

「……ラウル?」

 なんでリアムが今ここにいるんだろう。今は朝のはずだ。なのに、何故夜に来るはずのリアムがここにいるというのだろうか。

 そう考えた瞬間、自分の中に埋めたままだった指がうち壁を引っ掻き、ぶるりと体が震えた。最悪だ。リアムが見ているこの状態でこれは……最悪としか言いようがない。ただでさえリアムは俺が大聖堂の奴らに抱かれていることを知らないのに、いきなりこんな格好を見たリアムの心境といったら……想像したくもない。

 急いで胎内から指を抜くと、ドロリとした大量の精液が再び流れ出て、足を伝っていく。その様子を見ていたリアムが一歩シャワー室に足を踏み入れた。

「り、リアム……?」
「ラウル、これはなんだ?」

 これと指差されたのは俺の大腿部に伝う白いどろっとした精液である。これはもう隠しようがない。このシャワー室に充満する精液の匂いとこの見た目が、彼に全てを教えていた。

 泣きたい、逃げ出したい。もう子どものようにわんわんと泣き出してしまいたい気分だった。

 リアムはいつもの柔らかな表情ではなく、感情を全て削ぎ落としたような表情で俺の臀部を見下ろしている。俺はもう一度リアムを呼ぶが、彼は無表情で同じ言葉を繰り返した。

「これは、なんだ?」
「こ、これは……」

 何と言えばいいのだろう。いや、言い繕う必要もないのか?でも、この期に及んでもまだリアムには知られたくない自分がいて、言葉が詰まってしまう。リアムが一歩踏み出して俺に近づき、大腿部を流れる精液をそっと指で掬った。

「あ……それ、きたな……」
「これは、精液か?誰のだ?」
「……そ、それは」

 精液のついた指先を鼻先に差し出され、俺はついに観念した。今までの事をぽつりぽつりと問われるままに話し、それが終わる頃には俺はリアムの温かな腕に抱き締められていた。

「話してくれて、ありがとう。辛かったな、今まで頑張ったな……何も知らなくて、すまない」

 頭を撫でられながら優しくそう声をかけられ、俺の涙腺は崩壊した。リアムが来ないとわかってからの俺はどうにかして自分を奮い立たせ、強がっていただけだった。聖女の死という、俺たちの未来を見るかのような出来事に恐怖で怯えているだけだった。
 それでも朝はやってくる。救いの朝であり、絶望の朝が。起きてからは自分を奮い立たせるのに必死だった。もう何も感じないように、ただ役目を全うするだけの聖女であるために必死だった。誰にも気付かれていないと自負していたのに――リアムは一目見た瞬間に全てを察したように俺を包み込む。

 泣きじゃくる俺を抱き締めるリアムは、俺に少し断ってから服を脱いで扉の隙間から廊下へと投げた。そして裸になったリアムは泡立てたタオルを俺の肌に滑らせていく。俺は慌ててその手を止めるが、リアムは眉尻を下げて笑った。

「俺に、洗わせてくれないか?痛くはしないし、丁寧に洗うから……ラウルの身体を綺麗にさせてくれ」
「っ……」
「体、痛むんだろ?」

 恥ずかしいから自分ですると言った俺に、リアムは困った表情をした。確かに彼の言う通り体は痛む。体は痛むし、うまく胎内のモノを掻き出せなかったからリアムの申し出は本来であればとてもありがたい事なんだけども、なんだけども……ただ恥ずかしいのだ。

 自分が好意を寄せる人に全身を洗ってもらい、さらには他の奴らに中に出された精液を掻き出させるなんて、なんて拷問なんだと思う。これは俺にとってもリアムにとっても、あまりいい提案ではない。

 しかしリアムはそんな俺の気持ちを知ってか知らずか、どんどんと身体を洗っていく。そして残すは掻き出すだけとなった時、リアムはまた無表情になった。

「り、リアム……恥ずかしいからやっぱり自分で……ひうっ」
「すっ、すまない!痛かったか?」
「あっ、ちょ……うごか、あぁっ」

 リアムの指が俺の後孔につぷりと差し込まれ、羞恥心で溶けてしまいそうになった時だった。リアムの細く長い指が俺の中の前立腺を擦り、ぴくんと体が跳ねて声が出たのだ。普段の俺の声とは違う甘く高い声に驚いたのか、彼は慌てた表情で俺を見上げるが、慌てて抜こうとした指が俺の良い所に当たって上擦った声が出た。

 そんな俺に益々顔を赤くしたリアムは、指を入れたままかちりと固まってしまう。
 どうやら俺の身体は昨日暴かれ過ぎたせいでまだ敏感になっているようだ。その証拠にさっきまで萎えていた俺の陰茎が少し固くなっている。

 ああ、今すぐ逃げ出したい。こんな姿を曝け出して平気な奴なんていないだろう。俺は無理だ。今すぐここから逃げ出したい。

 そう思っていると、不意にすまないと耳元で聞こえた。それがリアムの声だとわかった時には既に彼は入り口の扉に手を掛けており、外に出ようとしていた。俺は咄嗟にリアムの腕を掴んだ。

「ま、まって!」
「離してくれ!このままでは俺はラウルを……」

 その言葉にリアムの顔から下へと視線をずらすと、そこにはぎんぎんに聳え立ったリアムの陰茎があった。見るからに固く、太い立派な陰茎に、俺はごくりと喉を鳴らす。

 俺はリアムの手を引いてシャワー室に引き戻すと、リアムの足元に跪いた。そして徐に今にも爆発しそうなその陰茎に手を伸ばし、リアムを見上げる。

「俺で、良ければ……手伝おうか?く、苦しそうだし……」
「だっ、大丈夫だ!そんなことよりラウルが風邪を」
「俺、リアムなら良いよ?……他の奴らに好き勝手されるより、リアムに抱かれた方がずっと良い。あ、でも俺今他の奴の精液ついてるから手だけでも良い?流石に他人の精液なんて気持ち悪いだけだろうし」

 気付けばそんな事を口にしていた。さっきまでの羞恥心は勿論あるが、それ以上にリアムが苦しそうなのは嫌だと思った。

 まだ胎内のものは全て掻き出せていない。だから後孔は使えないし、散々使ってきた口も洗ってはいるが嫌だろう。それなら汚くても手ならもう一度洗ってからすることもできると提案してみたのだが、俺は何かを間違ってしまったかもしれないとリアムの表情を見て思った。

 
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