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4章:変化する日常

17:当たり前の幸せ

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「いただきます」

 二人で声を合わせて言って食べ始める。

 とろっとしたカレーに少し大きめに具のカレー。カレールーはいつも使っているものを使った。けれど、なんだかいつもと味が少し違う気がする。ガレットが作ったからかな。いつもと違う。でも美味しい。

「どうだい? 章太郎?」
「うん、美味しいよ」
「そうかい……! 良かったよ!」

 ガレットの笑顔に俺も嬉しくなる。カレーにカツを絡めて食べる。揚げたばかりのサクサクのカツにとろみの強いカレーが絡んで、さらに美味しく感じられる。夢の中で食べていた味は思い出せないけれど、夢で見てから抱いていたカツカレーを食べたいという気持ちはしっかりと満たされた。

「これからもっといろんな料理を作っていきたいね」
「ああ……! いろいろ作ろう……! 和食も洋食も中華もデザートも!」
「そうだね。楽しみだ……!」

 俺達は食事をしながらこれから作りたい料理のことや、これからのことを話す。誰かが一緒にいて、こうして喋りながら食事が出来る。一人で作って一人で食べて、を繰り返していた時には考えられなかった。

 ああ、そういうことだったのか。あの時見た夢は、最近では当たり前の日常の一部のような夢だったけれど、改めて、幸せなことなんだな。と思った。確かに、幸せな夢だった。

 一瞬、今のこの時間が夢じゃないかと不安になって、カレーをもう一口入れて、咀嚼する。ぴりぴりとした辛さと美味しさが伝わる。この味はちゃんと現実だ。

「どうしたんだい?」

 もしかして少し挙動不審になっていたのかもしれない。ガレットが不思議そうな表情をしていた。

「あ、いや、なんでもないんだ」

 一度スプーンを置いて、小さく息を吐いた。

「……あのさ、ガレット」
「ん、なんだい?」

 俺は、彼に改めて想いを伝えようとした。まだ、彼の想いに対しての答えは返せないけれど、これだけは言える。

「……その、いつも、ありがとう……。それに、これからも、よろしく……。一緒に料理作ったりとか、ガレットと過ごすの、楽しいし、幸せだから……」

 俺が言うと、ガレットは少し驚いた表情をした。でもそれはすぐに柔らかな笑顔に変わる。

「こちらこそ、これからもよろしく。ワタシも、章太郎と過ごす日々は楽しいし、とても幸せだよ」
「……ありがとう」

 彼の笑顔を見て、少し心臓が跳ねた。でも、これは、彼の抱く思いとは違うと想う。
 やっぱり、まだ、この気持ちに名前を付けることは早い気がする。でも、こうしてガレットと二人でいられるのは幸せだった。
 この当たり前の日々が幸せだということを噛みしめながら、俺とガレットは夕食を食べ進めていた。
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