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2章:魔法使いガレットとの穏やかな日々
9:買い物に行こう その2
しおりを挟むその店はアイスクリーム屋だった。ちょうど昼食の時間だから混み具合が緩やかなのかもしれない。この後間もなく混んでいくのだろう。俺達が考えている間にも、ちらちらとフードコートの席から移動して並び始めている客が出てきている。
あまり迷っている時間はなさそうだ。
「どうする? 並んでみるかい?」
「……そうだな。ガレットも、それでいいかい?」
「食事の前にデザート、というのもなかなか楽しい経験になりそうだからね」
どちらかというとがっつり食事をしたい、という感覚が強いけれど、それでも、今を逃したら多分また食べはぐれることになりそう。それに、ガレットの言う通り、アイス――デザートを先に食べるのも楽しい経験になりそうだった。
俺達は列に並ぶ。店の店員さんがせわしなく注文を取りつつアイスを掬っている。カウンターの上にはフレーバー表と値段が記載されていた。バニラにチョコレートにいちごといった定番の味から、レモンパイ味といった珍しい味もある。コーンとカップから選べるみたいだ。
ガレットは首をかしげながらフレーバー表を眺めている。こちらの世界に来たばかりのガレットにとって、きっと味の想像のつかないものばかりなのだろう。
「おすすめはあるかい?」
「初めての店だからな……。俺がよく食べてるのはチョコレート味だけれど……。バニラも美味しいし……」
少し考えて、俺は彼に提案する。
「……その、もし良かったら、違う味を注文して食べてみないか……?」
小さい頃にやっていたこと。違う味を注文することで、違う味が楽しめる。それに、もしもガレットが注文したものが口に合わなかった時に、交換することも出来るから。
「いい案だね……!」
列に並んでいる間、二人で何味を食べるか話し合う。
「食べてみたい味とかあるか? もしよかったらそれ注文するけど」
「そうだね……」
長いと思っていたけれど、二人で会話をしていたらあっと言う間に俺達の順番になった。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「チョコレート味とオレンジ味を一つずつ。どちらもコーンでお願いするよ」
チョコレートは俺が好きなのと、この間映画を見た時に食べていたから。オレンジ味は、ガレットが注文した。朝食の時にオレンジジュースを飲んだから馴染みがあるんだと思う。
ガレットがにこやかな笑みを浮かべながら颯爽と注文する。店員さんは慣れた手つきで注文を受け、そしてアイスクリームを掬い始める。
あっという間に二人分のアイスクリームができあがった。
「お待たせ致しました」
「ありがとう」
ガレットが二人分のアイスクリームを受け取り、俺が代金を支払う。会計を済ませて、列から離れた。
「はい、章太郎」
「ありがとう」
ガレットが俺の方にチョコレート味のアイスクリームを手渡してくれた。それを俺は受け取る。
フードコートは未だに混んでいたから、俺達二人は一度店外に出て、外にあるベンチで食べることにした。
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