聖女の取り巻きな婚約者を放置していたら結婚後に溺愛されました。

番外

勉強

「……わかんない。わかんないよう…」
机に突っ伏す。ベンネルにマナーを教わり始めて3日目、私は挫折しかけていた。
礼の角度って何？テーブルマナーって難しすぎない？そもそも何でニコニコ笑っちゃいけないの？
マナーに加えてこの国の歴史なんかも覚えなきゃいけないし。文系科目苦手なんだよぉ。
聖女としてやんなきゃいけないこと、王太子の妻になるためにやらなきゃいけないこと。
…やることが多すぎる。
窓の外で雷がゴロゴロ鳴っている。最近ずっとだ。
私が頭を抱えると雨がザーザー、癇癪を起こすと風が唸り、ペンを放り投げると雷が落ちた。
この国始まって以来ぐらいの異常気象らしい。
…私のせいじゃないよねこれ。
「わからないのも無理はない。僕たちが子供の時から習っていて身についたものだからね。ゆっくり頑張ろう」
ベンネルが背中をさすって慰めてくれる。
ベンネルは優しい。私が出来なくても怒らない。一緒にいる側近の3人は私が間違えると顔を顰めるから怖い。
これならアイリスさんに教わったほうがよかったかなぁ。
酷い天気をBGMに私は唸りながら頑張った。
…それが変わったのは勉強を始めて1週間目。

「すぐに出来なくても大丈夫だよ、ゆっくりやろう」
「マナーはまだでも、数学はできてる。すごいね」
「アカリはすごい」
「…頑張ったご褒美に」
ベンネルが優しいのは変わらない。けどそれに加えて側近の3人も私に優しくなった。
ベンネルに肩を抱かれて、レーブに手を握られて、カルに頭を撫でられて、ブレイグにアクセサリーをもらう。
…なんか逆ハーレムっぽい？
かっこいい4人の貴族の青年に囲まれた聖女の私…なんてね。側近の3人にも婚約者がいるらしいんだよね。ブレイグには最近できたばっかりらしいけど。貴族って政略結婚ばっかりで大変だね。
唐突すぎてよく分かんないけど、みんなが優しくて、勉強もやりやすくなって、私はニコニコ、空も晴れ晴れ。雨も止んで今週はめちゃくちゃ過ごしやすい天気らしい。
学園入学まで後一月。もう少し頑張ろう。