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番外

愉悦

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「…レーブ様」
「…シャガート…」

「カル」
「…どうしてここに、ブラーナ」

「ベンネル、誰この人たち?」
私がこっそり小声で聞くと、2人の婚約者だと教えてくれた。
みんなが私に優しくなってそう日が立たないある日、王宮にレーブとカルの婚約者がやってきた。
2人ともタイプの違う美人だ。
薄い銀髪に濃い緑の瞳のおっとりした感じの美人さんがレーブの婚約者のシャガートさん。
短い金髪に紫の瞳のかっこいい感じの美人がカルの婚約者のブラーナさん。
シャガートさんは悲しそうに、ブラーナさんは怒ったように婚約者を見つめてる。顔を歪めてても絵になるってすごいね。
「…アイリス様が、王宮に来るようにと、何か試したいことがあるからと」
レーブから目を離さずにシャガートさんが言う。
試したいことってなんだろう。アイリスさんがってことは私、聖女関連?2人の婚約者が私に関連することって?
「…アイリス様がここにいないのなら、私たちはここで失礼させてもらうことにします。行こう、シャガート」
ブラーナさんがシャガートさんを促して出て行こうとする。
そのブラーナさんの腕をカルが掴んだ。
「…まってくれ」
「…なにか言いたいことでも?」
ブラーナさんに睨まれてちょっとだけ気まずそうな顔をするカル。
「…後で、話を」
その瞬間、外がピカッと眩しく光って思わず飛び上がる。
雷だ。すんごい突然。続いて雨も降り出した。ここ数日降らなかったのに。
外を呆然と見ていたカルは何故か私のことを一瞬ちらっと見て、ブラーナさんの腕を掴んでいた手を離した。
「…またいつか」
カルがブラーナさんから離れて私の方に近づいてくる。
「…学園で会おう」
レーブもシャガートさんに一言だけ残して私の方に来る。
「…勉強を続けようか」
「…それかお茶にするか」
レーブとカルを見つめていた婚約者さんたちは我に返ったように静かに礼をして去って行った。
…去り際のあの視線。私のことを悲しげな嫉妬で、怒りに隠れた羨みで見つめる瞳たち。
なんだろうこれ。私は何がこんなに嬉しくて楽しいんだろう。分かんないのになんだか気持ちいい。俯いた私を心配したのかベンネルに肩を抱かれる。私がベンネルたちに囲まれている中、ブレイグはただぼんやりとした視線で周囲を見回しているだけだった。
雨もすっかり止んでいた。
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