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魅力
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「彼女はとても魅力的な女性でした。あなたを初恋の人として婚約者になってもらうことができた私でも、彼女のことを魅力的な異性だと感じました。他の方も、女性たちも、彼女のことを好意的に感じることが多かったといいます。それが聖女としての彼女の魅力と言ってしまえばそうなのでしょうが、彼女の能力が無意識に私たちの精神に干渉していたのかもしれないと、私自身は思っています。」
アカリ様のことを思い出します。ピンクの髪にピンクの瞳、輝く笑顔がとても可愛らしい方でした。友人を傷つけた相手としてアカリ様のことを苦手になっても、あの人がかわいらしい女性だと思う気持ちは変わりませんでした。
「封印されてもなお、アカリ様の能力は強力でした。彼女は優しい人でしたが、彼女が敵意を持った相手に対する能力の暴走がどうなるのかわからなかったのです。私たちがアカリ様の取り巻きをしながら、あなたたちに近づかなかったのは、あなたたちを守る意味合いもありました。・・・ミア。あの日、あの聖女のお茶会の日、あなたはアカリ様の無意識の敵意によって意識を失いました。もし彼女が能力の発動を抑えなかったら。意識的にあなたを害そうとしたら、あなたは死んでいたかもしれません。幸い、彼女はすぐに能力を抑えることが出来ましたし、あなたを害そうとする意志はありませんでした。・・・あなたが倒れた後、アカリ様は、ただつまらなかっただけなのだと、怯えたように何度も何度もつぶやかれていました。」
あの日を思い出します。心臓が痛くなって地面に倒れた私。ブレイグ様がアカリ様の名前を呼んだのは、聖女の力を抑えさせるためだったのですね。
「無意識の力の発動で、アカリ様は人を害してしまいました。彼女の望むことではないとしても、それは国にとっても問題となります。アカリ様には伝えないまま、聖女の力を完全に封印することが決まりました。卒業式の日、アイリス様がアカリ様に贈られたのは、聖女の力を封じ込める宝石のついたネックレスです。現在アカリ様は聖女の力の大半を失っているそうです。アイリス様のもとで、聖女の力を自分の意思で完全に封じ込めることが出来たなら、彼女は再び聖女として私たちの前に姿を現すことが出来るかもしれません。・・・ベンネル王子ですが、アカリ様の能力が封印された後、しばらくの間彼女に会わせてくれと暴れていらっしゃいましたが、だんだんとまるで憑き物が落ちたかのように落ち着かれたそうです。アカリ様を好きな気持ちは変わらないが、メーレ様に謝りたいと、なぜあんなひどい事ができたのかわからないと。・・・メーレ様次第ですが、おそらくお二人はご結婚なされると思います。今後どうなるのか私たちにはわかりませんが、少しでも事態が良くなることを祈るしかないです」
ふぅとため息をつきうなだれたブレイグ様をしり目に私は必死に頭の中を整理していました。
ブレイグ様たちがアカリ様の取り巻きをしていたのは王命で、理由は強力な力を持つ彼女の機嫌を損ねないため。私が彼女にたびたび近寄られたのは私がブレイグ様のことで嫉妬しなかったから。そもそもアカリ様が好きなのはベンネル第一王子で二人は両想いの恋人同士だったけれど、それも聖女の力のせいかもしれない・・・
「一晩で知っていい情報の量ではないですね」
私は口の端に苦笑いを浮かべます。これだけの情報を知って、まだ私とブレイグ様に関することはまだほとんど手付かずなのだから、私はどうしたらよいのでしょう。
「・・・これ以上は混乱を招くだけでしょうから、今日はこれぐらいで一度お暇します。私は自室にいるので何かあったら呼んでください。すぐに駆け付けます」
立ち上がったブレイグ様の腕に鈴が鈍く光ります。ちりちりと小さな音で鳴る鈴。私はふと呟いてしまいました。
「・・・その鈴はブレイグ様にとって、大事なものですか?」
驚いたように目を丸くしたブレイグ様は続いて穏やかな笑顔を浮かべます。
「・・・えぇ、初恋の方に貰った物ですから」
そして静かにブレイグ様は部屋から出て行きました。
アカリ様のことを思い出します。ピンクの髪にピンクの瞳、輝く笑顔がとても可愛らしい方でした。友人を傷つけた相手としてアカリ様のことを苦手になっても、あの人がかわいらしい女性だと思う気持ちは変わりませんでした。
「封印されてもなお、アカリ様の能力は強力でした。彼女は優しい人でしたが、彼女が敵意を持った相手に対する能力の暴走がどうなるのかわからなかったのです。私たちがアカリ様の取り巻きをしながら、あなたたちに近づかなかったのは、あなたたちを守る意味合いもありました。・・・ミア。あの日、あの聖女のお茶会の日、あなたはアカリ様の無意識の敵意によって意識を失いました。もし彼女が能力の発動を抑えなかったら。意識的にあなたを害そうとしたら、あなたは死んでいたかもしれません。幸い、彼女はすぐに能力を抑えることが出来ましたし、あなたを害そうとする意志はありませんでした。・・・あなたが倒れた後、アカリ様は、ただつまらなかっただけなのだと、怯えたように何度も何度もつぶやかれていました。」
あの日を思い出します。心臓が痛くなって地面に倒れた私。ブレイグ様がアカリ様の名前を呼んだのは、聖女の力を抑えさせるためだったのですね。
「無意識の力の発動で、アカリ様は人を害してしまいました。彼女の望むことではないとしても、それは国にとっても問題となります。アカリ様には伝えないまま、聖女の力を完全に封印することが決まりました。卒業式の日、アイリス様がアカリ様に贈られたのは、聖女の力を封じ込める宝石のついたネックレスです。現在アカリ様は聖女の力の大半を失っているそうです。アイリス様のもとで、聖女の力を自分の意思で完全に封じ込めることが出来たなら、彼女は再び聖女として私たちの前に姿を現すことが出来るかもしれません。・・・ベンネル王子ですが、アカリ様の能力が封印された後、しばらくの間彼女に会わせてくれと暴れていらっしゃいましたが、だんだんとまるで憑き物が落ちたかのように落ち着かれたそうです。アカリ様を好きな気持ちは変わらないが、メーレ様に謝りたいと、なぜあんなひどい事ができたのかわからないと。・・・メーレ様次第ですが、おそらくお二人はご結婚なされると思います。今後どうなるのか私たちにはわかりませんが、少しでも事態が良くなることを祈るしかないです」
ふぅとため息をつきうなだれたブレイグ様をしり目に私は必死に頭の中を整理していました。
ブレイグ様たちがアカリ様の取り巻きをしていたのは王命で、理由は強力な力を持つ彼女の機嫌を損ねないため。私が彼女にたびたび近寄られたのは私がブレイグ様のことで嫉妬しなかったから。そもそもアカリ様が好きなのはベンネル第一王子で二人は両想いの恋人同士だったけれど、それも聖女の力のせいかもしれない・・・
「一晩で知っていい情報の量ではないですね」
私は口の端に苦笑いを浮かべます。これだけの情報を知って、まだ私とブレイグ様に関することはまだほとんど手付かずなのだから、私はどうしたらよいのでしょう。
「・・・これ以上は混乱を招くだけでしょうから、今日はこれぐらいで一度お暇します。私は自室にいるので何かあったら呼んでください。すぐに駆け付けます」
立ち上がったブレイグ様の腕に鈴が鈍く光ります。ちりちりと小さな音で鳴る鈴。私はふと呟いてしまいました。
「・・・その鈴はブレイグ様にとって、大事なものですか?」
驚いたように目を丸くしたブレイグ様は続いて穏やかな笑顔を浮かべます。
「・・・えぇ、初恋の方に貰った物ですから」
そして静かにブレイグ様は部屋から出て行きました。
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