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3-3.人恋しさに駆られて
しおりを挟むー数時間後
とは言え、流石に深く入りすぎたな。
薬草も木の実も充分に採取出来た。しかし……また肉がなかった。……この森、本当に動物いるのか?トカゲやネズミくらい居て良さそうなのになぁ。もう少し探索して、居ない様ならさっさと引き上げよう。
「………てのが、もう3回目なんだよなぁ。」
引き際が肝心だ。わかってはいる。けど、中々決まらない。こっちの方には、何があるのやら……ん?
「……明るい?」
鬱蒼とした森の中で文字通り異彩を放つ様に明るい場所がある。
「(タッタッタッタッ)」
反射的に走っていた。もし、この予想が正しければ……
〈(サワッ…サワサワサワッ……)〉
「っ…………」
急に開けた所に…………いや、開けているどころではない。
「……やっぱりそうか。」
眼前には、見渡す限りの草原と青空……予想していた通り、森の端まで来たようだ。そして……
「……道?」
奥へ向かって道が続いている。土を踏み固めて出来た畦道の様に簡素に整備されたそれは、これまでの獣道や山道とは明らかに異なっていた。
「……て事は………」
少なくとも、この道は人の住む町か村へ延びている事になる。
「………」
森の中に、あの人の手がかりは見つかっていない。少なくとも、森の中よりは町や村にいる可能性の方が高い事は、明らかだろう。
「………」
いや、流石に危ないし…引き返した方が良いよな。
「………」
鏡で自分の姿を見たが、とても周囲から受け入れられる様な容姿ではない。
「………」
そもそも、服はどうする?身に纏っているボロ切れと包帯しかない。
「………」
今日の所はさっさと帰ろう。小屋に戻って、食事をして、プヨと話をして、就寝して、そして……明日も…あの人を………………………
「………」
「(モサ…モサモサモサ………)」
人に見つからなければ良いだろう。
そう考えて草原の草を蔦で編んで、即席のカモフラージュネットを作った。
道からは充分に離れた状態で、第4匍匐で進む。
前世で数回やって以来だが、案外出来るものだな。
………結局、人恋しさには勝てなかったな。
それにしても、随分とチープな姿だな。まぁ、人に出会っても話をするつもりはない。じっと身を潜めて声が聴ければ充分だ。
「(モサ…モサモサモサ…)……ふぅ。」
と、かれこれ数時間こうして進んだ結果、集落らしき場所が見えて来た。
「………」
さて、どうするかな。
集落は見つけた。だが、全然人の気配がしないな。廃村とかだろうか?いや、それにしては整備がされている様な……
「(スクッ)……拉致が開かないな。」
そうしてあれこれ考えている間に、そろそろ日が暮れる頃合いだ。
灯りも無しに、今から小屋まで戻るのは無理がある。出来れば、あそこで一泊……
「(タタッタタッ)」
それが無理ならせめて灯りをお借りして行こう。
「……っ!(ソロッ)」
意を決して、覗き込む。
「……馬鹿みたいだな。」
間抜けの空だった。
しかし、それにしては内装が整っている。人の手が加えられて数ヶ月も経っていない様だ。
だか、誰もいない。
「……まぁ、寧ろ好都合かな。」
とりあえず、ここで一泊させて貰おう。幸い、食料や薬草は採れたてのものが充分にある。
あとは……
「……廃村でも、結構ちゃんとしたものがあるな。」
調理場や井戸の他にも、子供用の服や食器類もあった。薬の調合や食事は問題なさそうだな。
服も、取り敢えず借りておこう。
少なくとも、このボロ切れよりはマシのはずだ。
それにしても……
「(ドテッ)……なんか、疲れたな。」
取り敢えず、今日の所はさっさと寝よう。明日の事は、明日の朝に考えよう。
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