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第27章 後継者・橋本浩一
2話
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「お互いが好きで、自然にする行為なんだよ、そうなるまで、お互いを良く知ること…… いいかい?」
尚子は橋本の言うことが信じられなかった。男は誰とでもできるものと思っていた。しかし、超能力がまったく橋本には効かないし、橋本より腕力のない尚子には、橋本を強引にレイプすることは不可能だった。尚子は橋本の隣に座りながら思った。このまま、橋本を怒らせて、あたしをたたかせようかと、考えたが止めた。橋本が友だち以上の関係になったらしてくれる、と言ってくれている。それを信じるしかない。そうなってもらうように自分も橋本が好きになってくれるよう付き合っていくしかない、と思った。尚子は橋本をレイプする、という強硬手段を達成できなかったが、楽しいことが先になっただけだと思ったら、そのときが来たときを考えると、うれしくもあった。肉体だけでなく、心と心が通い合うというものも、尚子には心地よいものなんだ、と思い始めた。そう思うと、最初の頃のおじさんといるように、なんか、心が落ち着いてきた。橋本といると心が平穏になる。癒やされていく。
(これって、最初に会ったときの感覚だわ!)
思わず尚子は叫んでいた。
橋本は尚子の気持ちが落ち着いたように見えた。欲情していた尚子はつつましく足をそろえて横で座っていた。橋本はやっと、目的である田所の進める教育要綱の説明を尚子から聞くことにした。
尚子から聞いた田所の教育要綱は、橋本も田所の著書や講演会で聞いた内容と同じだった。
橋本は、国際社会で日本が要人の家族として入り込むための策略を遂行するための教育専攻学科、ちまたでうわさになっている花魁(おいらん)養成学科の存在について尚子にきいた。
「あたしがその花魁(おいらん)養成学科の生徒の一人ですって? おじさん、それ、ほんとにうわさだわ! あたしがその秘密の花魁(おいらん)学科専攻生だと、おっしゃるの? そんな話術もテクニックもあたしにないことは、今までお話になっていてお分かりになったでしょ?
でも、橋本さんを誘惑しようとしたけど、あたしの超能力が通じないの」
尚子は超能力があるから養成学科のテクニックは必要ないという。尚子の言う超能力という言葉が何を意味することなのか、橋本には意味が不明だった。尚子はさらに続ける。
「学園長は高尚な方で、あたしは尊敬しています。だから、両親はこの学校への入学を選択したの」
尚子は幾分怒りながら話を続ける。尚子には自分の中にいるエッチ大好き悪魔が、「おまえらの力で報復しろ、民族を解放するのだ! 子孫たちよ、立ち上がれ!」と激しく背中を押してくる。ときどき、自分ではない自分が悪魔の誘いに乗ってしまうことを自覚している。学園長と比べて、あたしはなんて、道徳も、心理もない、ひどい女だろう、と卑下することばかりである。きょうも、ひどいことを考えた。橋本をレイプしようとしていたこと、橋本にそのことを隠さず話した。悪魔と戦いながら、抑え込んできた性欲が限界を破壊されて、今日みたいにエッチが制御できなくなる。
それなのに、尚子は、いとも簡単に、橋本に諭されて、悪魔の心が意気消沈した。この人ならあたしを救ってくれるかもしれないと直感した、と言う。
尚子は姿勢を正しソファーに座り直し、橋本を見た。
「おじさん、あたしの悩みを聞いてほしいな……」
「ああ、もちろん、聞くよ……」
橋本は今までとは違うまなざしをする尚子を見て、橋本も真剣な態度でそれに答えた。尚子は姿勢を正すと、ゆっくりした口調で話し始めた。学校の正門で橋本に会ったとき、尚子の心の中に、悪魔が出現して、橋本を自宅でレイプしろと命令する。
こんなひどい行為を、自分の中にいる別の自分が指令する。別の自分に困惑することもきょうだけではなかった。最初のその犠牲者が隣に住む児玉進一だった。冷静に戻ると、進一に悪いことをしてしまったと、今も後悔するばかり。そのときは、真っ当な自分ではあっても、すぐに、別の悪魔の自分に支配されてしまう。きょうもその後悔を繰り返すことになりそうだった。それを橋本は救ってくれた、と吐露した。
「田所の目的はそのことを俺に聞かせようとしていたのかもしれないな?」
尚子は橋本の言うことが信じられなかった。男は誰とでもできるものと思っていた。しかし、超能力がまったく橋本には効かないし、橋本より腕力のない尚子には、橋本を強引にレイプすることは不可能だった。尚子は橋本の隣に座りながら思った。このまま、橋本を怒らせて、あたしをたたかせようかと、考えたが止めた。橋本が友だち以上の関係になったらしてくれる、と言ってくれている。それを信じるしかない。そうなってもらうように自分も橋本が好きになってくれるよう付き合っていくしかない、と思った。尚子は橋本をレイプする、という強硬手段を達成できなかったが、楽しいことが先になっただけだと思ったら、そのときが来たときを考えると、うれしくもあった。肉体だけでなく、心と心が通い合うというものも、尚子には心地よいものなんだ、と思い始めた。そう思うと、最初の頃のおじさんといるように、なんか、心が落ち着いてきた。橋本といると心が平穏になる。癒やされていく。
(これって、最初に会ったときの感覚だわ!)
思わず尚子は叫んでいた。
橋本は尚子の気持ちが落ち着いたように見えた。欲情していた尚子はつつましく足をそろえて横で座っていた。橋本はやっと、目的である田所の進める教育要綱の説明を尚子から聞くことにした。
尚子から聞いた田所の教育要綱は、橋本も田所の著書や講演会で聞いた内容と同じだった。
橋本は、国際社会で日本が要人の家族として入り込むための策略を遂行するための教育専攻学科、ちまたでうわさになっている花魁(おいらん)養成学科の存在について尚子にきいた。
「あたしがその花魁(おいらん)養成学科の生徒の一人ですって? おじさん、それ、ほんとにうわさだわ! あたしがその秘密の花魁(おいらん)学科専攻生だと、おっしゃるの? そんな話術もテクニックもあたしにないことは、今までお話になっていてお分かりになったでしょ?
でも、橋本さんを誘惑しようとしたけど、あたしの超能力が通じないの」
尚子は超能力があるから養成学科のテクニックは必要ないという。尚子の言う超能力という言葉が何を意味することなのか、橋本には意味が不明だった。尚子はさらに続ける。
「学園長は高尚な方で、あたしは尊敬しています。だから、両親はこの学校への入学を選択したの」
尚子は幾分怒りながら話を続ける。尚子には自分の中にいるエッチ大好き悪魔が、「おまえらの力で報復しろ、民族を解放するのだ! 子孫たちよ、立ち上がれ!」と激しく背中を押してくる。ときどき、自分ではない自分が悪魔の誘いに乗ってしまうことを自覚している。学園長と比べて、あたしはなんて、道徳も、心理もない、ひどい女だろう、と卑下することばかりである。きょうも、ひどいことを考えた。橋本をレイプしようとしていたこと、橋本にそのことを隠さず話した。悪魔と戦いながら、抑え込んできた性欲が限界を破壊されて、今日みたいにエッチが制御できなくなる。
それなのに、尚子は、いとも簡単に、橋本に諭されて、悪魔の心が意気消沈した。この人ならあたしを救ってくれるかもしれないと直感した、と言う。
尚子は姿勢を正しソファーに座り直し、橋本を見た。
「おじさん、あたしの悩みを聞いてほしいな……」
「ああ、もちろん、聞くよ……」
橋本は今までとは違うまなざしをする尚子を見て、橋本も真剣な態度でそれに答えた。尚子は姿勢を正すと、ゆっくりした口調で話し始めた。学校の正門で橋本に会ったとき、尚子の心の中に、悪魔が出現して、橋本を自宅でレイプしろと命令する。
こんなひどい行為を、自分の中にいる別の自分が指令する。別の自分に困惑することもきょうだけではなかった。最初のその犠牲者が隣に住む児玉進一だった。冷静に戻ると、進一に悪いことをしてしまったと、今も後悔するばかり。そのときは、真っ当な自分ではあっても、すぐに、別の悪魔の自分に支配されてしまう。きょうもその後悔を繰り返すことになりそうだった。それを橋本は救ってくれた、と吐露した。
「田所の目的はそのことを俺に聞かせようとしていたのかもしれないな?」
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