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2章 1000回目の巻き戻りのはじまり

フローリア目覚める

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 目覚めるとそこにはどことなく見覚えのある天蓋。薄いレースのカーテンが閉まっているようだ。

 部屋の中に入ってくる光が和らげられている。

 未だぼんやりとして意識がはっきりしない私はとりあえず思考の戻りを待った。

 あ、このデザインは幼少期の頃の部屋じゃないかしら?このベットの天蓋とカーテンの柄が懐かしいわね。




 ん?懐かしい?

 どうして私は懐かしいなんて思ったのかしら?

 むしろどうしてこの部屋の事を理解しているのかしら?


 ???????

 ちょっと待って!!


 ガバリと起き上がり眠っていたベッドから飛び起きた私は呆然とする。


 知ってる。


 違う。知ってるんじゃない……


 覚えているんだ!!

 今まで何も思い出す事なく、なんの躊躇いもなく生きてきた日々を。


 ベッドから転がるように起き上がり。

 とてとてと、部屋を歩き回ると、思い出した記憶にあった鏡の前にたどり着く。


 その鏡に映っているのは、銀の髪を緩く結わえ陶器のように滑らかで美しい肌と、見た物が吸い込まれそうな程に深い碧い瞳、小さいながらもスッと通る綺麗な鼻に、ふっくらと柔らかそうな血色のよいピンク色の唇。

 そう、それは私のよく知る幼い頃のフローリアだった。


「わ、わたし?」


 驚いたわたしはその場にぺたりと座り込む。


 ちょ、ちょっと待って。


 私は確かにプロムの日に殺された。

 そのあとモフモフの神様に出会って……

 あ、それ以前に私。


 私、全部覚えてる。

 忘れてなどいない。


 神様が言っていた事は現実だったんだ。


 私は信じられない長い年月を繰り返し生きていた。記憶を奪われヒロインとらやの都合の良いように生かされた。


 私が死ぬかヒロインの再構築の呪文によって。


 神様が言っていた事は本当だったんだ。


 私は999回の死を迎えた。

 毎回様々な理由で殺されたり自死だったり。

 どの人生も幸せな死を迎えた事がない。

 ほぼほぼ悲惨すぎる内容に涙が止まらない。



 そう言えば神様がこの世界は乙女げーむの世界だと言っていた。

 私は乙女げーむなるものは知らないけれど、神様は目覚めて迎える人生は最後・ ・だと。

 ヒロイン?の再構築の呪文は封印したと言っていた。

 そしてこの1000回目の巻き戻り人生はやり直しの効かない現実・ ・

 
 今までは乙女げーむという特殊な箱庭の中の制度でやり直しという人知を超えた力が働いていた。

 その不思議な力が無くなった今、神様は私に。

 
「君は自由だ」


 そう言ってくれた。

 私がこの箱庭で担わされていた役割は破棄された。

 ただのフローリア・ナイトレイ侯爵令嬢として自由に生きて欲しいと願ってくれた。

「そうか……私は自由になったんだ」

 ポソッと呟くと、乾ききった心に水が与えられたようにすぅっと浸透した。

 

 なんだか目が醒めた気がする。

 長い、長い間私は悪夢の中を彷徨っていたようだ。

 頭にかかった靄が消えてゆく。

 私にかけられた呪いが溶けてゆくように。


 






 
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