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第14章 更なる「力」を求めて
第492話 春風編53 2人の「エルード」
しおりを挟むエルード……否、この世界の「光」を司る少女・「白のエルード」と、その姉である「闇」を司る少女・「黒のエルード」。
そう名乗った2人の少女を前に、春風は「ええ!?」と言わんばかりの驚きに満ちた表情になったが、すぐに真面目な表情になって、
「シロエルと、クロエル!」
と、2人の「エルード」を交互に見ながらそう言った。
その後、その場にいる者達全員が沈黙していると、
「……えっと、それは一体何かな?」
と、フリードリヒがタラリと汗を流しながらそう尋ねてきた。
春風はその質問答える。
「え、いや、彼女達のニックネーム的な呼び名ですけど」
「何言っちゃってんのかな君は!? この子達はこの世界そのものみたいな存在なんだよ!?」
と、フリードリヒが突っ込みを入れると、
「アハハ! それ、気に入った!」
「……うん、私も気に入った」
と、2人のエルードはもの凄く嬉しそうな表情になって、
「それじゃあ、私の名前は『シロエル』ね!」
「……そして、私は『クロエル』。よろしくね、ハルッち君」
と、2人は改めてそう自己紹介した。
因みに、そんな2人を見てフリードリヒは「やれやれ……」と呆れ顔になっていたが、春風達はそれをスルーした。
すると、春風は「あ、しまった!」と、何かを思い出したと言わんばかりの表情になって、
「すみません、で、ここへ来たのはいいですけど、この後俺、どうすればいいんですか!?」
と、フリードリヒに向かってそう尋ねた。
すると、
「……心配しないで、ハルッち君」
と、「黒のエルード」改め、クロエルが答えた。
その言葉に春風が「え?」っとなると、クロエルは話を続ける。
「……フリード君が言ったように、私達はこの世界そのもの。だから、ハルッち君がこの世界に来てから、どれだけ頑張ってきたのかはよく知ってる。自分の故郷のことだけでも大変の筈なのに、この世界のこともちゃんと見ていることも知ってる。本当に、ありがとう。そして……ごめんなさい」
そう言うと、クロエルは春風に向かって深々と頭を下げた。それに続くように、シロエルも「ごめんなさい」と深々と頭を下げた。
春風はそんな2人を見て、「え、ええ、そんな……」と困惑していると、クロエルはゆっくりと頭を上げて、
「……ハルッち君、ここへは更なる強さを求めて来たんだよね?」
と、質問してきたので、
「うん、俺はその為にここに来たんだ。君は、何か知ってるの?」
と、春風はまっすぐクロエルを見てそう尋ね返した。
その問いに対して、クロエルもまっすぐ春風を見て答える。
「……うん、知ってる。だってハルッちを強くするのは、私の役目だから」
すると、
「ちょっとお姉ちゃん! 私達の役目でしょ!?」
と、シロエルが割って入ってきた。
「……いやいや、シロちゃん。シロちゃんはもうやったでしょ? 次は私の番だよ」
「うう! それは、そうだけど……」
という2人のやり取りを聞いて、
「? それ、どういうこと?」
と、春風が首を傾げながら尋ねると、
「……ハルッち君、『見習い賢者』から『半熟賢者』にランクアップした時のこと、覚えてる?」
と、今度はクロエルが春風にそう尋ね返したので、
「え? ああ、うん、覚えてるよ」
と、春風はそう答えて、
(ああ、そういえばあの時はシロエルがやってくれたんだよなぁ……)
と、その時のことを思い出した。
すると、
「……え、ちょっと待って。もしかして……!」
と、春風は何かに気づいたかのようにクロエルに尋ねた。
クロエルはそれにコクリと頷くと、
「そう。私の役目は、ハルッち君を『半熟賢者』から真の『賢者』にランクアップさせることなの」
と答えた。
その言葉を聞いて、
(おお! 遂に、俺が『賢者』に!)
と、心の中でそう呟きながら、ゴクリと唾を飲んだ。
しかし、
「……おっと、喜ぶのはまだ早い」
と、クロエルはスッと右手を上げて「待った」をかけたので、春風はギョッとなって、
「え、何、どういうこと!?」
と、クロエルを問い詰めると、
「……ちょっと聞きたいことがあるの」
と、クロエルは真面目な表情でそう答えたので、春風は気持ちを落ち着かせて、
「……聞きたいことって、何?」
と、再び尋ねた。
それに対して、エルードは春風に真剣な眼差しを向けながら、
「……ハルッち君、『闇』を受け入れる覚悟、ある?」
と、再び尋ね返した。
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