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第14章 更なる「力」を求めて
第493話 春風編54 明かされた「真実」
しおりを挟む「……ハルッち君、『闇』を受け入れる覚悟、ある?」
と、春風に向かってそう尋ねてきたクロエル。
本来ならここで、
「ある!」
と、力強く即答するところなのだが、
「……ごめん。言ってる意味がよくわからないから、詳しい理由を聞いてもいいかな?」
その質問は、逆に春風を冷静にさせた。
クロエルは春風の質問に対して、
「……うん、わかった。でも、その説明をする前に、まずは私達のことについて、改めて説明させてほしいの」
と、真剣な表情でそう言ってきた。隣にいるシロエルも、同じく真剣な表情をしていた。
春風はその言葉を聞いて、
「いいよ。じゃあ、まずはそっちから教えて」
と、真剣な表情でクロエルに向かってそう言った。
クロエルは一言、
「……ありがとう」
と言った後、説明を始める。
「……私達は、確かにこの世界の意志そのものなんだけど、生まれたのは500年前になるの」
「500年前……って、まさか!」
「……うん、この世界が侵略された後、私達は『神』を名乗るあいつらによって作り出された存在なの。あいつらは本来の『神様』のループスとヘリアテスを封じた後、この世界の『情報』を読み取って、それをもとに私達を作ったの」
「そうか、だからループス様もヘリアテス様も、君達がこの世界の『意志』だってわかったんだね?」
と、春風が尋ねると、
「うん、そうだよ。私達は元々、あいつらからある『役割』を与えられているんだよね」
と、シロエルが答えた。
「役割?」
と、春風が再び尋ねると、シロエルは話を続けた。
「今のこの世界の『理』。まぁ、わかりやすく言うと、『職能』と『ステータス』と『スキル』の管理……みたいな?」
「マジで?」
「マジで」
と、シロエルが答えると、それまで黙ってたクロエルが口を開いた。
「……そう、そして私にはその他にもう1つ『役割』があるの」
「それは、何?」
「……世界に生まれた、『歪み』の収集と管理」
「歪み?」
「……うん。元々あったこの世界の『理』を無理矢理書き換えたから、当然、その所為でいろんな『歪み』が生まれてしまったの。そして、その中でも1番の『歪み』が、『闇のスキル』と言われた『裏スキル』になるわけ」
「え、そうだったんだ!」
「……そう、世界の『歪み』が、独自の『意志』と『形』を持った、異質な力。それを見つけ次第、誰かが身につける前に回収して管理する。それが『闇』を司る私の『役割』」
(独自の意志、か。そういえばルーシーが『憤怒』を身につけた時にも、『声が聞こえた』って言ってたな……)
クロエルの説明を聞いて、春風が表情を暗くしていると、
「……おっとごめん、話がそれちゃったね」
と、クロエルは「こりゃ失敬」と言わんばかりの表情で謝罪した。
その言葉に春風が「ああ、いいよ」と許すと、クロエルは更に話を続けた。
「……とまぁそんな感じで、私達はその『役割』のもとにこの世界をずっと見てきたの。でも……」
「でも?」
「……すっごい退屈だった」
「何故に!?」
「……だってみんな、与えられた職能やスキルを、何の疑いも持たずに使い続けているんだもの。そんなの500年も見続けてたら、流石に飽きる」
と、答えたクロエルに、春風は「ええ?」と微妙な表情を浮かべた。
すると、
「でもね、そんな退屈な日々を、春風君、君がぶっ壊してくれたんだ!」
と、シロエルが2人の会話に割り込んできた。
「え、俺!?」
「うん、そう! だって春風君、この世界に来た時点で凄いスキルを持ってたり、この世界に来てからも、新しいスキルを幾つも身につけてはいるけど、いつだってそれに頼らない手段を編み出してきたよね!?」
(ああ、うん、そうだね)
「それだけでも凄いのに、何より凄いのは、『ランクアップ』が出来る職能を持ってるってところだよ!」
と、興奮気味にそう言ったシロエルに、
「ん? それ、どういう意味?」
と、春風が質問すると、今度はクロエルが答えた。
「……あのね、大変言い難いことなんだけど、『ランクアップ』が出来る職能っていうのは、本来存在しないものなの」
「そうなの!? え、まさか、それって固有職能でも言えるとか!?」
「……うん。そんなことが出来るのは、世界中でもハルッち君だけ」
そう答えたクロエルの言葉に、春風は「マジか」とショックで倒れそうになったが、
「……あれ? でも俺、シロエルのおかげで、『見習い賢者』から『半熟賢者』になれたんだけど、あれはなんで?」
と、すぐに真面目な表情になってクロエルに質問すると、クロエルではなくシロエルが答えた。
「あー、それなんだけど、正直に言うと、春風君の職能が『ランクアップ』が出来るって知った時、私もお姉ちゃんも『え、何これどういうこと!?』って、あの時はびっくりしちゃってね。で、これどうしたらいいんだろうって2人で考え合った末、世界の『意志』の私が、試しに触れてみようってことになったの」
「そうだったんだ!」
「うん。今だから言うけど、あの時は凄く不安だったんだよ。なにせ『ランクアップ』させるなんて初めてだったんだから」
「それは、ごめん」
「いいよいいよ。で、その後お姉ちゃんと調べたんだけど、やっぱり『ランクアップ』が出来るのは春風君だけだってこと以外は何もわからなかったよ」
「そっか……って、え? もしかして、次の『ランクアップ』の条件とかも?」
と、春風がそう尋ねると、
「……それについては、多分大丈夫だと思う」
と、クロエルが答えたので、春風はすぐに「え?」とクロエルを見た。
「……実は、次のランクアップについてフリード君と相談した結果、ちょっと試してみたいことが出来たの」
そう言ったクロエルに向かって、春風が「それは一体?」と尋ねようとすると、それまで黙ってたフリードリヒが、
「それはね……」
と、口を開いた。
「僕の[暴食]を、君に移すんだよ」
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