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第14章 更なる「力」を求めて
第491話 春風編52 最奥で待つのは……
しおりを挟む「あ、あの、何処まで進むんですか?」
「もうすぐだよ」
凛依冴達がモーゼス達と戦ってる最中、少し早歩きで通路を進む春風とフリードリヒ。
その後、フリードリヒが言ったように、2人は通路を抜けて、新たな部屋に着いた。
そこは、先ほどまで春風とフリードリヒが戦っていた部屋と同じくらいの広さをしていたが、1つだけ異なるものがあった。それは、
「……何で、家があるんだ?」
そう、その部屋の中央には、ポツンと一軒の小さな「家」があったのだ。
見た目はかつて春風が過ごした、リアナの実家のログハウスによく似ていたので、春風はその「家」を見て、何処か懐かしいものを感じていた。
「さ、こっちだよ」
と言うフリードリヒの言葉に従うように、春風はすぐにハッと我に返って、その「家」に近づいた。
そして、2人が家の玄関の前まで来たその時、ギィッと扉が開いて、
「あ、いらっしゃい、フリード君に春風君!」
と、そこから1人の少女が出てきた。
「……え?」
目の前に現れた、長い黒髪に白いワンピース姿の10歳くらいのその少女を見て、春風は質問する。
「エルード?」
その質問に対して少女は、
「エヘヘ、こうして現実で会うのは初めてだよね」
と、笑顔でそう答えた。
それを聞いて、
「おや? もう知り合ってたのかい?」
と、フリードリヒが春風に尋ねると、
「あ、はい、夢の中で……」
と、春風はそう答えた。
すると、
「あ、いけない! ささ、2人共、すぐに中に入って!」
と、少女ーーエルードに促されて、春風とフリードリヒは「家」の中に入った。その際、
「お姉ちゃーん! 2人が来たよぉ!」
と、エルードがそう叫んでいたので、
(ん? お姉ちゃん?)
と、春風は頭上に「?」を浮かべた。
「家」の中に入ると、2人は居間に案内された。
(なんか、凄く居心地の良さそうなところだなぁ……)
と、春風がそんなことを考えていると、
「……いらっしゃい」
という少女のものと思われる声が聞こえたので、春風は「え?」とその居間に視線を向けると、
「え? エルード!?」
そこには、エルードと瓜二つの顔をした少女が、春風とフリードリヒが来るのを待っていたかのように居間に備え付けられたソファーに座っていた。
ただその少女、見た目はエルードとそっくりなのだが、無表情で髪は長い白髪、服装は黒いワンピースを着ていた。
「エルード、この子は一体……?」
と、春風がエルードに尋ねようとすると、
「ごめんなさい春風君! 実は私、嘘をついてました!」
と、エルードがいきなり頭を下げてそう謝罪してきた。
それを聞いて、春風が「ええ!?」と驚いていると、
「……いやいや妹よ。別に嘘は言ってないでしょ? だって、あなたも『エルード』なんだから」
と、エルードそっくりの少女がそう訂正してきた。
それを聞いて、春風は更に頭上に幾つもの「?」を浮かべていると、エルードそっくりの少女は「コホン」と小さく咳き込んで、
「……おっと失礼。はじめまして、幸村……いや、光国春風君の方がいいのかな?」
と、首を傾げながらそう尋ねてきたので、
「あー、幸村春風でいいよ」
と、春風は穏やかな笑みを浮かべてそう言うと、
「……うん、わかったよハルッち君」
と、エルードそっくりの少女は親指を立てながらそう言ったので、
「いきなりニックネーム呼び!?」
と、春風はギョッとなった。
因みに、フリードリヒは隣でクスクスと笑っていた。
しかし、そんな春風を無視して、エルードそっくりの少女はエルードに近づき、その肩に手を置いて口を開く。
「……この子は嘘を言ってない。だってこの子も、れっきとした『エルード』なんだから」
春風はその言葉を聞いて、
「どういうこと?」
と、首を傾げると、エルードそっくりの少女は、エルードの肩に手を置きながら答える。
「この子は双子の妹、『白のエルード』。この世界の、『光』を司る存在。そして……」
そう言うと、今度は自身の胸に手を当てて言う。
「……私は姉、『黒のエルード』。この世界の、『闇』を司る存在。よろしくね」
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