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第14章 更なる「力」を求めて
第445話 春風編6 「光国春風」の「友達」
しおりを挟む春風がかつて、「光国春風」だった時の記憶を見終わった後に現れた新たな道。
春風達がその道を進むと、また別の広い部屋に着いた。
そして、全員が部屋中に入ると、部屋の中央にまた謎の火の玉が現れた。
(また、これに触れればいいのかな?)
そう考えた春風は不安になりながらも、その火の玉にソッと触れた。
次の瞬間、眩い光に包まれて、気がつくと、春風はまた別の場所に立っていた。
(あ、ここは……)
そこは、大きな近代的な建物の入り口で、その側についている大きな表札には、「愛染総合科学研究所」と記されていた。
春風はその表札を見て、
(懐かしいなぁ)
と、複雑な表情を浮かべていると、一台の車が近づいてきた。
その後、入り口付近で車が止まると、
「さぁ、着いたわよ春風」
「うん」
と、運転席から雪花が、助手席から幼い春風が出てきた。
2人は車からいくつかの荷物を手に取ると、その建物ーー研究所内へと入った。
すると、景色が研究所の外から中へと景色が変わり、そこで春風は、雪花と幼い春風が廊下を歩いていくのを見つめていた。
やがて、2人は目的の場所と思われる大きな扉の前に着いた。その後、雪花がその扉をコンコンとノックすると、
「どうぞぉ」
と、扉の向こうから男性の声が聞こえたので、
「失礼します」
と、雪花がそう言うと、扉を開けて幼い春風と共に扉の向こうへと入った。
そして、
「冬夜くーん、所長ー、みんなー……!」
「差し入れ持ってきましたぁー!」
と、雪花と幼い春風がそう叫ぶと、
「あ、ありがとうセっちゃんに春風」
と、その場所で「仕事」をしているスーツと白衣姿の冬夜がそう返事をして、それに続くように、
「おお、来たか2人とも!」
と、冬夜の後ろから、冬夜と同じくスーツと白衣を着た、立派な髭を生やした初老の男性と、
「わぁ、待ってましたぁ!」
「もうお腹ペコペコだよぉ!」
と、ぽっちゃり体型の穏やかそうな若い男性と、黒いショートヘアが似合う小柄の若い女性が現れた。
更にその背後からも、
「漸く休憩か……」
「かぁーっ! まじでかったるかったぁーっ!」
と、ぽっちゃり体型の男性と同じ年頃ぐらいの、ロングヘアの若い男性と、何処か不良っぽさを感じさせる短い金髪の若い女性が現れた。
因みに、この4人もスーツと白衣を着ている。
幼い春風は4人の姿を見ると、まるで嬉しそうに、
「リッキーさん、アーヤさん、ケントさん、キャシーさん、こんにちは!」
と、笑顔で元気良く挨拶をした。
それに対して、4人も笑顔で軽く挨拶を返した。
その時、「あれ?」と首を傾げた幼い春風は、
「すみません、アンディさんは?」
と、4人に向かってそう尋ねると、
「『アンディ』って呼ばないでって言ってるだろ?」
と、4人の背後から、同じくスーツと白衣をきた、10代後半くらいの青年が現れたので、幼い春風は更に嬉しくなって、
「あ、アンディさん!」
と、その青年にタタタッと駆け寄った。
アンディと呼ばれた青年は「ハァ」と溜め息を吐きながらも、駆け寄ってきた幼い春風の頭を撫でると、
「だから、アンディって呼ばないでってば春風。僕の名前は、『安土流』だって言っただろ?」
と、困ったような笑みを浮かべてそう言った。
すると、
「そう、『安』い『土』に、『流れ』と書いて、『安土流』」
「それと同時に、『安土流』とも読める」
「それ故に、『アンドリュー』」
「それ故に、『アンディ』な」
と、冬夜を含めたスーツと白衣の男女6名が揶揄うようにそう言ったので、
「ですから、『アンディ』って呼ばないでください!」
と、その青年、アンディこと安土流ーー以下、流は顔を赤くして怒鳴った。そんな彼を見て、幼い春風と冬夜達は「ハハハ」と笑った。
さて、そんな幼い春風達のやり取りに、春風はと言うと、
(そう。ここは、お父さんが『科学者』だった時の職場。そして……)
目の前にいる懐かしい光景を、
(所長さん。リッキーさん。アーヤさん。ケントさんにキャシーさん。そして、アンディさん。俺の……大切な『友達』)
泣き出しそうなくらいの、悲しい表情で見ていた。
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