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第14章 更なる「力」を求めて
第446話 春風編7 「光国春風」の「友達」2
しおりを挟む(そうだ。『あの頃』の俺にとって、所長さんやアンディさん達が、俺の大切な『友達』だったんだ)
目の前で楽しそうにしている様子の幼い春風達を見て、春風は当時のことを思い出していた。
(所長の愛染元作さん。ぽっちゃり体型の『リッキーさん』こと御堂力丸さん。小柄で元気いっぱいな『アーヤさん』こと丸川綾子さん。ぶっきらぼうだけど面倒見のいい『ケントさん』こと伊集院賢人さん。ちょっと口は悪いけど優しいハーフのお姉さんの『キャシーさん』ことキャサリン・早乙女さん。そして、最年少の『アンディさん』こと安土流さん。みんな、お父さんが科学者だった時の『大切な仲間』だった人達。俺がまだ幼稚園に通っていた時は、同い年の子と遊ぶより、この人達と一緒に過ごしていた時の方が多くて、凄く楽しかったんだよなぁ)
と、懐かしさと悲しみが入り混じった表情でそんな風に昔を思い出してると、
(だけど……)
突然、周囲の景色が変わった。
(小学校に上がってから、『変化』が起きたんだよな)
そこは、幼い頃の春風がよく遊んでいたスクラップ置き場だった。
そして、その場所で今、小学生になった春風が1人、おもちゃの飛行機を飛ばしていた。
(そう。あの日、お父さん達と作ったおもちゃの飛行機を飛ばしていたら……)
「あ、あの……」
そこへ、1人の女の子が現れた。
(そうそう、こんな感じで『彼女』が出てきたから……)
突然現れた女の子を見て、
「ご、ごめんなさい! 失礼しましたぁ!」
と、小学生の春風は顔を真っ赤にしてその場から逃げ出した。
それを見た春風は、
(うん。俺、びっくりして逃げ出しちゃったんだよなぁ。ああ、我ながら情けない)
と、心の中でそう呟くと、「ハァア……」と盛大な溜め息を吐いた。
(で、ダッシュで家に帰った後で、飛行機を置いてきちゃったこと思い出したんだよなぁ。取りに行かないとって思ったんだけど、その頃にはもう日が暮れていたから、仕方なく明日行くことにしたんだ)
そう思い出すと、今度はスクラップ置き場への道へと景色が変わった。
(で、翌日になってスクラップ置き場に向かおうとしたら……)
「あ、あれって……」
と、小学生の春風が前を見ると、昨日の女の子とそれを庇う中学生くらいの男の人が、数人の男達に絡まれていた。
その後、女の子が男達の1人に乱暴されそうになっているのを見た小学生の春風は、
「(あ、まずい!)待て!」
ーーズゴン!
「ブフォ!?」
その男の尻に、猛ダッシュからの飛び蹴りをお見舞いした。
そして、その勢いで他の男達も倒すと、
「こっちです!」
と、小学生の春風は男の人と女の子の手を取って、ダッシュでその場を後にした。
それから暫くの間走って、漸くスクラップ置き場に着くと、
「あ、あの、これ……」
と、女の子が春風に、昨日忘れてきた飛行機を差し出した。
「あ、持っててくれたんですか?」
と、小学生の春風が尋ねると、女の子は「う、うん」と頷いたので、
「ありがとうございます。あと、そのぉ、昨日は逃げ出したりして、ごめんなさい」
と、小学生の春風は女の子に向かってお礼と謝罪をし、
「わ、私の方こそ、ごめんなさい」
と、女の子も小学生の春風に向かって謝罪した。
その後、
(え、えっとぉ、この後どうすれば?)
と、春風が困った顔をすると、
ーーいいかい春風。今を生きる男子たる者、女の子や女性方面で、『鬼』とか『悪魔』とか『腐れ外道』になっちゃ駄目。
と、頭の中で父・冬夜の言葉が浮かんだので、春風は顔を真っ赤にして「恥ずかしい」と思いながらも、
「あ、あの……」
「な、何?」
「……よかったら、飛ばし方教えますので、一緒に飛ばしてみませんか?」
と、女の子と男の人を交互に見ながらそう提案した。
すると、女の子と男の人はお互い顔を見合わせた後、
「「うん!」」
と、2人して力強く頷いた。
それを見た小学生の春風は、早速2人に飛ばし方を教えようとすると、
「あ、そうだ!」
と、何かに気づいたかのように女の子と男の人に向かって姿勢を正し、
「僕は、春風。光国春風です」
と、2人に向かってそう自己紹介した。
すると、それを聞いた2人も、
「歩夢です。海神、歩夢」
「歩夢の兄の、海神剛希だ。よろしくな」
と、小学生の春風に向かってそう自己紹介した。
そんな3人の様子を見た春風は、
(そう。これが、俺と『ユメちゃん』こと海神歩夢さんと、その兄、『剛兄さん』こと海神剛希との関係の始まりだったんだ)
と、心の中でそう呟いた。
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