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第14章 更なる「力」を求めて
第444話 春風編5 「光国春風」の「記憶」
しおりを挟む突如現れた謎の火の玉に触れた春風。
気がつくと、彼は自身がまだ「光国春風」だった時の自宅前にいた。
「ただいま、お母さん、お父さん」
両親に「おかえり」と言われて、幼い頃の春風が笑顔でそう返すと、そのまま家の中へと入った。
そして、玄関の扉が閉まると、
「お父さん、今日早かったんだ」
「ああ、仕事が結構早く終わったから……」
「うふふ」
と、中で楽しそうな会話が聞こえた。
そんな会話を聞いて、
(ああ、そういえば、こんなこともあったっけなぁ)
と、春風がそんなことを考えていると、
(うわ、眩し!)
と、突然周囲の景色が白く輝き出して、春風は思わず腕で顔を覆った。
「……あ、あれ?」
気がつくと、春風は元の何もない部屋にいた。
(い、今のは、一体……?)
と、春風が先ほど見たものについて考え始めると、
「ねぇ、フーちゃん」
「ん?」
不意に歩夢に呼ばれたので、春風は考えるのをやめてすぐに歩夢を見た。
「何、ユメちゃん?」
と、春風が尋ねると、歩夢は少し気まずそうに、
「今のって、小さい頃のフーちゃん……だよね?」
と、尋ね返した。
「……へ?」
その問いに対して、春風は数秒ほど沈黙すると、
「……もしかして、ユメちゃんも見たの?」
と、無表情で歩夢に向かってそう尋ねた。
歩夢は春風の問いに対して、申し訳なさそうに、
「……うん」
と、小さくコクリと頷くと、それに続くように、
「あー、実は僕も……」
と、歩夢の後ろで冬夜が顔を赤くして「ハイ」と手を上げた。
「ええ、に、兄さんも……!?」
と、驚いた春風だが、よく見ると、
「実は私も……」
「アハハ、俺も何だ」
「お、俺も……」
「私も……」
「私達もだ」
と、雪花や恵樹、鉄雄、小夜子、そしてアリシアやルーシー、更には幼いイアン達や、ユリウスも、「自分も見ました」と言わんばかりに「ハイ」と手を上げていた。というより、この場にいる者達全員が手を上げていた。
春風はそんな仲間達を見て、
「う、嘘だろオイイイイイイイイ!?」
と叫びたかったが、
(うーん、そんなことをしても無駄かな)
と考えて、
「うん、間違いないよ。今のは俺がまだ、オヤジ……今の『家族』に引き取られる前の、小さい頃の記憶だよ」
と、正直に話した。
その答えを聞いて、歩夢は「やっぱり……」と納得の表情を浮かべて、
「それって、ハルッちが『光国春風』だった時ってことだよね?」
と、恵樹が尋ねてきた。
当然、春風はその問いに対しても、
「うん」
と、コクリと頷いた。
一方、冬夜と雪花はというと、
「いやー、まさか前の自分を見ることになるとは……」
「うふふ、ちょっと恥ずかしいわね……」
と、2人して恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
そして、そんな2人の横で、
「あらあら、小さい頃の春風も、結構可愛いのね」
と、静流も顔を赤くしていた。
しかしその後、
「それにしても、さっきの変な火の玉は一体何だったんだ?」
と、冬夜はすぐに頭上に「?」を浮かべたので、
「それはわからない。でも、さっきあの火の玉に触れた時に、『あなたのこと、教えて』って声が聞こえたんだ。もしかしてだけど、声の主は俺のことを知ろうとしてるんじゃないかって思ってる」
と、春風は真面目な表情でそう答えた。
その答えを聞いて、仲間達はゴクリと唾を飲むと、突然周りからゴゴゴという大きな音が聞こえた。
「うわ、な、何だぁ!?」
と、鉄雄が驚くと、
「あ、あれ見て!」
と、美羽がとある方向を指差した。
春風達が一斉にその方向へと振り向くと、なんと壁の一部がまるで扉を開けたかのように割れたのだ。
そして、完全に割れると、その向こうに新たな通路が現れた。
「どうやら、私達のこと誘ってるみたいね」
と、その通路を見たユリウスがそう言うと、春風は「そのようですね」と返事して、
「行こう」
と、仲間達に向かって言った。
それを聞いて仲間達も黙ってコクリと頷くと、全員部屋から出てその通路を歩き始めた。
その後、全員が無言で通路を歩いていると、
(また、あの火の玉現れるのかな?)
と、春風は心の中でそう呟いたが、
(あれ? でもあれに触れたら、また俺の『記憶』、みんなに見られるってことなのかな!? だとしたら、ま、まずい! 変な記憶とかだったらどうしよう!)
と、思いっきり不安になるのだった。
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