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第14章 更なる「力」を求めて
第443話 春風編4 階段を下りた先で……
しおりを挟む閉ざされていた扉を潜って、春風達は暗く長い階段をひたすら下りていた。
ただ、「暗い」といっても「真っ暗闇」というわけではない。どういう仕掛けが働いているのか、春風達が1段1段階段を下りていくたびに、壁の両側についている燭台の蝋燭に火がついて、それが周りを明るくしていた。
しかし、それでも不気味なことに変わりはない為、何が起きてもいいように、春風達は固まって階段を下りていた。
暫くすると、
(あ、なんか見えた)
と、春風が心の中でそう呟いたように、階段を下りた先に、何かがあるのが見えた。
辿り着くと、どうやらそこはちょっと広めの部屋のようで、四方の壁に燭台がある以外は何もないし、入り口も春風達が通った1箇所だけだったが、その部屋に入った途端、階段を下りた疲れが出たのか、春風達は「ハァ、やっと階段が終わった」と言わんばかりに、その場にヘナヘナと座り込んだ。
(まさか、拠点の地下にこんなところがあるなんて……)
と、その部屋を見回しながら春風は心の中でそう呟くと、
「ヒィッ!」
という悲鳴が聞こえたので、春風は「な、何だ!?」と悲鳴がした方を見ると、そこには体をブルブルと震わせるルーシーがいた。
春風はすぐに立ち上がると、ルーシーのもとへと駆け寄り、
「ど、どうしたのルーシー!?」
と、尋ねた。
すると、ルーシーは震えながらも、
「あ、あれ……」
と、春風の背後を指差した。
春風はゆっくりと後ろを振り向くと、そこには何もなかったので、
「えっと、何もないけど……」
と、ルーシーに向き直ると、
ーーボッ!
「うわぁ!」
と、目の前に赤い火の玉が現れたので、春風は驚いて尻餅をついた。それと同時に、歩夢をはじめとした仲間達も、突然現れた火の玉に驚いて、皆、一斉に後ろに下がった。
「な、何でいきなりこんなのが……?」
と、最初はその火の玉を警戒した春風だったが、
(でも、何でだろう。悪いものってわけでもなさそうだし、何故かわからないけど、俺は、これに触れなきゃいけない気がする)
と、そう感じたので、春風はゆっくりと手を伸ばして、その火の玉に触れた。
次の瞬間、
ーーあなたのこと、教えて。
と、頭の中で少女のものらしき声が聞こえて、それと同時に火の玉から眩い光が放たれたので、
「う、うわぁ、何だこれ!?」
と、春風も仲間達も、思わず目を閉じた。
「あれ? ここは、何処だ?」
気がつくと、春風はとある道の真ん中に立っていた。
周りをよく見ると、そこはエルードではなく、春風の祖国『日本』の何処かのようだった。
「何だろう、俺、この道を知ってる? いや、何で俺、こんなところにいるんだ?」
と、若干混乱気味になったが、次の瞬間、そんなこと言ってる場合じゃないという事態が起きた。
1人の少年が、春風の体を通り抜けていったのだ。
「え、何これ!?」
と、突然のことに驚いた春風だったが、その後すぐに、
(……って、あれ? 今の子、何処かで……?)
と、疑問に思ったので、春風はその少年を追いかけることにした。
春風は少年に気づかれないように、必死になって後を追いかけると、少年はとある家の門を潜った。
少年を追いかけるのに夢中になっていた春風も、その門を潜ると、
(ゲ! ヤベェ!)
と、すぐ目の前に少年がいたので、春風は思わず門を出て後ろに隠れた。
その後、少年は深呼吸すると、目の前にある扉を開けて、
「ただいまぁ!」
と元気よく言った。
すると、少年の目の前に1人の女性が現れて、
「あ、おかえり春風!」
と、少年に向かってそう言った。
そして、その後すぐに、女性の背後に眼鏡をかけた男性が現れて、
「おかえり、春風」
と、男性は少年を見てニコリと笑ってそう言った。
その瞬間、
(ま、まさか……)
と感じた春風は、すぐに門についてる表札を見た。
表札に記されていた名前は、「光国」。
それを見た時、春風は思い出した。
(……そうだ。ここは、俺の家だ!)
そう、そこは、春風がまだ「光国春風」だった時の自宅だったのだ。
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