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間章6
間話43 凛依冴達からの「お願い」
しおりを挟む「……え、今の話、全部本当にあったことなんですか!?」
凛依冴の過去話を聞いて、小夜子は驚きながらそう尋ねると、
『いやぁ、残念ながら本当の話なんですよねぇ』
と、凛依冴、冬夜、雪花、静流は照れくさそうにそう答えた。
「いやちょっと待ってください、何であなた方まで答えるんですか?」
と、小夜子は再びそう尋ねると、
「僕とセっちゃんと静流母さんは、転生する間際に春風の記憶を見てきたから」
「いやぁ、あの子結構濃厚な日々を送ってきたのよねぇ」
「うふふ」
と、3人は再び照れくさそうにそう答えた。それを見て、凛依冴も「ふふ」と顔を赤くしながら笑っていた。
だが、そんな4人とは対照的に、小夜子はというと、
「そ、そんな。あの真面目で大人しい幸村が……」
と、ショックで顔を真っ青にしていた。
無理もないだろう。なにせ小夜子が知っている「幸村春風」という少年は、今小夜子が言ったように、真面目で大人しく、学校内で問題を起こすような人物ではない。
しかし、エルードに来てから、小夜子は春風の知られざる一面を何度も目にしてきたので、今、凛依冴の話を聞いて、
(もしかして、自分はまだ生徒達のことを何もわかってなかったんじゃないのか?)
という疑問が浮かび上がってしまったのだ。
雪花はそんな小夜子を見て、
「あー、まぁそりゃそうなるよねぇ」
と、ぽりぽりと頬を掻いていた。
そして、それは雪花だけでなく冬夜も凛依冴も同様だった。
すると、静流がスッと静かに立ち上がって、小夜子に近づくと、
「先生」
と、話しかけた。
「?」
「大丈夫です。あの子は先生が思ってるのとそう変わりませんよ。ちょっと、無茶をしちゃうところがたまにキズですけど」
穏やかな笑みを浮かべてそう言った静流に、
「ゆ、幸村さん……」
と、小夜子は目に涙を浮かべていると、
「それに、もしあの子が無茶なことをして、しかもそれが良くないことだと感じたら、その時は教師として思いっきり叱ってください」
と、静流はそう続けた。
すると、それを見た冬夜も、
「……そうですね。それは、先生にしか出来ないことなんですよね」
と、小さく言うと、
「高坂先生」
と、冬夜は小夜子の前で正座して、
「春風のこと、これからもどうかよろしくお願いします」
と、深々と頭を下げた。
それに続くように、雪花も凛依冴も、
「「よろしくお願いします」」
と、冬夜のように正座をして深々と頭を下げた。
それを見て戸惑った小夜子は、チラリと静流の方を見たが、静流は穏やかな笑みを崩さずに、
「(コクリ)」
と、黙って頷いたので、小夜子は冬夜達に向き直ると、
「はい」
と、笑顔で返事をした。
さて、そんなやりとりが繰り広げられたテントの外ではというと、
「……陛下達、一体何をなさっているのですか?」
「スマン。あまりにも『良い話』をしていたもので」
「「していたもので」」
呆れ顔のウォーレンに問われて、ウィルフレッド、ギルバート、クローディアは目をウルウルとさせていた。
ウォーレンはそんな3人を見て、
「……ハァ(やれやれだ)」
と、ため息を吐きながら更に呆れ顔になっていた。
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