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間章6
間話44 再会、「ご兄弟ズ」と……
しおりを挟むそれは、春風達の新たな「旅」が決まった、その日の夜のことだった。
明日は春風達がそれぞれの目的地に向かって出発する。ならば今夜は「最後の夜」だということで、その日はまた宴会騒ぎとなった。
皆、それぞれが酒や料理を楽しむ中、肝心の春風はというと、
「……またこの位置ですか?」
「当然じゃねぇか」
「「うむうむ」」
その日も同じように王族、皇族の側に座っていた。
(ああ、もう。だからこういうポジションは勘弁してくれって)
キリキリと痛む胃の部分を手で押さえながら、心の中でそう呟いた春風。そんな春風に、ギルバートが話しかける。
「まぁ、そんなに緊張すんなって。俺らとお前の仲なんだし」
「いやホントやめてくださいって!」
「それに、また昨日みたいにお前の世界の住人とお話が出来るかもしれねぇし」
「そう何度もあるわけないと思いますけど……」
ギルバートのセリフに春風が何度も突っ込みを入れていると……。
ーージリリリリリリリッ!
『!』
ズボンのポケットに入れていた零号【改】が鳴りだした。
(……嘘だろ?)
「お! 噂をすればってか!」
そう言うと、ギルバートは目を爛々と輝かせた。それは、側にいるウィルフレッドとクローディアも同様だった。
春風はそんな様子のギルバート達を見て「ハァ」とため息を吐くと、零号【改】を通話モードにして、空中に画面を出現させた。
「や、やぁ、春風、昨日ぶり」
そこに映し出されたのは、何故か大量の冷や汗を流した涼司だった。
「お、オヤジ、どうしたの?」
と、春風が尋ねると、涼司は「実はな……」と答えようとしたが、
「よ、フー」
「やぁ、春風君」
と、それを遮るかのようにズイッと画面に歩夢の母である日真理と、水音の父である優誓が現れた。
「お、お母さん!?」
「父さん!?」
昨日に続いてまさかの日真理と優誓の登場に、驚きを隠せない歩夢と水音。しかし、そんな2人に構わず、日真理が口を開く。
「あ、おーい歩夢ぅ。それに水音君。今日はお前達に会わせたい人達を連れてきたんだ。あ、勿論フーにもね」
「「「?」」」
明るい口調でそう言った日真理に、春風達が一斉に首を傾げると、急に画面が変わって、涼司達の代わりに1人の20代前半くらいの青年と、1人の10代前半くらいの少女が映しだされた。
その姿を見て、春風達が「え?」と声を漏らすと、
「久しぶりだな、歩夢、フー」
「……お兄ちゃん」
と、そう言った2人を前に、
「剛兄さん!?」
「お兄ちゃん!?」
「陽菜!?」
と、春風と歩夢は青年を、水音は少女のことをそう呼んだ。
その瞬間、
『えええええええっ!』
と、周囲の人達が驚きの声をあげた。
「え、ちょっと待って、お前達の知り合いか?」
と、ギルバートが戸惑いながら春風達に尋ねると、
「私の兄の、海神剛希です」
「僕の妹の、桜庭陽菜です」
と、歩夢と水音が2人をそう紹介した。その際、セレスティアが、
「おお! あの娘が!」
と、表情を明るくしていたが、今はスルーすることにした。
すると、
「驚くのはまだ早いぞ」
と、再び画面に現れた日真理がそう言うと、また画面が変わり、今度はかつて春風達が着ていたのと同じ、常陽学園の学生服に身を包んだ1人の少女がいた。
春風はその少女を見て、
「え、まさか、明華さん?」
と尋ねると、それに反応したのか、
「は、春風せんぱぁい」
と、明華と呼ばれた少女は、両目から大粒の涙を流しながら春風をそう呼んだ。
その姿を見て、ギルバートはギョッとなったのか、
「お、オイ春風! 誰だよあのお嬢ちゃんは!?」
と、春風を問い詰めると、
「あー、俺達が通っている学校の後輩の、山主明華さんです」
と、春風はタラリと冷や汗を流しながら、気まずそうにそう答えた。
その時だ。
「私もいるぞ」
『……え?』
突然の声に春風を含めた誰もが頭上に「?」を浮かべていると、また画面が変わって、今度はビシッとしたダークな感じのスーツに身を包んだ、1人の20代後半くらいのイケメン外国人がいた。
その姿を見て、
「ゲッ! あんた!」
と、凛依冴が嫌そうな表情になり、
「な、何故、あなたがそこに?」
と、春風が更に滝のように汗を流すと、イケメン外国人はニコリと笑って、
「久しぶりだね、私の愛しい春風」
と、流暢な日本語で、春風に向かってそう言った。
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