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第12章 集結、3人の「悪魔」
第345話 そして、「悪魔」達は並び立つ
しおりを挟む春風が少女・彼岸花と対峙していたその頃、リアナ、水音、冬夜、雪花、静流対ガストの戦いは熾烈を極めていた。
数ではリアナ達が有利なのだが、相手は偽物とはいえ「神」を名乗る存在なので、状況的にはかなりの苦戦を強いられていた。
そして、リアナ達の隙を掻い潜って、ガストの攻撃が春風に襲いかかった。
「ハ、ハルゥ!」
と、リアナの悲鳴があがった、まさにその時、春風の身に「変化」が起こった。
まず、春風の右目が真紅の「炎のようなもの」に包まれた。
次に、春風の髪が、腰に届くのではないかと思うくらいに伸び、色は黒から右目の「炎のようなもの」と同じ真紅に染まった。
その後、春風はゆっくりと彼岸花を鞘から引き抜き、迫り来るガストの攻撃を真っ二つにした。
「な、何ぃっ!?」
目の前で起きたまさかの出来事に、驚愕の声をあげたガスト。
そんなガストを無視して、リアナと水音は春風に近づいた。
「は……ハル、だよね?」
と、リアナは目の前にいる春風に向かって恐る恐る尋ねた。
そんなリアナに、
「うん。待たせたね、リアナ」
と、春風は優しい口調で答えたのだが、リアナも水音も、目をパチクリとし、たらりと冷や汗を流すだけで、何も言わなかった。そして、それは2人だけじゃなく、観客席にいるギルバート達も同様だった。
無理もないだろう。なにせ今の春風の見た目が、リアナ達から見て、あまりにも変わり過ぎていたのだから。
真紅の炎のようなものに包まれた右目に、腰まで届くくらいに伸びた真紅の髪。そして、その手は凛依冴に手渡された彼岸花を握ってはいるのだが、その彼岸花から伸びた金属の触手のようなものが、春風の右腕に絡みついていた。
無言のまま固まっているリアナに向かって、今度は春風が恐る恐る尋ねる。
「あーもしかして、こんな見た目だから、『怖い』かな? それとも、『気持ち悪い』、かな?」
そう尋ねた後、悲しそうな表情になった春風に、リアナの口から出た言葉は……。
「……綺麗」
「え?」
「ハル、凄く綺麗だよ」
そう言ったリアナに続くように、水音もゆっくりと口を開く。
「うん。僕もそう思う」
「み、水音?」
「『怖い』って思ったけど、それに負けないくらい……いや、それ以上に、凄く綺麗だと僕も思っているよ」
そう言った水音に、春風は一瞬開いた口が塞がらなかったが、
「オイオイ2人とも、それ男の俺に言うセリフじゃないと思うんだけど」
と、春風は呆れとほんの少しの怒りが混ざった表情でそう返した。
しかし、その後すぐに「ま、いっか」と小さく呟くと、
「あーちょっと失礼」
と言って、リアナと水音の間に立った。
その瞬間。
「「「……あ」」」
と、観客席にいるギルバート、ウィルフレッド、そしてジゼルが、何かに気づいたかのような表情になった。
「あ、あの、お父様、どうなさったのですか?」
と、ウィルフレッドの側に立つイブリーヌがそう尋ねると、反応したのは、ジゼルだった。
「この『偽りの歴史』に塗れた世界『エルード』で、許されざる過ちが犯されし時、3人の『悪魔』、現れん。1人は『真の神々』に育てられし『白き悪魔』。1人は『偽りの神々』に逆らいし『青き悪魔』。そして最後は、『異界の神々と契りを結びし『赤き悪魔』。やがて3人の悪魔が集い、並び立つ時、『偽りの神々』が死ぬ未来が決定される。その後、悪魔によって全ての『偽りの神々』は滅ぼされ、残されし人々は新たな未来へと歩み始める」
そう言い終えたジゼルに、凛依冴が尋ねる。
「それって、あなたが死ぬ間際に遺した『予言』ですよね?」
その問いにジゼルはコクリと頷くと、
「そうだ。あの日、俺とウィルフが聞いた『予言』だ」
と、ギルバートが口を開いた。
それに続くように、ウィルフレッドも口を開く。
「うむ。そして今、その『予言』が現実になった」
そう言うと、ウィルフレッドとギルバートは、真っ直ぐ目の前にいる3人を見つめた。
そう、「白き悪魔」であるリアナ、「青き悪魔」である水音、そして、「赤き悪魔」である春風を。
「ギル。彼らこそが……」
「ああ、間違いねぇ。あいつらこそが……」
ーー「神」を滅ぼす、3人の「悪魔」だ。
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