ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第12章 集結、3人の「悪魔」

第339話 「妖刀」

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 それは、今から数年前。凛依冴が「異界渡り」となって、暫く経った頃のことだった。

 平安時代の日本を思わせる和風的な世界で、彼女はその「刀」に出会った。

 「え、この『刀』を持ってってほしい?」

 「ええ、そうです」

 高貴な衣服に身を包んだその男性の言葉に、凛依冴は「いや、でもこれ……」と顔を顰めるが、

 「どうか、お願いします。その刀、『彼岸花』は、あまりにも多くの『悲しみ』を食らい続けて、最早『妖刀』と化してしまったのです。平和になろうとしているこの世界に存在し続けていたら、いずれ大きな『災い』と『悲劇』をもたらしてしまうでしょう。ですから、そうなってしまう前に、あなたに持っていってほしいのです」

 と、男性に深々と頭を下げられてしまい、凛依冴は「仕方ないか」と、その頼みを聞き入れることにした。

 (妖刀・彼岸花、ね……)

 こうして、凛依冴はその刀・彼岸花と共に、その世界を後にするのだった。

 そして時は流れて、春風が凛依冴の弟子になってから、1年が経ったある日のこと。

 「……あの、師匠。何ですか?」

 凛依冴の家の地下室を訪れた当時12歳の春風が、目の前にあるを指差しながら凛依冴に尋ねた。

 「んん? どれどれ……って、ソレ!」

 驚く凛依冴が見たもの。それは、凛依冴がから持ち込んだ、「妖刀・彼岸花」だった。

 「わぁああ、駄目駄目! ソレに近づいちゃ駄目ぇ!」

 そう言って、凛依冴は大慌てで春風を彼岸花から引き離した。

 「え、何? 何ですか師匠?」

 突然のことに春風は目をぱちくりさせると、

 「この彼岸花はね、ものすごーく危なくて、ものすごーく怖くて、ものすごーく悍ましい刀なの! だから絶対、近づいちゃ駄目だからね!」

 と、凛依冴はわざとらしく体で彼岸花の危険さを表現しながらそう怒鳴った。

 その時は春風は「わかりました」と納得したが、その時からどういうわけか、いくら凛依冴が注意しても、春風は彼岸花に近づくのをやめなかった。

 (ここまで言ってもやめないなんて、まさか春風と彼岸花が惹かれあってるとでもいうの?)

 と、そんなこと考えて、凛依冴は何かに襲われるのだが、

 (まさかね!)

 と、その時はそう思っていた。

 それから3年後。春風が15歳の時のことだ。

 (うぅ、しくじった。この私が負傷するなんて……って、あれは……)

 そう、それは、とある「村」が襲われ、子供達がさらわれた、「あの日」のことだった。負傷した凛依冴が見たのは、たった1人で敵の本拠地に向かおうとする春風と、それを止めようとする水音との口論の場面だった。

 「まずい、止めなきゃ……!」

 と、凛依冴が2人のもとに向かおうとしたその時……。

 ーードクン。

 と、腰のポーチからそんな音が聞こえたの感じた凛依冴は、

 (……この感覚、まさか)

 と思ってポーチに手を入れると、

 「どうして!?」

 そこから出てきたのは、家に置いてきたはずの彼岸花だったのだ。

 (……春風と共に行きたいというの?)

 そう思った凛依冴は、「絶対に駄目だ!」と思っていたが、

 「……春風、コレを持って行きなさい」

 と、凛依冴は彼岸花を春風に持たせた。

 凛依冴から彼岸花を受け取った春風は、そのまま1人、子供達の救出向かった。

 そして、それから三日三晩が過ぎると、

 「ただいま、師匠」

 と、春風がさらわれた子供達を連れて戻ってきた。当然、誰1人欠けることなく、だ。

 その後、無事戻ってきたということで、「村」では祝いの宴が行われる中、

 「え、返す?」

 「はい、彼岸花をお返しします」

 と、春風は凛依冴に彼岸花を返した。

 「いいの?」

 と、凛依冴が尋ねると、

 「はい。このコを振るうには、俺は全然弱過ぎたようです」

 と、春風は「悲しみ」を秘めた笑みを浮かべながらそう答えた。

 凛依冴は「そう」と言って彼岸花を受け取ると……。

 ーートクン。

 という音が聞こえて、その瞬間、凛依冴は彼岸花が「何を思っているのか」を感じた。

 (……そう。あなた、春風とのね。でも、一緒にいると、また春風を悲しませてしまうから……)

 と思った凛依冴だが、それと同時に、

 (ああ、私にはわかる。きっと春風は近い将来、再び彼岸花を振るう時がくるわ)

 とも考えた凛依冴は、

 (なら、私がやることは……)

 と、日本に帰った後、凛依冴はすぐに知り合いの「鍛治師」に、彼岸花の力を僅かに宿した「分身」を鍛えてもらい、その後、知り合いの「錬金術師」に、その「分身」を小さな「指輪」へと変えてもらった。

 それから1年後、凛依冴は高校に入学した春風に、「入学祝い」としてその「指輪」を贈った。

 そしてさらに1年後、異世界「エルード」で、

 「師匠、これって……」

 「そう、正真正銘、『オリジナル本物の彼岸花』よ」

 春風は再び、「妖刀・彼岸花」を手にするのだった。
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