ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第12章 集結、3人の「悪魔」

第338話 降臨、第3の「親玉」

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 空から響き渡った怒声に、闘技場内にいる者達は皆、

 『な、なんだなんだ!?』

 と驚いていると、突然、上空から眩い光が闘技場内に降り注がれた。

 春風はその光を見て、

 (あれ? この感じ、もしかして……)

 と、そんなことを考えていると、その光の中から、緑色の髪を持つ10代前半くらいの少年が現れた。

 よく見ると、少年は何処か怒っている様子だったが、

 「敢えて聞くけど……何者だ?」

 と、春風はそれをスルーして少年に向かって尋ねた。

 春風に尋ねられた少年は、

 「僕はガスト、『風』の神だ!」

 と、怒り顔で春風に向かって怒鳴りながら名乗った。

 それに対して春風は、
 
 「ふーん、第3の『悪党』ご登場ってわけか」

 と、少年、「風」の神ガストとは逆に、落ち着いた表情かつ太々しい態度でそう返した。

 ガストはその言葉にカチンとなって、

 「だーれが悪党だ! 『神』に対してその態度はなんだ! ていうか、よくも僕達が選んだ『勇者』達の活躍の場を奪ったな!」

 と、先程以上に怒鳴り散らすと、視線を春風からずらして、

 「お前達もお前達だ! なんださっきの『無理』って発言は! 目の前に倒すべき相手がいるんだぞ! わかっているのか!?」

 と、「勇者」こと小夜子とクラスメイト達にも怒鳴り散らした。

 だが、その言葉に勇者達は、

 『だって、ループス様可愛かったんだもん!』

 と、全員一斉にそう返したので、ガストは「んが!?」と口をあんぐりした。

 (あららぁ、自分達が選んだ『勇者』達に口答えされてやんの)

 と、春風は「ハハ」と苦笑いしながらそんなことを考えていたが、すぐに表情を変えて、

 「ハ、なーにが『神』だよ。お前とマールとカルド、そんであと2人は、俺達異世界人と同じ『他所者』だろうが」

 と、更に太々しい態度でそう言った。

 その言葉にガストが更にカチンときたのか、

 「……今、なんて言った?」

 と、春風をギロリと睨みながら尋ねると、

 「何度でも言ってやるよ、お前らは『神』なんかじゃない。俺達と同じ『他所者』なうえに、この世界の、『本当の神様』に酷いことして、その座を奪って神様気取ってるだけの、ただの『悪党』だってなぁ!」

 と、春風は真っ直ぐガストを見ながらそう言い放った。

 ガストはその言葉に何かがキレたのか、
 
 「……殺してやる」

 と、春風を睨みながら言うと、春風に向かっていくつもの「風の塊」を放った。

 それを見たイブリーヌが、

 「は、ハル様!」

 と、悲鳴をあげた次の瞬間、春風の目の前に1人の人物が現れて、

 「怒剛拳!」

 と、襲いかかる「風の塊」に向かって技を放ち、その「風の塊」を消滅させた。

 「助かったよ、水音」

 と、春風はその人物、水音に向かってお礼を言うと、

 「まったく、いらん挑発しないでよ」

 と、水音はガストを睨みつけながら春風に文句を言った。

 そんな水音を見て、ガストは震えながら口を開く。

 「出たな、桜庭水音! マールを裏切った憎き敵!」

 そう言ったガストを睨みつけたまま、水音も口を開く。

 「裏切った、か。確かに、お前達から見たら、その通りだろうな。だけど……」

 そう言うと、水音は両手に青い炎のようなエネルギーを纏わせて、

 「春風に手を出そうと言うなら、僕が許さない!」

 と、ガストに向かってそう言い放った。

 その言葉を聞いて、ガストが「何をぉ!?」と喚いていると、

 「ありがとう、水音。俺も一緒に戦うよ」

 と、春風は水音の隣りに立ってそう言った。

 そんな春風に、

 「でも春風、の彼岸花で、どう戦う気なの?」

 折れた切っ先のない彼岸花を見た水音がそう尋ねると、

 「うーん。まぁ、他にも戦う手段はあるから、それでどうにかするよ」

 と、春風は困ったような笑みを浮かべながらそう答えた。

 その時、

 「あら、『武器』ならあるわよ」

 『!』

 その声に驚いた春風と水音が振り向くと、

 「ヤッホー」

 「「師匠!」」

 そこにいたのは、凛依冴だった。

 因みに、その登場にはリアナとヘリアテスとループス、そしてガストも驚いていた。

 春風は「いつの間にいたんですか!?」と聞きたかったが、それよりも先に、

 「……すみません、師匠。師匠が用意してくれた彼岸花、折っちゃいました。

 という謝罪の言葉が口から出たので、

 「いやそっちなの!? 今そんなこと言ってる場合じゃないだろ!?」

 と、水音に突っ込まれた。

 すると、凛依冴は穏やかな笑みを浮かべて、

 「大丈夫、全然問題ないわ」

 と言うと、腰のポーチに手を入れてゴソゴソとすると、そこから紫色の布袋に入れられた細長い「何か」を取り出した。

 その後、凛依冴が「ちょおっとごめんね」と小さく言った次の瞬間、その細長い「何か」が赤く輝いて、それが春風の持っている折れた彼岸花とその鞘を小さな粒子に変えた。

 「うわ、何だ!?」

 突然のことに春風が驚いていると、粒子に変わった彼岸花と鞘は、凛依冴の持っている細い「何か」の中へと吸い込まれた。

 「うん。これでよし」

 と、凛依冴はそう小さく呟くと、その細長い「何か」を、

 「はい、春風」

 春風前に差し出した。

 それを見て、誰もが頭上に「?」を浮かべる中、春風は恐る恐るその細長い「何か」を受け取った。

 普通なら、ここで「彼岸花の呪い」が発動し、それが細長い「何か」を弾くのだが、

 (あれ? 何も起きない?)

 どういうわけか、呪いは発動せずに、しっかりと細長い「何か」を握ることが出来た。

 春風は「どういうことだ?」と思って、布袋の封を外すして中身を見ると、

 「……あ」

 現れたのは、だった。

 それは、忘れもしない「あの刀」の柄だった。

 「師匠、これって……」

 と春風が凛依冴に向かって尋ねるようとすると、凛依冴はニヤリと笑って答える。

 「そう、正真正銘、『オリジナル本物の彼岸花』よ」
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