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第12章 集結、3人の「悪魔」
第317話 春風の「想い」と「答え」
しおりを挟む「ごめん、後は任せた」
アマテラスが春風に向かってそう言った瞬間、周囲から、
『な、何ぃいいいいいいいっ!?』
悲鳴があがる中、話を振られた春風はというと、表情こそ真面目だが、
(お、お、俺に丸投げだとぉおおおおおおおっ!?)
と、こちらも心の中で悲鳴をあげていた。
周囲の視線が突き刺さってくる中、春風は表情を変えず、
(オイオイ、俺どう答えたらいいんだぁ!?)
と、心の中でオロオロしていると、ふとチラリと見たアマテラスの表情が、
ーー大丈夫。君はもう『答え』を持ってるでしょ?
と言わんばかりの、穏やかで優しそうな感じになっていたので、春風は深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
「……そっか。俺はもう、『答え』を持っているんだよなぁ」
そう小さく呟くと、春風は真っ直ぐウィルフレッドを見て、
「ウィルフレッド陛下」
と話しかけた。
「な、何かな春風殿?」
戸惑うウィルフレッドを見て、春風は口を開く。
「俺は、この件の首謀者であるあなた方が信じる『神々』と、『勇者召喚』を実行に移したあなた方セイクリア王国を、許すことは出来ません」
『っ!』
「それだけではありません。陛下、覚えていますか? 召喚が行われたあの日、俺があなたにした『最後』の質問と、その時あなたがなんて答えたかを」
その言葉を聞いた時、ウィルフレッドの脳裏に、その「質問」と「答え」が浮かび上がった。
ーーもし仮に、俺達が『邪神』と『悪魔』を倒すことが出来た時、あなた方は俺達に何をしてくれるのですか?
ーー勿論、見事に倒すことが出来たならば、其方達を「英雄」として讃え、それ相応の褒美と名誉を授けることを約束しよう。
その「質問」と「答え」を思い出して、ウィルフレッドは言う。
「……ああ、覚えている」
「あの『答え』を聞いた時、俺のあなた方に対する『怒り』が増しましたよ」
「な、何故だ?」
「だってあなたあの時、『元の世界に帰す』って、言ってくれなかったじゃないですか」
「っ!」
その瞬間、クラスメイトの1人が「あ……」と小さく呟いたが、春風はそれを無視して話を続けた。
「その時俺は思いましたよ、『こいつらは俺達を帰す気はないんだ』ってね(まぁといっても、これは俺が勝手に期待してただけだったんですけど)」
春風のその言葉に、ウィルフレッドは、
「それは違う! そんなことはない!」
と、言いたかったのだが、
「……」
と、言い訳に聞こえてしまうと考えたのか、何も言わず、代わりに、
「だから、あの時我々のもとから去ろうとしたのか?」
と、春風に向かってそう尋ねた。
「はい。それですんなりとことが進むかと思ったら、あの『ひと騒動』っていうか、アッシュさん達との『乱闘』みたいなものだったんですけどね」
そう言うと、春風は遠い目をして「ハハハ」と笑ったが、すぐに表情を変えて話を続けた。
「まぁ、それはひとまず置いといて、その後、リアナと一緒にセイクリアを飛び出して、ヘリアテス様に会って、この世界で起きた500年前の『真相』を聞かされた時、俺の怒りは更に増しましたよ。それこそ、『テメェらまとめて皆殺しにしてやる!』ってくらいにね」
と、春風がそう言い放ったその時、ウィルフレッドを含めた誰もが皆、タラリと冷や汗を流した。
「だけど……」
『?』
「リアナや、アマテラス様達のおかげで、少しずつですけど、『この世界のことをちゃんと見よう』って思えるようになって、で、シャーサルでハンター生活を始めて、そこでいっぱい人に出会って、人と話をして、『仲間』が出来て、レギオン作ってリーダーになって、イブリーヌ様や、ユメちゃん達と再会して、一緒にハンター生活送って、ギルバート陛下に出会って一緒にウォーリス帝国に行って、皇族の皆さんと出会って、水音と再会して、決闘して、兵士や騎士の皆さんと過ごして、気がついたら……いつの間にかこの世界で、『大切なもの』が、出来ちゃいました」
『……っ』
穏やかな笑顔でそう言った春風に、周囲の人達は何も言えなかった。
そんな状況の中、春風はすぐに真剣な表情になって、再び真っ直ぐウィルフレッドを見つめて言う。
「もう一度言います。俺は、この件の首謀者であるあなた方の『神々』も、実行犯であるあなた方セイクリア王国を許すことは出来ない。でも……俺は、仲間達と一緒に、地球にいる『大切なもの』と、この世界で出来た『大切なもの』を守る為に戦います。その為にも、あなた方が信じる『神々』には退場してもらいますが、あなた方セイクリア王国に対しては何もしません」
「は、春風殿、それは……!」
「ですが!」
「?」
と、頭上に「?」を浮かべたウィルフレッドに、春風は言う。
「ウィルフレッド陛下。この一件が片付いて、2つの世界が消滅を免れたら……あなたには、ある『償い』をしてもらいます」
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