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第12章 集結、3人の「悪魔」
第318話 「償い」
しおりを挟む「つ、償い……だと?」
春風の言葉を聞いて、ウィルフレッドはタラリと冷や汗を流した。それは、周囲の人達も同様だった。
そんなウィルフレッド達を前に、春風は話を続ける。
「そうです……ああ、そんなに身構えなくてもいいですよ、『死ね』なんて言うつもりはありません。イブリーヌ様を、悲しませたくないですから」
「は、ハル様!」
春風のそのセリフに、イブリーヌは思わずキュンとなった。
だが一方、ウィルフレッドはというと、
「で、では其方は、私に何をさせるつもりだ?」
と、何処か恐怖している様子で春風に尋ねた。
そんな状態のウィルフレッドに対し、春風は真剣な眼差しをウィルフレッドに向けて答える。
「いくつかあります。まず1つ目は、この一件が終わったら、ここにいる先生とクラスメイトのみんな、そして、その家族への謝罪です。勿論、俺の家族と、とある方への謝罪も忘れずにお願いします」
「其方への謝罪はいいのか?」
「俺はいいんです。この世界に来ることを決めたのは、他でもない俺自身の意思ですから」
「し、しかし、それは……!」
ウィルフレッドは春風に向かって反論しようとしたが、春風の「いいんです」という意志が込められた視線を受けて、
「……わ、わかった」
と、その一言だけを言って、後は口を閉ざした。
それを確認した後、春風は更に話を続けた。
「で、2つ目なんですが、前にイブリーヌ様から、あなたがとても良い国王様で、マーガレット王妃様にとって良い夫で、クラリッサ様とイブリーヌ様にとって良いお父さんだと聞きました」
その言葉を聞いた瞬間、イブリーヌは顔を赤くして、
「ちょ、ハル様!?」
と、春風を止めようとしたが、ギルバートとセレスティアに体と口をおさえられて、身動きが取れなくなった。
そんな状態のイブリーヌに構わず、春風は更に話を続ける。
「なので、ウィルフレッド陛下。この一件が終わった後でも、あなたには全力で、その生涯をかけて、良い国王で、良い夫で、良いお父さんとして生きてもらいます」
その言葉に、周囲が「どういうこと?」と戸惑う中、ウィルフレッドは更に冷や汗を流して春風に尋ねる。
「……それはつまり、其方は私に、『生きろ』というのか? 2つの世界を消滅させるキッカケを作った私に、その『罪』を背負ったまま、王として、夫として、父親として生き続けろと、そう言いたいのか?」
そう尋ねられた春風は、ゆっくりと口を開いて、
「はい」
と、力強く頷いた。
その返事を聞いて、ウィルフレッドは少しの間黙り込むと、
「……其方は、随分と残酷なことを言うのだな」
と、顔を下に向けてそう言ったが、
「いやぁ、ウィルフレッド陛下なら大丈夫でしょ」
と、春風は軽いノリでそう返した。
その言葉にウィルフレッドが「何?」と呆けた表情になると、
「だって、あなたは1人じゃないからですよ」
と、春風は穏やかな笑みを浮かべてそう言った。
「……1人じゃ、ない……だと?」
「ええ、あなたにはまだ、マーガレット王妃様や、クラリッサ様にイブリーヌ様が……『家族』がいますし、長年あなたを支えてきた『臣下』の方がいます。勿論、ここにはギルバート陛下だっていますしね」
そう言って春風はチラリとギルバートを見ると、ギルバートはニヤリと笑って親指を立てた。
ウィルフレッドはそのを見て、
「ギル……」
と、口元を緩めて小さく呟いた。
それを見た春風は、笑顔で話を続ける。
「ね、ご覧の通り、ウィルフレッドは1人じゃありません。この『事実』がある限り、多分……ですが、大丈夫だと思います」
その言葉に、ウィルフレッドは再び顔を下に向けて、
「……そうか」
と呟くと、またすぐに顔を上げて、
「わかったよ春風殿。私は、其方が提案したその『償い』を、全力で行うことを、この場で誓おう」
と、真っ直ぐ春風を見てそう言った。
「うん。それじゃあ……」
春風はそう言うと、ウィルフレッドの側まで近づき、スッと右手を出した。
「……駄目、でしょうか?」
恐る恐るそう尋ねた春風を見て、ウィルフレッドは、
「いや……」
と、小さく言うと、強い想いを秘めた笑顔で、その手をガシッと掴んだ。
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