113 / 608
第7章 襲来、「邪神の眷属」
第101話 修羅場突入
しおりを挟む「あー、コホン」
と、わざとらしく咳き込むフレデリックに、春風とクラスメイト達は視線を向けた。
「そちらの話がまとまったところで……そこの3人も入ってきて構いませんよ?」
と、フレデリックがそう言うと、ソーッと扉を開けて、リアナ、アデル、ルーシーが、
「「「し、失礼します」」」
と、気まずそうな表情で入ってきた。
すると、リアナの顔を見てハッとなったクラスメイト達が、
『あぁっ! 幸村(君)をさらった人!』
と、指をさしてそう叫んだので、リアナはカッとなって、
「ちょっと! 誤解を招く様な事言わないで!」
と怒鳴った。
両者が睨み合っていると、何やら不穏な空気を感じた春風は、
「ワァーッ! 待って待って、みんな落ち着いて! リアナも!」
と、大慌てで間に割って入って宥めようとしたが、次の瞬間、クラスメイト達は全員、
『え?』
と言ってポカンとした表情になった。
その様子を見た春風が、
「あ、あれ? どうしたのみんな?」
と、恐る恐る尋ねると、
「今、リアナって言った?」
と、クラスメイトの1人である眼鏡をかけた少年、野上が、リアナを指差して春風に問い返した。
「え? ああ、うん」
春風は首を傾げてその問いに答えると、
『ゆ、幸村(君)が……』
「?」
『幸村(君)が女の子を名前アンド呼び捨てにしたーっ!』
「……あっ!」
クラスメイト達がそう悲鳴の様なものをあげた瞬間、春風はある事を思い出した。
(そういえば俺、みんなの前で女の子を呼び捨てにした事なかったんだったぁっ!)
そう、春風は今の高校に在学中、クラスメイト達の前では女子をいつも名字アンドさん付けで呼んでいて、リアナやルーシーの様に名前アンド呼び捨てにした事などなかったのだ。
それに気付いた春風は、クラスメイト達にどう言い訳をしようかとアワアワしていると、リアナがズイッと春風の前に立ち、呆然としていたクラスメイト達に向かって、
「フッフゥン!」
と言って、渾身のドヤ顔を決めると、春風の左腕に抱きついて、
「そうだよぉ~。私とハルはぁ、かったぁい絆で、結ばれてるんだよぉ」
と、何ともわざとらしい感じの口調でそう言った。
それを聞いたクラスメイト達は、
『は、ハルゥ!?』
と、ショックで再び悲鳴の様なものをあげた。
「ちょ、ちょっとリアナ! いきなり何してんの!? 何言っちゃってんの!?」
春風が大慌てでリアナに問うと、リアナはチラッと春風を見た後、背後のアデルとルーシーに向かって、
「ホラァ、2人共、ハルには結構助けられてるんでしょ?」
と笑顔で質問した。
いきなり話を振られて、2人は一瞬「え?」となったが、リアナの雰囲気にのまれて、すぐに気まずそうな表情で答えた。
「あー、まぁ、確かにアニキには世話になってるけど……」
『あ、あ、アニキィ!?』
「は、はい。わ、私も、ハル兄さんに、助けてもらってます」
『は、は、ハル兄さん!?』
と、連続で悲鳴の様なものをあげるクラスメイト達を見て、
「ま、待って! これは、その……」
と、春風は何とかわけを話そうとしたが、クラスメイト達はプルプルと体を震わせて、
『ゆ~き~む~ら~(く~ん~)』
「は、ハイ」
『お前は一体何をやってたんだぁあああああああっ!?』
「ヒエェーッ! ご、ごめんなさいぃいいいいいいいっ!」
クラスメイト達に怒られたその瞬間、廊下にまで春風の悲鳴が響き渡った。
そんな春風の様子を見たフレデリックは、
(フフ、若いって良いですねぇ)
と、心の中で呟きながら、穏やかな笑みを浮かべるのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
185
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる