ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第7章 襲来、「邪神の眷属」

第102話 修羅場の後

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 結局、春風はあの後クラスメイト達にひたすら謝った。その際、

 「リアナ、後でお仕置きだからな」

 「そ、そんなぁ!」

 といったやりとりがあったが、周囲の人達は聞かなかったことにした。

 それから少しして、総本部長室の中が漸く静かになると、落ち着いた春風がフレデリックに質問をした。

 「あの、それでどうしてここに勇者の方々がいるのでしょうか?」

 「あぁ、それはですね……」

 と、フレデリックが答えようとしたその時、

 「それにつきましては、わたくしに答えさせてください」

 と、ドレス姿の少女が手をあげてそう言った。
 
 フレデリックは一瞬考え込んだが、

 「わかりました」

 と言って、発言権をその少女に譲った。

 少女は「ありがとうございます」と言った後、春風の方を向いて、

 「お久しぶりです、幸村春風様」

 と、丁寧にお辞儀しながら言った。

 それに対して、春風は少し驚きながらも真剣な表情で、

 「あなたは……」
 
 と、返した。

 これがギャグ漫画だったら、ここで、

 「……どちら様ですか?」

 と言って周りをズッコケさせる所だろう。

 「セイクリア王国第2王女の、イブリーヌ・ニア・セイクリア様ですね?」

 だが、春風はボケなかった。

 「まぁ! わたくしのことを覚えていてくださったのですね!」

 まさか名前を覚えられていた事に喜ぶ少女ーーイブリーヌだったが、すぐにハッとなって顔を赤くして、

 「し、失礼しました」

 と、すぐに春風に謝罪した。

 「あ、いえ、気にしないでください」

 春風は慌ててイブリーヌにそう言うと、彼女の背後にいる騎士の男女をチラリと見た。

 よく見ると男性の騎士は「ふむふむ」といった表情で春風を見ているが、女性の騎士は今にも春風を射殺さんとばかりに睨みつけていたので、春風は急いでイブリーヌに、

 「あの、それで先ほど自分がした質問の答えなのですが……」

 と、質問の答えをするよう促した。

 「そ、そうですね」

 そう言ったイブリーヌは「コホン」とわざとらしく咳き込み、深呼吸をすると、真面目な表情になって口を開いた。

 「春風様は、『邪神の眷属』という魔物をご存知ですか?」

 「ええ、今世界中を騒がせている魔物ですよね? 確か、ウィルフレッド国王陛下の話では、『長きに渡る封印から目覚めた邪神が生み出した魔物』だったでしょうか?」

 「はい、その通りです。数は少ないのですが、どれも普通の魔物とは比べ物にならないくらいの強さを誇っているのです。そしてここ最近、その邪神の眷属の活動が活発化していて、調査をした結果、その中の1体がこのシャーサルに向かっているという情報を得たのです」

 「何ですって!? それは本当ですか!?」

 そう言って春風は視線をフレデリックに向けると、フレデリックは無言でコクリと頷いた。

 「……失礼しました。続きをお願いします」

 「はい。それでわたくし達セイクリア王国とウォーリス帝国は、共にその邪神の眷属を倒す為に、このシャーサルに来たのです」

 「そうだったのですか。それではこちらにいる勇者達も、その戦いに参加する為、で良いのでしょうか?」

 「ええ、そうです。と言いましても、相手は1体だけという事もあって、今いるのはこちらの6人だけで、他は皆王宮にいます」

 「そう、ですか……」

 春風はそう言って顔を下に向けていると、今度はイブリーヌが話しかけてきた。

 「あの、わたくしからも宜しいでしょうか」

 「? 何ですか?」

 「あなたは、今でもセイクリア王国わたくし達のことを、恨んでいますか?」

 「……それは、どういう意味ですか?」

 「勇者召喚が行われたあの日、あなたはとても怒っていました。後から聞いたのですが、あなたには大切な家族と、大切な人達がいて、その人達との『日常』を、とても大切にしている方だと聞きました。その『日常』を奪い、壊したわたくし達を、あなたは今でも恨んでいるのですか?」

 「それは……」

 イブリーヌのその質問に、春風は目を閉じて自分の胸にソッと手をあてて黙り込むと、ゆっくり目を開けて、真っ直ぐイブリーヌを見て答えた。

 「……『恨んでる』というより、『怒ってる』と言えば宜しいでしょうか。あの日、リアナと一緒にセイクリア王国を飛び出して、このシャーサルに来て、ハンターになって、住人さん達や、先輩ハンターさん達と触れ合って、レギオン作ってリーダーになって、一緒に暮らして、ちょっと、いえ、結構、『悪くない』と思う様になりました」

 「……」

 「だけど、どれだけ時が経っても、心の中では、セイクリア王国あなた方と、あなた方が信じる『神』に対する怒りは、まだ消えていません」

 と、静かだが、力強くそう答えた春風に、イブリーヌだけでなく、周囲の人達も、何も言えなかった。

 確かなのは、その時の春風の表情は、「悲しみ」と「怒り」、「許す気持ち」と「許さない気持ち」が混ざった様な、見てる方が胸が締め付けられるものだったそうだ。
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