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第7章 襲来、「邪神の眷属」
第100話 再会、春風と「勇者」達
しおりを挟む(え? え? 何で? 何でみんなここにいるの?)
セイクリア王国に置いてきたクラスメイト達(全員ではないが)のまさかの再会に、春風は内心混乱していたが、
「野上君、朝日君、天上さんに氷室姉妹さん、それに……」
と、春風から見て右から順に彼らの名前を呼び、そして最後の1人になって、
「わ、海神、さん」
と、全員呼び終わったその時、春風はハッとなった。
何故なら、クラスメイト達に注目しすぎて、他の人がいるのを忘れていたからだ。フレデリック総本部長と、ドレスを着た少女、そして少女の側に立つ騎士はまだいい。フレデリックは置いといて、彼女達が何者なのかを知っていたからだ。
しかし、残った2人が問題だった。
1人は真っ赤なロングコートをマントの様に羽織った、鍛え上げた肉体を誇るスーツ姿の女性。もう1人は、派手な金色のロングコートを女性と同じ様にマント代わりに羽織った、物腰の柔らかそうなイケメン男性だ。
春風は2人が何者なのかを知っていた。女性の方は巨大レギオン「紅蓮の猛牛」のリーダー、ヴァレリー・ウィンチェスター。そして男性の方は、もう1つの巨大レギオン「黄金の両手」のリーダー、ハンク・ブレイトンだ。
春風は「や、やばい」とオロオロしていると、フレデリックはニコリと穏やかな笑みを浮かべて、
「ああ、大丈夫ですよ春風さん。2人はもう事情を知っておりますので」
と言ったので、春風は「へ?」と間抜けな声を出して2人のレギオンリーダーを見ると、2人とも無言で「うんうん」と頷いていた。
「あぁ、そうでしたか……」
と、春風がそう言って胸を撫で下ろすと、またハッとなって、
「じゃなくて! え? 何で『勇者』っていうか、みんなここにいるんですか?」
『なんで?』
すると、若干混乱している様子の春風の前に、長い茶髪をポニーテールにした眼鏡をかけた少女が、ズンズンと怒っている様子で近づいてきて、
「今まで何やってたのよ!」
と怒鳴ってきた。
「お、落ち着いてください、天上、さん……」
春風はまだ少し混乱しながらもなんとか宥めようとしたが、
「落ち着けですって!? 4ヶ月も音沙汰無しの人が何言ってるのよ!?」
と、天上さんと呼ばれた少女の怒りは収まるどころかますますヒートアップしていた。
そこへ、
「そうだぞ! お前、俺らがどんだけ心配したと思ってんだよ!」
と、今度は春風より少し背が高い感じの、いわゆる「熱血少年」の風貌をした少年が怒鳴ってきた。
「あ、朝日、君……」
さらに、
「そ、そうだよ。私達、すっごく、不安になったんだよ!」
「そうだそうだ!」
と、同じ顔をした短い黒髪の2人の少女が続いてきた。
「ひ、氷室彩織さんに、詩織さん……って、心配? 不安? 何で!?」
と、春風が「?」を浮かべながら本気で混乱していると、
「幸村君が!」
「!」
そう叫ぶ声に三度ハッとなった春風が声がした方を向くと、そこには肩を震わせているストレートにした長い黒髪の少女がいた。
「わ、海神さんどうしたんですか?」
と、春風が恐る恐る尋ねると、海神さんと呼ばれた少女は、
「幸村君が、悪いんだよ? 私達の事、置いてったから……」
と、大粒の涙を流しながらそう答えた。
それに続く様に、
「そうだよ、君が悪いんだよ? 幸村君」
と、天上と同じくかけた眼鏡をかけた「お調子者」の印象を持った少年が口を開いた。
「野上君……」
「君があの日、俺達の事置いてったから、こうして怒ったりしてるわけなんだよ?」
と、野上君と呼ばれた少年が両腕を頭の後ろで組んでそう言うと、春風は「あ……」となって、
「そうだよね。うん、俺の所為、だよね」
と、申し訳なさそうな表情になった後、「うん」と頷いて、
「本当に、ごめんなさい!」
と、勢いよく頭を下げて、クラスメイト達に謝罪した。
その様子を見て、フレデリック、ヴァレリー、ハンクは「フフ」と笑みを浮かべた。
一方、総本部長室の外では、
(((うう、凄く入りづらい……)))
と、リアナ、アデル、ルーシーの3人が、物凄く気まずそうに中の様子を見ていたのだった。
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