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第5章 対決、断罪官
第73話 大隊長、動く
しおりを挟む春風とリアナ。ウォーレンと若い男性隊員。お互い睨み合って一歩も動かない中、リアナが春風に質問してきた。
「それでハル、これって今どういう状況なの?」
「実は……」
春風はリアナにここまでの経緯を説明した。勿論、目の前の断罪官達に視線を向けた状態で、だ。
そして説明を聞き終えると、
「ハァ!? 何それ!? 思いっきり逆恨みじゃん! ていうか、すっごい理不尽じゃん!」
「やっぱそうだよね」
「うん。話を聞いて、私もすっごく頭にきたよ。だから……」
リアナは目の前の敵を真っ直ぐ見て、手にした武器ーー両刃「燃え盛る薔薇」を構え直し、
「私も一緒に戦うよ!」
そう宣言した。
春風は真剣な表情でリアナに尋ねる。
「いいの? そんな事をしたら、リアナも『異端者』認定されちゃうんだよ?」
「全然構わない。私、アイツら……ていうか、『五神教会』自体、大っ嫌いだから!」
リアナの言葉を聞いて、ピキッとなったのか、今度はウォーレンが尋ねてきた。
「ほう。それは、我らと敵対するという事で良いのだな?」
「当然!」
即答だった。
それを聞いて、ウォーレンは「そうか」と納得すると、
「よかろう。ならば貴様も、そこの異端者とその仲間、裏切り者のアリシア、そしてその少年と共に……この場で死んでもらう」
手にした長剣を構えた。
その瞬間、4人のいる場に緊張が走った。結界内のアリシア達は、全員ごくりと固唾を飲んだ。
「行けるか? ルーク副隊長」
ウォーレンが隣にいる男性隊員に話しかけた。
「ハイ、問題ありません! 行けます!」
ルークと呼ばれた男性は、「大丈夫」という表情で答えた。
「よし、ならば貴様は、負傷した隊員達を集め、手当てを頼む。攻撃の参加はそれが終わった後だ」
「ハッ!」
そう言って、ルークがウォーレンから離れた、次の瞬間。
「行くぞ」
ーーバッ!
「「!」」
ウォーレンが素早く春風とリアナに近づき、長剣を振り下ろした。
するとーー。
ドゴォオン!
2人は間一髪避けることができたが、振り下ろされた長剣の一撃によって、地面が大きく抉られた。
(うわぁ! なんてパワーなんだ!)
春風が心の中でそう感心すると、ウォーレンがギロリと睨んで、
「まずは貴様だ」
そう言って、一瞬で春風に接近し、今度は横に長剣を振るって、再び一撃をお見舞いした。
(は、速い! くっ!)
ガキィン!
春風はその一撃を、彼岸花の刃で防御した。
すると、ぶつかった刃と刃が、バチバチと火花と音を立てた。
「ふむ。その真紅の剣、やはり『魔剣』か」
両者は刃をぶつけたまま一歩も動かなかった。だが、
「ふん!」
(うぉ!)
力はウォーレンの方が上のようで、長剣は振り抜かれ、春風は思いっきり背後に吹き飛ばされた。
「ぐぅうううっ!」
すぐに彼岸花を地面に突き立ててどうにか止まった春風だが、衝撃が強すぎたのか、その場で片膝をついた。
「ハル!」
ウォーレンは春風を見てさらに攻撃しようとすると、
「させない!」
それを阻止するために、リアナはウォーレンの頭上に燃え盛る薔薇を振り下ろした。
しかし、
「甘いわ」
ウォーレンはそれをあっさり避けると、長剣を持ってない方の拳をリアナの腹に叩きつけた。
「ガハ!」
悲鳴と共にリアナは吹き飛ばされ、背後の木に激突した。
「これはルーク副隊長の分だ。そして……」
そう言うと、ウォーレンはリアナに近づき、
「これで終わりだ」
手にした長剣を振り上げ、
「リ、リアナァ!」
「あ、あぁ(まずい、動けない)…」
振り下ろした。
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