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第5章 対決、断罪官
第72話 帰ってきた少女
しおりを挟む「うおおお! 貴様あああ!」
「ん?」
春風の頭上に刃が振り下ろされようとしていた。
(うお! ヤベェ! でも、このくらいなら……)
春風が防御態勢をとろうとした、まさにその時、
「させるかぁあああああああ!」
ガキィン!
「な!?」
突如現れた人物によって、振り下ろされた刃が弾かれた。そして、
「うりゃあ!」
ドゴン!
「グハァ!」
その人物は無防備となった相手の鳩尾に、強烈なパンチをお見舞いした。モロにくらった相手は凄い勢いで背後に吹っ飛ばされたが、そこにいたウォーレンが受け止めた。
「大丈夫か?」
「は、はい。申し訳ありません」
ウォーレンに受け止められた相手は、よく見ると20代くらいの若い男性だった。隊員達と同じ漆黒の鎧を身につけているから、彼も断罪官だろうという事はすぐにわかった。
その後、春風は攻撃を止めてくれた人物を見ると、
「ハル、大丈夫!?」
そこにいたのは、
「リ、リアナ!?」
リアナ・フィアンマだった。
「どうして、ここに?」
驚いた春風は、リアナに理由を尋ねた。
「ああ、それはね……」
リアナはここまでの経緯を話した。
それは、春風が断罪官達と遭遇した丁度その頃。
「はぁ。やっと帰ってこれた」
ギルドからの指名依頼を終えたリアナが、シャーサルに帰ってきた。そしてギルド総本部で依頼終了を確認すると、拠点である「白い風見鶏」に帰ろうと帰路に着いたその時、
「あ、リアナ!」
「ん?」
宿屋の1人娘のシェリルが、何やら焦っている様子でリアナに駆け寄ってきた。
「あ、シェリル、ただいま……て、どうしたの?」
「リ、リアナ。ハル君に会わなかった!?」
シェリルは息を切らしながらリアナに詰め寄った。
「ハル? ううん、今帰ってきたばかりだから、まだ会ってないよ」
「あ、あのねリアナ! 落ち着いて聞いて!」
リアナは「いや、シェリルが落ち着きなよ」と言いたかったが、黙ってシェリルの話を聞くことにした。
「あのね、リアナがいない間、家に泥棒が入って……」
そして、シェリルは泥棒が入った事から、その泥棒の捕まえる仕事を春風に依頼した事、調査の結果、春風がシャーサルの外へ出た事を話した。ここまでは「ふーん」と聞いていたリアナだったが、問題はその後だった。
「ハル君が家を出た後、少しして断罪官の人達が来たの」
「……へ?」
「それでその人達が質問したの。『今の少年は何処に向かっていった?』って」
その言葉を聞いた瞬間、リアナの顔が真っ青になった。
「リアナ? どうしたの?」
「探さなきゃ……」
「え?」
次の瞬間、リアナはバッと後ろに振り返って走り出した。
「リアナ!? 何処行くの!?」
シェリルの声を聞かずに走るリアナは、その勢いでシャーサルの外に飛び出した。
その時、
『リアナ姉ちゃん!』
「?」
そこに現れたのは、幼い精霊達だった。
リアナは「どうしたの?」と尋ねると、
『春風兄ちゃんが殺されちゃう!』
と、精霊達は泣きそうな声で訴えてきた。
「ハルの居場所を知ってるの!?」
『うん!』
「すぐに案内して!」
リアナはそう言うと、精霊達に案内されるまま、春風のもとへと再び走り出した。
(待ってて、ハル!)
その後、春風がいる森の中を駆け抜けると、今まさに絶体絶命の状態の春風を見つけたので、大急ぎで春風の側に飛び出したのだ。
「……という訳だよ」
「そうだったんだ」
リアナの説明を聞き終えた春風は、
「助かったよ、ありがとう。精霊達もありがとう」
と、リアナとちょっと離れた位置にいる精霊達にお礼を言った。それを聞いて、リアナと精霊達はとても喜んだ。
「それと……」
「?」
その後、春風はリアナに、笑顔で言った。
「おかえり、リアナ」
「! うん! ただいま、ハル!」
リアナは、満面の笑みでそう答えるのだった。
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