ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

文字の大きさ
上 下
77 / 608
第5章 対決、断罪官

第72話 帰ってきた少女

しおりを挟む

 「うおおお! 貴様あああ!」

 「ん?」

 春風の頭上に刃が振り下ろされようとしていた。

 (うお! ヤベェ! でも、このくらいなら……)

 春風が防御態勢をとろうとした、まさにその時、

 「させるかぁあああああああ!」

 ガキィン!

 「な!?」

 突如現れた人物によって、振り下ろされた刃が弾かれた。そして、

 「うりゃあ!」
 
 ドゴン!

 「グハァ!」
 
 その人物は無防備となった相手の鳩尾に、強烈なパンチをお見舞いした。モロにくらった相手は凄い勢いで背後に吹っ飛ばされたが、そこにいたウォーレンが受け止めた。

 「大丈夫か?」

 「は、はい。申し訳ありません」

 ウォーレンに受け止められた相手は、よく見ると20代くらいの若い男性だった。隊員達と同じ漆黒の鎧を身につけているから、彼も断罪官だろうという事はすぐにわかった。

 その後、春風は攻撃を止めてくれた人物を見ると、

 「ハル、大丈夫!?」

 そこにいたのは、

 「リ、リアナ!?」
 
 リアナ・フィアンマだった。

 「どうして、ここに?」

 驚いた春風は、リアナに理由を尋ねた。

 「ああ、それはね……」

 リアナはここまでの経緯を話した。

 それは、春風が断罪官達と遭遇した丁度その頃。

 「はぁ。やっと帰ってこれた」

 ギルドからの指名依頼を終えたリアナが、シャーサルに帰ってきた。そしてギルド総本部で依頼終了を確認すると、拠点である「白い風見鶏」に帰ろうと帰路に着いたその時、

 「あ、リアナ!」

 「ん?」

 宿屋の1人娘のシェリルが、何やら焦っている様子でリアナに駆け寄ってきた。

 「あ、シェリル、ただいま……て、どうしたの?」

 「リ、リアナ。ハル君に会わなかった!?」

 シェリルは息を切らしながらリアナに詰め寄った。

 「ハル? ううん、今帰ってきたばかりだから、まだ会ってないよ」

 「あ、あのねリアナ! 落ち着いて聞いて!」

 リアナは「いや、シェリルが落ち着きなよ」と言いたかったが、黙ってシェリルの話を聞くことにした。

 「あのね、リアナがいない間、家に泥棒が入って……」

 そして、シェリルは泥棒が入った事から、その泥棒の捕まえる仕事を春風に依頼した事、調査の結果、春風がシャーサルの外へ出た事を話した。ここまでは「ふーん」と聞いていたリアナだったが、問題はその後だった。

 「ハル君が家を出た後、少しして断罪官の人達が来たの」

 「……へ?」

 「それでその人達が質問したの。『今の少年は何処に向かっていった?』って」

 その言葉を聞いた瞬間、リアナの顔が真っ青になった。

 「リアナ? どうしたの?」

 「探さなきゃ……」

 「え?」

 次の瞬間、リアナはバッと後ろに振り返って走り出した。

 「リアナ!? 何処行くの!?」

 シェリルの声を聞かずに走るリアナは、その勢いでシャーサルの外に飛び出した。

 その時、

 『リアナ姉ちゃん!』
 
 「?」

 そこに現れたのは、幼い精霊達だった。

 リアナは「どうしたの?」と尋ねると、

 『春風兄ちゃんが殺されちゃう!』

 と、精霊達は泣きそうな声で訴えてきた。

 「ハルの居場所を知ってるの!?」

 『うん!』

 「すぐに案内して!」

 リアナはそう言うと、精霊達に案内されるまま、春風のもとへと再び走り出した。

 (待ってて、ハル!)

 その後、春風がいる森の中を駆け抜けると、今まさに絶体絶命の状態の春風を見つけたので、大急ぎで春風の側に飛び出したのだ。

 「……という訳だよ」

 「そうだったんだ」

 リアナの説明を聞き終えた春風は、

 「助かったよ、ありがとう。精霊達もありがとう」

 と、リアナとちょっと離れた位置にいる精霊達にお礼を言った。それを聞いて、リアナと精霊達はとても喜んだ。

 「それと……」

 「?」

 その後、春風はリアナに、笑顔で言った。

 「おかえり、リアナ」

 「! うん! ただいま、ハル!」

 リアナは、満面の笑みでそう答えるのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

不死殺しのイドラ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:12

【完結】君のために生きる時間

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,086pt お気に入り:686

10

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:1

[完結] 残念令嬢と渾名の公爵令嬢は出奔して冒険者となる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:36,749pt お気に入り:615

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14,062pt お気に入り:1,552

【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:319pt お気に入り:1,591

おいてけぼりΩは巣作りしたい〜αとΩのすれ違い政略結婚〜

BL / 完結 24h.ポイント:20,243pt お気に入り:2,687

流刑地公爵妻の魔法改革~ハズレ光属性だけど前世知識でお役立ち~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,811pt お気に入り:4,302

私達の愛の行方

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,060pt お気に入り:5,471

処理中です...