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第2章 冒険の始まり
第22話 初めての「戦い」と、運命の「出会い」
しおりを挟む目の前で剣を構える鎧姿の男女数人に、春風も刀ーー彼岸花を構えた。
「は! ま、待て、彼を殺してはならん!」
正気に戻ったウィルフレッドはすぐに「止めよ」と命じたが、怒りに我を忘れた男性が2人、春風に向かって突撃した。
だが、
「スキル[気配遮断]、発動」
春風はスキルを起動して文字通り自身の気配を消し去り、男性の攻撃を避けた。
「き、消えた!?」
「ど、どこだ!? どこにいる!?」
攻撃を避けられた男性2人は、春風を探そうとキョロキョロと周囲を見回した。
すると、
「ここだよ」
「「何!?」」
ガン! ガン!
「「ぐあぁっ!」」
スキルを解除して姿を現した春風が、男性2人の剣を持つ手を目掛けて彼岸花を振り下ろした。勿論、峰打ちである。思わぬ一撃を喰らった彼らは、持っていた剣を落として、痛そうに手を押さえた。
(うん。[気配遮断]は使える、と)
痛がる男性2人を見てそんな事を考える春風。そんな春風を見て、残りの男女は動けずにいたが、目の前で仲間を傷つけられた彼らも、男性2人と同じように怒りに身を任せて突撃してきた。
その時、春風の頭の中で何かが閃いた。
春風は無意識のうちに左手をズボンのポケットに突っ込み、「ある物」を取り出した。
その後、
「ちょっとごめんよ!」
「「?」」
と言って、春風は未だに痛そうに手を押さえる男性2人を立たせると、突撃してきた男女達に向かって蹴り飛ばした。
飛ばしたといってもレベル1なので、たいして飛んではいないのだが、それでも、男女達の動きを少しの間封じることは出来た。
その一瞬の隙をついて、春風は別のスキルを発動させた。
「スキル[風魔術]、発動」
春風がそう呟いた次の瞬間、取り出した「ある物」、「魔導スマートフォン零号」ーー以下零号の画面が光り、六芒星の「魔法陣」が描かれた。
春風はその「魔法陣」を男女達に向けると、この世界に降り立つ前に作った魔術を唱えた。
「求めるは“風”、『ウインド』!」
すると、「魔法陣」から突風が放たれて、男女達の1人に当たった。
「グアァアアア!」
突風をまともに受けた男女達の1人は、もの凄い勢いで背後の壁に激突した。その際、男女の1人の姿は何やら昔のギャグ漫画に出てきそうな面白いポーズをとっていた。
その姿を見て、男女達は勿論、王族達や、小夜子とクラスメイト達は口をあんぐりして呆然としていた。
(おー、こりゃスゲェや)
心の中で感心した春風は、その隙に持っている零号を[英知]で調べた。
魔導スマートフォン零号……異世界の道具「スマートフォン」を材料に錬成した魔導具。魔力を流すことによってスキルと魔術の発動媒体にする事が出来る。また、条件が整い次第、通話も出来る様になる。
(ハハ、我ながらスゲェの作ったなぁ)
苦笑いしながら心の中で呟く春風。そんな春風に対し、鎧姿の男女達の怒りは頂点に達した。
「おのれ貴様ぁあああああ!」
「よくも仲間をぉおおおおお!」
それに続く様に、「勇者召喚」に携わった魔術師達も、
「我等も続くぞっ!」
『オオッ!』
と、それぞれが春風に向かって魔術を放とうとしていた。
(ヤッベェ、ちょっと調子に乗り過ぎたかなぁ!)
と、後悔しながらも彼岸花と零号を構える春風。
その時だった。
「コラァアアアアアアアッ!」
何処からか少女のものと思われる怒鳴り声が聞こえた。そして、次の瞬間、
「グエェッ!」
と、魔術師達の1人が、上から落ちてきた「何か」の下敷きになった。
春風を含めたその場にいる者達全員が、その落ちてきた「何か」をよく見ると、そこにいたのは動きやすそうな真っ赤な服を着た、茶色のショートヘアの少女だった。
少女は下敷きにした魔術師からジャンプして、クルクルと回転しながら春風の前に背を向けた状態で着地すると、
「突然ですが、私、リアナといいます! 助太刀させてください!」
と言うと、その手に短い棒の両端に小振りの銀色の片刃剣を取り付けた様な武器を持って構えた。
これが、春風と数奇な運命を共にする事になる少女、リアナとの運命の出会いだった。
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