ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第2章 冒険の始まり

第23話 そして、少年は名乗った

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 「突然ですが、私、リアナといいます! 助太刀させてください!」

 そう言うと、目の前に現れた少女、リアナは、鎧姿の男女達と魔術師達に向かって武器を構えた。

 突然の事に春風は一瞬ボーっとなったが、

 「あ、これはどうもありがとうございます! スッゲェ助かります! 後俺、春風と申します!」

 と、すぐに我に返ってリアナにお礼と簡単な自己紹介をした。

 そんな2人のやり取りを見て、仲間を下敷きにされた残りの魔術師達は、顔を真っ赤にして再び魔術を発動させるが、

 「させないよっ!」

 と、リアナが魔術師達に向かって突撃した。

 しかし、鎧姿の男女達は、「そうはさせるか」と言わんばかりに剣を構えて魔術師達の前に壁になるように並んだ。

 そして、魔術師達が魔術を発動するための詠唱を終えようとしたその時、

 ドカッ!

 バキッ!

 ズゴン!

 「「「グハァッ!」」」

 と、魔術師達の悲鳴が聞こえた。

 驚いた鎧姿の男女達が慌てて後ろを振り向くと、

 「よう」

 と、そこには真紅の刀身を持つ刀で、自身の肩をトントンと軽く叩く春風がいた。魔術師達はというと、全員、春風の足元に倒れ伏していた。

 一体、魔術師達に何が起きたのか?

 実は、リアナが突撃するのと同時に、春風は[気配遮断]のスキルを発動させて、その後リアナと一緒に飛び出し、鎧姿の男女達が並び終わる前に彼らの間をすり抜けて、魔術師達に彼岸花の峰打ちをお見舞いしたのだ。

 そんな事を知らない鎧姿の男女達は、魔術師達が倒された事にショックを受けたが、

 「余所見しない!」

 と、リアナは持っていた短い棒の両端に小振りの片刃剣を取り付けた武器ーー両剣の峰を男女達の顔面に叩きつけた。

 『グアアアアアアアッ!』

 リアナの攻撃を喰らって次々と倒される男女達。そして、最後の1人にリアナが近づくと、

 「く、来るなぁ! 『流星突』!」

 と、怯えた最後の1人が、リアナに向かって技を出そうとした。

 技の名前を叫んだ最後の1人の剣が青白い光を纏う。

 そして、それを刺突という形で繰り出す様だ。

 だが、

 「させるかぁっ!」

 そう叫んだ春風は、ダッシュで最後の1人の背後に向かい、

 「喰らえ、膝カックン!」

 かくん。

 「オッフ!」

 膝カックンをお見舞いした。

 結果、最後の1人の技はリアナから大きく外れて背後の壁に当たった。

 「き、貴様よくも……」

 最後の1人が春風に文句を言おうとしたが、

 「女の子に何やってんだぁ! 求めるは“風”、『ウインド』!」

 と、怒った春風が最後の1人に「ウインド」を放った。

 「グフォア!」

 至近距離で「ウィンド」を喰らった最後の1人は、もの凄い勢いで壁に激突した。最初に喰らった者とは違うが、やはり昔のギャグ漫画に出てくる様な面白いポーズをとっていた。

 これで、鎧姿の男女達と魔術師達との戦いは終わった。

 王族達と小夜子とクラスメイト達は、未だに目の前の状況についていけず、呆然としていた。

 「ふぅ」

 春風は彼岸花を鞘に収めて、腕で額の汗を拭う仕草をすると、

 「ハァ。俺、こういうのは嫌いな方なのに……」

 と、溜め息を吐いてウンザリした表情で言った。

 「いやいや、凄くカッコ良かったよ。助けてくれてありがとう」

 そんな春風に、リアナは笑顔で褒めながらお礼の言葉を言った。

 その時、

 「新タナスキルノ発現ヲ確認」

 「一ツ星スキル[剣術]ヲ入手シマシタ」

 「サラニ[剣術]ヨリスキルノ派生ヲ確認」

 「二ツ星スキル[抜刀術]ヲ入手シマシタ」

 と、頭の中で「声」が聞こえて、

 「イッテエエエ!」

 春風は激しい頭痛に襲われた。

 「だ、大丈夫!?」

 心配になったリアナが春風の側によるが、

 「あー、だ、大丈夫……です」

 と、春風は肩で息をしながらリアナを制した。

 すると、

 「其方は……」

 「「?」」

 2人は声がした方に振り向くと、そこには玉座から立ち上がり、顔を強張らせているウィルフレッドがいた。

 「其方は本当に、『勇者』ではないのか?」

 緊張しながらも、国王としての態度を崩さずに春風に質問するウィルフレッド。そんなウィルフレッドを、春風は真っ直ぐ見ながら答える。

 「言ったはずですよ。俺は『勇者』ではありません」

 「それほどの強さを持っていながら、『勇者』ではないと言うのなら、一体何者だというのだ?」

 その質問に対して、春風は暫くの間「うーん」と考えていると、

 「俺の名前は、幸村春風。幸村が性で、春風が名前。でもって……」

 そして、両方の拳を腰の両側に当てて、

 「な、一般人だ!」

 と、自信たっぷりにそう名乗った。
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