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第二章 開幕

第29話 伝説

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「話の途中で逸れてしまったが、その伝説こそが、村や騎士団を襲い俺達が森で見付けた魔物……いやの死体、それに王国滅亡を暗示するものだったのさ」

 なっ!! 王国が滅ぶ事が伝説で語られていた? しかもそれに俺が出ているだと?
 しかも、今奴の事をと言うのをわざわざと言い直した。
 知っていたのか? 奴が魔族と言う事を。

「どう言う事だ? 俺が居たから王国が滅んだってのか? それに奴の事を魔族って呼んだが、先程まで魔物って呼んでただろ?」

「逆だよ。お前が滅んだんだ。王国の伝説で語られていた魔族によってな」

「俺が居なかったから……魔族によって滅んだ? いや、しかし王国が滅んだのは南方の国の姫を攫った報復だったんじゃないのか? なんなんだよその伝説ってのは!」

「まぁ待て。それについては順を追って話してやる。まずは話を戻そうか。さっき説明しと通りで、ヴァレウスの依頼によって、俺とかみさん、それにメイガスの三人は女占い師の素性を探る為、森の奥に踏み入り、そこであの魔族の死体を見付けたんだ」

 そうだった。そこで俺がメイガスの事を聞いたから話が逸れちまったんだな。
 しかし、あの魔族……プレートには女媧と書かれていたか。
 複数の個体が存在していたってぇのか?
 確かに神は色々な種類が居るとは言ったが、それ一種に付き一体とは言わなかった。
 ゲームの中ボスみたいなイメージで居たから、勝手に一体ずつだと思っていた。

「そうか……、あいつは複数居たのか」

「いや、なのだよ。あんなのが何体も居たらとんでもない事だっただろう。アメリア王国どころか周辺の国、いや世界が危ない」
 
 王子の言葉に俺は納得した。
 ……あぁ、そうだよな。
 もし女媧が群れで攻めて来ていたとしたら、さすがに勝てたかどうか分からねぇな。
 俺は死なないにしてもどれだけの犠牲が出ていたか……。
 下手したら街の住民全てが魔族にされちまっていたかもしれん。
 全員守りながら女媧を全滅なんてのは所謂無理ゲーだ。

 ん? いや待て、過去に死体を見たと言うのに今回の奴も同じって矛盾していないか?
 なんで王子は『同じ奴』と言ったのか?
 
「今『同じ奴』と言いましたか? 同じ種族じゃなく? 何故そう言えるんですか?」

「あぁ、あの魔族については、先程ガーランドが言った伝説に出てくるのだよ。古くから王国のほんの一部の者のみで語られていた建国の伝説にね。王国の西に何が有ったかショウタは覚えているかい? 」

 ん? 王国の西? 何が有ったっけ?
 確かそこには誰も人も魔物さえも住んでいない荒野と、更にその先には海しかなかった筈だ。
 王都の城壁に登った際に遠目に見た事があったが、特に目立つようなものは無かったんだがなぁ?
 ギルドの仕事でも魔物も特に出ない西の方の依頼なんて見た事も聞いた事もない。

「いや~、王子。すみません覚えてないです。何も無い荒野でしたし、近寄る事もなかったですね。ギルドの仕事でも縁が無かったなぁ」

「そりゃあ、そうだよ。何も無いからね」

 王子の言葉に俺は盛大にズッコけた。
 またからかわれたのか~。
 どうも二人共、俺の事を昔と同じ様な扱いをされている気がするな。
 俺もうアラフォーなおっさんなんだけど。
 
「王子~。何この流れで冗談言ってるんですか~」

「……と言う事になっている」

「は? なっている?」

「あぁ、西に有る荒野はね、はるか昔、王国建国前は緑豊かな草原が広がっていたのだ」

 へぇ~。そうなんだ~。
 いや、昔の事を言われても、それ以上の感想は出ねぇな。
 昔が緑溢れる大地だったなんて事は、元の世界でも砂漠化問題が幾度もTVで取り沙汰されるくらい、何の変哲も無い普通の知識だった。
 改めて言う程不思議な事でもないだろう。

「私が王国から身を隠す前頃には草原になっていた。メイガスの話では現在では村も出来て、結構な規模の穀倉地帯になっているそうだよ」

「なっ! なんだそれ? 荒野が穀倉地帯って? 大規模な魔法による開拓でも行ったんですか?」

 緑化の魔法はある事はあるが、今の俺でさえあの荒野の面積全部を草木が生える土壌にするだけでも、休み無しで半年以上の仕事になるぞ?
 王子が身を隠したのはダイスの話では十七年前くらいだったか?
 たった三年で草原にまで回復するって、魔術師をどれほど雇えば実現するんだよ。
 それに、荒野を開拓するなんて大事業は民の為にとっては良い事だろうが、王子が言うには民を混乱させる政策を連発していたとかじゃなかったのか?

「開拓ではない。君が王国から去る少し前頃から勝手に生えてきたのだ」

「いや、それは有り得ないでしょう? 何もしていないのに……。俺の去る前頃から? あっ! もしかして?」

「そう。あの荒野は建国者のめいによって誰も近寄る事が無いようにと秘密裏に禁足地とされて、何も無い、行く価値さえない土地とされていたのだよ」

「そしてそこには、あの魔族が住んでいた?」

 俺が王国から逃げ出す少し前と言う事は、幾つかの村が魔物に襲われたと言う情報が入って来た頃と言う事だろう。
 そして、その裏には女媧が暗躍していたんだ。
 その荒野から出てきたから、草木が生え出したと言う事か?

「正確には違う。荒野の中心に封印されていたのだよ」

「封印? 誰が封印したんですか?」

「勿論建国者の手によってだ。伝説では建国者は神の力を借りて、あの土地に魔族を封印した、と伝わっている。元々はその上に城を築いて出て来れないようにしようとしたらしいが、魔族の呪いによって急速に荒野が広がって行ったので、仕方無く少し東に行った現在の位置に王都を建国したそうだよ」

 なるほど、だから禁足地として誰も近付かないように、何も無い土地としてしていた。
 そして王都を少し離れた位置に築き、いつでも監視出来るようにしていたのか。

「伝説によると元々アメリア王国の土地には、別の国が存在していた。しかし、その魔族によって滅ぼされてしまったらしい。そこで建国者は仲間と共に立ち上がり、神の力を借りて挑んだが倒し切れなかった。だからあの土地に封印したのだよ」

「別の国が有って、それを滅ぼした? いや、王子? あの魔族はそりゃ恐ろしい敵では有りましたが、あいつ一匹で国を滅ぼす様な程の力が有るとは思えませんが?」

 魔物化による洗脳や土魔法は、脅威と言えば脅威だが一国が滅ぶほど程か? と言えば疑問が出るな。
 いきなり王都を襲撃されたとかなら可能性も有るが……。
 そもそも神の奴は、滅多に人間に関わろうとしない様に設定してると言っていた。
 これじゃあ、がっつり関わっているじゃないか。

「あの魔族はな、伝説によると転生する者と呼ばれているのだ。倒してもまた現われる。そして現われる際には手に光る玉を持った人の姿で現われ、まず人の営みに溶け込み周囲の人間を欺く。やがて機が来ると正体を現して周囲の人々を自らの眷属に変えて去っていく。無人となった街を残して……な」

「なっ、転生する? それに光る玉って……」

「あぁ、正直その伝説は御伽噺だと思っていた。良くある建国の正当性と権威付けの為の作り話だとな。なにせ神の敵と神と共に戦って封印したなんて物語、たとえ荒野が実際に有るにしても、荒野の横に王都を作ってしまった失敗の言い訳だったのだろうと建国から五百年経った、今では誰も本当だとは思っていなかったのだよ。だから当初まさか女占い師がその魔族だなんて気付かなかった。私でさえね」

「なぜ封印が解けたんですか? 期限切れとか?」

「いや、そうじゃない。魔族の封印はある人物によって解かれたんだよ。後になって分かった事だが……」

 ある人物? 誰だそんなバカの事をしたのは?
 知ってか知らずか分からんがとんでもない事をやりやがって。

「誰なんですか? そいつは」

「私の弟だよ」

「なっ! あ、あの馬鹿? あ、いや王族に向かってすみません」

「いや、良い。あいつは実際馬鹿で愚かな奴だった。伝説には魔族が封印される前に建国者に対して予言とも取れる呪いの言葉を残していたのだよ。『いずれお前の子孫が、この忌々しい神の封印を解き我を解放するだろう。その時こそお前にこの屈辱の復讐を果たす』とね。愚弟は自分の馬鹿さ加減を顧みず、父や重臣達に冷遇される王国に対しての復讐か、いやただ単に何も考えていない癇癪のような物かもしれないが、宝物庫から封印に使われたと言われていた国宝を持ち出して封印を解いてしまったようだ」

 なっ、なんだって? あの馬鹿の所為だったのか?
 確かに王子やメアリと本当に血が繋がっているのか? と言う程、顔も不細工で性格も王族の資質に欠けた、いやある意味性悪貴族のテンプレの様に貴族以外の者を虫けらの様に扱う最低野郎だった。
 しかし、女媧はてっきり、俺目当てにやって来たのだと思っていたが、元々王国に恨みを持っていたって事か?
 
「そして村が襲われ、騎士団が襲われた。被害の状況を時系列に追っていくと、ある場所に辿り着く」

「その場所って?」

「勿論、俺達が魔族の死体を見付けたあの場所だ。その時は俺も伝説なんて知らなかったからな。取りあえず調査結果をヴァレウスの使者に伝えたんだよ」

「死体が有ったって、誰が魔族を倒したんですか? 先輩達じゃないんでしょ?」

 俺の知っている人達の中で、当時あいつを倒せるのは多くないと思う。
 それに倒したなら手柄の為に、死体を放置すると言う事も無いだろう。
 少なくともどこかの部位を持ち帰って報酬を貰おうとする筈だ。
 さすがに光の玉を森から持ち帰ったと言う女が倒せるとは思えないし、女媧はなんで死んでいたんだ?

「それは分からねぇ。何せ外傷が一切無かったんだ。不思議な事に腐敗はせずミイラの様になっていたが、まるでそのまま眠っているか様に死んでいた」

「五百年に渡る封印によって、その身体の寿命が尽きかけていたのかもしれない。そこでまず転生しようとしたのだろうな。襲われた村々や君を含めた騎士団達は不幸にも死に場所を探す為の移動の最中に遭遇してしまったと言う事じゃないかな」

 そんな……、あの事件は偶然だったと言うのか?
 てっきり俺をどん底に落とす為に、神達が面白がって起こしたイベントだと思っていたんだが?
 五百年前からの因縁だったなんて、さすがに仕込みが凝り過ぎだろう。
 
「調査結果を聞いた私は、伝説の事を思い出し、すぐに調査を開始した。しかし蟄居を命ぜられた身なので、表立って動けなくてね。王城内での事だ。冒険者のガーランドや騎士を引退したメイガスに頼む事も出来ず、何とか信頼出来るお付の者や、メイガスを尊敬していた騎士団の者に頼んで少しづつ行った為、とても時間が掛かった。しかし、ついに愚弟が宝物庫から国宝を持ち出し荒野に入った事を突き止めたのだよ。そして私は証拠の数々を持って、すぐさま王座の間に赴き、愚弟の犯した罪と女占い師の正体を告発した」

「そ、それでどうなったんですか?」

 俺の問いに王子は疲れた笑顔を見せた。
 まるで失敗した自分を自嘲するかのようなその笑顔。
 一体何が有ったんだ?

「私が王や王座の間に居並ぶ重臣の前で、愚弟の犯した罪と女占い師の正体を告発した途端、王座の間には一斉に乾いた笑い声が響き渡った。何事かと周りを見渡すと、そこには生気の無い目をした王や重臣たちが居た。そう、遅かったのだよ。その時は既に皆魔族の僕となり果てていたのだ」

「そ、そんな……」

「そして数日後、父は突然亡くなった。その後は先程言った通り、魔族は全ての罪を私に被せて、北の監獄に幽閉される事になった。王族を王都で処刑と言うのはさすがに前代未聞だ。自分で言うのもなんだが私は民に慕われていたからね。蟄居自体の噂も民の間に広まっていた。だから民の前で処刑するより、護送途中の不慮の事故と言う形が良かったのだろうね」

「そこで俺達がヴァレウスを助けて匿ったのさ。勿論護送兵達は俺の幻術でヴァレウスを葬ったと思い込んでいるがな」

 なるほど、そして王子は生き延びてここに居るのか。
 記録に残っていないのもそう言う理由か。
 あれ? でも女媧は占い師としてやって来たんだろ? ならそんな事をお見通しじゃないのか?

「王子? 占い師で何でも言い当てるって事でしたよね? その魔族は。なら、死を偽装してもすぐにバレるんじゃないですか?」

「それがね、私が逃げ延びて暫く経っても、私が生きている事は公表も捜索もされなかった。だから占いは実はインチキだったのだと安心していた。しかしそうじゃなかったのだよ。王都から離れ辺境の町で魔族から国を奪還する機会をガーランドと伺っていたのだが、ある日私達の前に奴が姿を現した」

「なっ! バレていたって事ですか? じゃあ何故?」

「フフフッ。そうだよ。奴は全てお見通しだったのだよ。そして奴はこう言った。『私の望みはお前達をただ殺す事じゃない。私は復讐の為、憎きお前の先祖が作り上げたこの国を徹底的に壊してやる事が本当の望み。お前の愚かな弟とお前が争い、そして国を自らの手で崩壊させていく、それが見たいのさ』とね」

 そ、そんな……。わざと王子を逃がしたって言うのか? 王子が力を蓄え、兵を起こし弟と戦争をする所が見たい為に?

「千載一遇のチャンスとばかりに、二人でが奴に襲い掛かったが土魔法で阻まれちまった。そして奴は笑いながらこう言って姿を消したんだよ。『私を倒したくば、我が敵、神が私を封印した時に言い残した使徒を連れて来るんだな。フフフッ、しかし、その者は既にこの国には居ない。お前達自身が追い出したのだ』とな」

「な、それって……。それに先輩も奴と会っていたんですか?」

「あぁ、と言ってもまだその時は人間の姿だったけどよ。そして、奴が残した『使徒』と言うその言葉にピンと来たんだ。もしかしたら、それはお前だったんじゃないかとな」

「ずっと俺を探していたって事ですか? じゃあ、なんで俺を見付けた後、その事を何も言ってこなかったんですか?」

 あの時、俺に気付いた先輩は、そんな事は何も言わずに俺を匿い、そして今日までぐうたらと暮らしている俺を咎める事もせず、教導役として雇ってくれていた。
 探していたのなら何故?

「伝説には、魔族の復活の予言を聞いた神が、建国者に一つの希望を与えたとある。『魔族が復活を果たし、汝に災いが降りかかりし時、我の使徒たる御子を使わし、その魔族を撃ち滅ぼす』とね。またその『使徒』に関する一節には『類稀なる力と何者をも比肩しない魔力を持ち、理を越えて全ての魔法を使いし者』と有ったので、正直言うと、悪いのだが、ほら、当時のお前ではあまりにもその……神の言葉から掛け離れていたので自信が無かったのだよ」

 あぁ……、なるほど。
 確かに当時の俺はそこそこ強い程度の剣士で、魔法なんか使えもしなかった。
 それを追い出したからって、使徒と俺を結びつけるなんて事は、中々しないよな普通は。
 けど、さっき自信満々風に俺達の目は確かだったとか言ってたじゃないか……。
 しかし、『使徒』の説明はアレだな。神ノリノリだよな。
 やっぱり、俺の事五百年前から仕込んでいたんだ。この暇人共め。

「けど、ならなんで俺の今の力を知ってたのに何も言ってこなかったんですか? 今日確信したとか言っていましたが、もっと前から知っていたんでしょう?」

「王国は既に滅んでしまった後だったからさ」

「あっ……そうか。十年前に国が滅び今じゃ南方の国の一部となってるって……」

「当時私は潜伏して、『使徒』の捜索や兵を挙げる為の準備を行っていた。しかし、魔族の言葉で私が弟に対して兵を挙げる事こそ奴の本当の望みであると言う事に躊躇してしまっていたのだよ。だから対応が遅れてしまった。その間も国はどんどん荒れて行き、そして弟はとうとう一線を越えた。自分の国を越えて他の国にまで馬鹿な我儘を通すそうとして、あろう事か南方の国の姫を攫うと言う暴挙に出た」

 それが切っ掛けで戦争が起こり王国は滅ぶ事になったとダイスは言っていたな。
 そうか、魔族自身が滅ぼしたのではなく、王国内部の人間を操り、自滅させる様に暗躍していたと言う事か。
 あの魔族にそんな知恵が有ったとはな。
 もしかすると、あの蛇みたいな姿になったら知能が低下でもするのかね。

「私は準備していた兵を挙げようとしたが止めた」

「え? なんで? それこそ機は熟したと言う奴じゃないですか」

「私には資格が無かったのだよ。何年にも渡り愚弟の暴政に苦しんでいた民を無視していた私にはね。他国が攻めて来た混乱に乗じて出て来たなど、先祖に顔向け出来ない恥知らずだ」

「そ、そんな……。けど」

「とは言え、準備自体は行っていたからね。全てをメイガスに託して私は国を去る事にしたのだ」

「メイガスに? なぜ?」

「彼は、表に出れない私と違い、長年暴政に苦しむ民達を陰になり日向になり献身的に助けていたのだよ。そして民達はメイガスの事をとても慕っていた。死んだ事になっていた私が出るよりも、彼の方が余程資格が有った。そして彼は南方の軍に協力して王国を打ち破り、王都を奪還した。勿論民達が血を流さない様に心がけながらね。そして彼は助け出した姫と恋に落ち、やがて結婚したのだよ。今では元王国の有った土地の領主として、王都にて善政を行っているようだ」

 メイガスが王都に居るって、そう言う事だったのか!
 なるほど、会いたいけど会えないと言うのは領主になった為なのか。
 会って話がしたいな。謝罪と感謝の言葉。いや、俺なんかに今更会ってくれないかな?
 何せ、今じゃ王族の仲間入りだもんな。

「メイガスは最初自分が領主になるなんて嫌がったけどな。ヴァレウスに譲ろうとしたんだ。しかしヴァレウスは固辞して国を去った。俺はメイガスに頼まれてヴァレウスのお付きとして俺の故郷であるこの国にやって来たんだよ」

「そうだったのか。だから先輩はこの国に居た……、あっ! 魔族はどうなったんだ? メイガスが倒したのか?」

 そうだ、魔族の行方はどうなったんだ?
 王国は奴の望み通り滅んだが、王子は生きている。
 もしかして、この街にやって来たのも俺目当てじゃなく、恨んでいる建国者の血筋の者を追って来たって言うのか?

「魔族に関しては、愚弟が一線を越える少し前に姿を消したらしい。一応愚弟をコントロールしていたようで居なくなってから、より一層暴政を振るう様になったと聞いている」

「あぁ、あれは確か王国より少し離れた東国の森が、突如激しい爆発と共に消えたなんて言う大事件が起こった後だったな。あれは俺も現場を見に行ったが酷い有様だった。人里離れた場所で良かったぜ。噂では魔竜が現れただとか、古代魔法の実験が行われたとか、中には魔族が現れたとかも有ってな。それで俺は見に行ったんだよ」

 それって俺が起こした『大消失』の事だよな。
 その後、女媧は王国から姿を消した。
 そうか、やはりそれでスイッチが入ったんで、神のプログラムに従い自分の復讐から離れ俺を追い出したのか。
 やっぱり、この街に来たのは俺の所為だったんだな。

「ん? どうしたショウタ?」

「い、いや、何でもない……」
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