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4-3 理外回帰編:始まりの街・レイメイへ

212 罠が楽しいとはこれいかに

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 ゴロゴロと通路の横幅めいいっぱいで天井まで届く高さの石の玉が転がる罠。

 大きな鎌がブランっと横から何本も出てくる罠。

 部屋に入ってきたモノを感知すると扉が勝手にしまって魔物モンスターが大量発生する罠。

 同じように扉が閉まって毒ガスで満たされる罠。

 最後の罠は危険だったから魔物モンスターを放り込んで、気配が無くなったら扉が空いた。ということは『生体反応』や『魔素反応』が無くなったらドアが開くように出来ているのだろうか。
 投げ込んだ時の魔物モンスター君の顔は忘れれそうにもない。アンに羽交い絞めにされ、投げられ、扉が閉められ……、魔石になってた。

「すごく楽しいです。特に鎌が来るのが、もう」

 目をキラキラさせながら言うことは……エグイ。
 ぱらぱらと地面にころがっている魔石を拾いながら、その姿を見る。うーん、ドS。

「……何回も作動させて遊んでたもんね」

「切っ先に毒が塗ってあったのですが、わたしに毒は効かないので問題ありませんし」

「へー……。えっ!?」

 気が付かなかった。
 アンが出てくる鎌を壊したり避けたりして遊んでるなぁとしか思ってなかったけど……。

「僕、毒耐性はあまり高くないから……今度からは毒とかあったら言ってね」

「あっ、す、すみません……」

「伝えてなかった僕も悪いから」

 アンと遊びながら一層目を縦横無尽に走り回ったおかげでスキルを習得できて、罠感知がⅧまで上がった。あとはこれを繰り返していたら『魔素感知』みたいに10を超えるだろう。

(上がるのが早い気がするでしょう? 僕も驚いてる)

 それでもエリル的には驚くようなことでもないらしく「他のスキルの使い方を掻い摘んで発動している訳だから、やり方さえ分かればすぐ」らしい。
 野球部がほかのスポーツも上手いのと同じ感じだとおもう。

 と、こんな感じでスキルの報告をしていると……

「お、ここの階段から下に行けるみたい」

 同じような階段が下へと続いているのが見えた。
 うーむ、この感じを何で例えよう。古びた実家に帰って、夜中に二階の寝室から一階のトイレへ向かう時の薄暗い階段……と例えようか。
 我ながら的確じゃないか? 僕の実家は、二階にもトイレはあったけど。

「行きましょう」

「慎重にね」

 階段を降りていくと同じような遺跡のような空間が広がっていた。
 マップを確認してみると……。はいはい、広いし、部屋が多いわけね。

「とりあえず、『罠感知』っと」

 自分の立ち位置からブォンっと認識の範囲が広がっていく感覚で、罠の位置がわかりやすいように視覚情報として入ってくる。
 何も無い空間が白。そこに異物があれば黒く染色されて見える。
 『魔素感知』と同じ要領でできるから便利。ただ、この視覚情報に慣れるまで時間がかかりそうだ。

「アンー。とりあえずは……近くには罠はなさそう――ん、魔素の反応が……?」

「魔物ですね、その曲がり角に……」

 カタカタ!
 暗闇から奇妙な音。すると、ひょっこりと骸骨が顔を覗かせた。

「「うわあ!?」」

 二人で体を寄せ、身を縮めた。
 その姿は理科室によくあるやつ。人骨。僕らよりも顔が二つ程大きい。

「……スケルトン、か。初めて見た……。本当に骨が動いてるんだ……」

「あ、あれも魔物モンスターですか?」

不死者アンデット系のね。不気味なのが多いらしい……けど」

 軽い音を立ててゆっくりと近づいてくるその姿はお化け屋敷さながら。
 
「不気味どころじゃないな、これ、なんだ、怖すぎる」

「ど、どうしますか?」

「どうするって、倒すしか……」

 襲いかかろうとしてきたのを二人で横に躱す。
 カラコロと音を立てながら何度も掴んでこようとするから、バランスを崩したら骨が崩れるみたいなのもないのか……?
 ってことは、魔素で形を保ってるとか……? 支えになるのってそれくらいしかないよな……。 

「えーっと、確か、そうだ。肋骨辺りにある魔石を壊せば倒せれるって聞いたこと気が」

「魔石……あ、ほんとだ。それなら……」

 アンが若干怯えながら、拳殻を付けてない拳を突き出して真っ直ぐ衝撃波を飛ばした。
 ゴオオッという音と共に、迫ってきていたスケルトンがバラバラになって魔石へと姿を変えた。

「この階層から、こういうのが増えていくのか……」
 
 強さはどうってことない。ただ、お化け屋敷にいる気分だ。
 限られた光源、不気味な空間。『罠感知』をナイトビジョンのような色合いにしなくてよかったと心底思った。

「きもちわるいです。相手にしたくありません」

 お、アンでも怖いものってあるんだ。

「……なんですか? にやにやして」 

「ん? いや、アンでも苦手とかあるんだな~って思って」 

「……あるじはわたしをなんだと思ってるのですか……?」

「すごいひと」

「むぅ、そんなのお互い様じゃないですか」

「僕が……? どういうところが?」

 目をぱちくり。僕がすごいひとだって言われたことなんてない。

「自覚をしてないのなら、内緒にしておきます」

「えぇ~」

 その後もアンが話してくれることもなく、マップを見て最短ルートを探し、急ぎ早で攻略を進めた。
 
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