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4-3 理外回帰編:始まりの街・レイメイへ
210 大真面目なクソガキ
しおりを挟む出てくる見覚えのある魔物を倒して出てくる魔石をひょいひょいと拾い上げて収納袋へとしまっていった。
まだ入って少ししかたってないと言うのに、ダンジョンに大歓迎をされている。
そして魔物の出が悪くなったので、進む前に紙束を取り出した。
「じゃーん! ダンジョンのマップ! 貸してもらったんだー」
「わあ! 1、2、……4枚ですか?」
「5階層目のボス部屋を除いて階層ごとに道が書かれてるんだってさ。これで安心して進める」
ダンジョンは魔王が造ったモノって聞いたことがある。罠の位置や魔物時間とともにランダムみたいだけど、通る道はそこまで大きく変わらないのだと。
罠に関しては部屋自体が罠になっていることもあって……毒ガスが出てくる部屋とか、閉じ込められる部屋とか……本当に下位ダンジョンなのかって話だ。これは部屋に入らなければ済む話だけど、通り道にある罠に関しては気を付けなければ。
「罠を見つけれるようなスキルを持ってたら、もっと安心だったけど」
「……? 走れば大丈夫ですよ!」
「うーん……最適解のような、不正解のような……」
あの速度で走れば問題はないような気がするけど、せっかく初めてのダンジョンなのだから少し落ち着いて見て回りたいと言うのがある。こういう遺跡探索とか、未知の場所とか、わくわく――
(って、緊張感無さすぎるな。最近頭がこの世界に順応し過ぎて怖くなってくる)
考え直すために頭をふるふると振り、深呼吸。
こういう困った時には、頼りになる先生に相談することにしよう。
(エリル先生、エリル先生)
(……お。最近手助けしなくても良くなったますたーじゃないですか、なんですか?)
あ、怒ってる。
(えーと、罠感知って今持ってるスキルとかで代用できないかなーって思って。物には魔素が通ってるからユニークの魔素理解でなんとかできたりしないですか?)
(ふーん)
(もーごめんってエリル。僕はまだ弱いから助けが必要なんです、頼らせてください)
(今度、私とお出かけする時間の確保を約束したら、いいですよ?)
(はい、わかりました。エリルとお出かけをします。行きたいって言ってた竹林とか、おススメのお菓子屋さん案内させてもらいます)
(!! ……はぁ~~、ますたーは仕方がないお人ですね~! できますよー! まっかせてください!!)
一気に声色が変わった……。
(ごめんね。まだまだひよっこだから、これからも手を煩わせるかもしれない)
(そんなの気にしなくてもいいんですよ! じゃんじゃんどしどし頼ってください!)
言われてみると最近は二人で何かするっていうことの機会が前よりも確かに減っていた。
相変わらず魔導書を一緒に読んで、料理を作るときに話をしたり、僕のより効率のいい掃除の仕方を教えてもらっていたりとはしてたけど、散歩をしたり、暇なときに他愛のない話をしたりはしてなかったな。
(えーと、欲しいスキルは罠感知でしたね。そんなスキル、簡単にゲットできますよ!)
(あら、そうなの?)
(えぇ、まぁ! ちょちょいのちょいって具合に簡単です。魔素理解もレベル表記はされてないにしても、かなり上がってきてますし、他のユニークスキルのレベルも上がってきてるから色んなことができるのですよ!)
(やっぱりユニークスキルにもレベルがあるんだ……)
ステータスボードには、事細やかなレベルは書かれていなかったからないと思っていた。
それもそうか。スキルやステータスにはあって、あれだけないって言うのが不思議だものな。
(ということは、そのうちユニークスキルも一緒になったり、名前が変わったりするの?)
(もっちろんです、楽しみにしておいてくださいね! では、ちょっと罠感知の仕組みを調べるので……しばしお待ちを……)
ユニークスキルも進化するってことは、まだまだ伸ばせるところは多いってことか。
(っと……はい、えーとですね。罠感知なら……。そうですね、罠に一度引っかかってください!)
(……えーーーっと……うん。わかったよ)
つっこまずに言うことを聞こう。
アンに少し待機してもらって、さっきアンが踏んで行った場所までいって床を踏んだ。
カチッ。
半歩前の天井から槍が落ちてきてガキンッと地面に突き刺さる。
「ウッ……」
そしてゆっくりと戻っていく。どういう仕組みよ、コレ。
(……これでなにか分かったの?)
(感圧板のこと、天井の仕組みを一度見たので同じような仕組みには引っかからないようになります! 最後に地面に手を当ててみてください!)
言われた通りに床に手を当ててみると、行く手にもやもやと罠と思われる異物の反応があった。
(……床や壁の魔素と、隠れている異物の魔素の微妙な違いを分かるようにする……ってこと?)
(だいたいそんなかんじです! 罠感知の正当な覚え方ではありませんが、これが手っ取り早いので)
手を離すと感じられなくなる……では手でなくて足だったら? 靴があるから手ほどの鮮明さはないのか。
ということなら、といつものように目の前に空っぽの魔法陣を展開した。
「視覚情報を残して共有、これは鑑定のようなものでいいな。異物の魔素の理解度を高めるためには何回か引っかからないといけないかもな……」
「あるじ?」
「ちょっと待っててね、もう少しで出来そうなんだ」
「……?」
スキルを自分の体が勝手に習得するのを待つより、魔法を作る作業でスキルを強引に会得すれば何十倍も早い。
視覚化、そこを着色して分かりやすくすることも出来なくもないか? 靴を脱ぐわけにもいかないけど、手で触るくらいなら歩く度に情報が更新されるのがいいよな。だったらぼんやりしたのでも分かるように回数を重ねて……。
階層ごとに床と壁の作りが異なる場合も自動で分かるよう――いや、広く広がる空間の魔素を白と認識してそこに他の色の異物の魔素を感じるようにすれば……。
…………情報が足りない。
「……アン、さっき言ってたことをやろう」
「さっき言っていたこと……?」
そういうと、あ! と気づいた様子。
「うん、罠の反応をもう少し見る必要があるんだ。この階層を走り回ろう!」
「はいっ!」
傍から見れば気が狂った二人組に見えるだろう。
ダンジョン内を走り回る冒険者なんて、僕達くらいしかいないんじゃないかと思う。
(残念なことに、大真面目だ)
二人で『身体強化』を使ってダンジョン内を走り回っていった。
応援ありがとうございます!
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