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尽きぬ羨望
4 エルフの書 1
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フレトールとキールが唇を離した時にはお互いの息も上がって身体が熱い……
「な……に…今の……」
初めての刺激と濃厚なフレトールの香りにすっかりと身体の力も抜け切ってグッタリとしているのはフレトールの腕の中にいるキールだ。
「…キスを知らない?」
まさか、という思いしかないフレトール。
「知らない……あんなの、した事ないし…」
自分の身体の反応に気付いたキールは素早くフレトールのマントで身を包んで丸まってしまう。輝く様な白い肌は先程の名残を色濃く残して色付いていて…そっと触れると酷く熱い…
「エルフは…どうの様にして番うのだ?」
戯れに近いキスだってあるだろうに、キールはそれすらもした事がないと?
「知らないよ!俺に番は居ないって言っただろ?皆んな番う時に教えてもらってたんだから。」
番う時には男女で子供を成す為で、そのための方法をお祝いの代わりに教えてもらうのだ。そしてキールには番いはいないし、エルフ間の中では同性の番の事は聞いた事はなかった。
「エルフに性欲は無いのか…?」
キールに無体を強いたのはフレトールの方なのだが、真っ赤になって恥ずかしそうに丸まってしまったキールが余りにもそちらの面で奥手であって、やり過ぎたかと頭を抱えたくなる。
「それは、番う相手に捧げるものだろう?」
誰彼構わずそんな欲を出していたら動物にも劣る存在になる。森の王とも呼ばれるエルフ達はそんな無作法はしないのだ。
「なるほど。では覚えていて欲しいキール。」
フレトールの膝の上で丸まってしまったキールの耳元に低く優しくフレトールの声が響く。
「人は番では無くても、思いを捧げる者に一番強く欲が動く。俺はキールに心を捧げると言っただろう?心だけでは無くて、この身も全てキールの物だし、キールの全ても俺は欲しい………」
熱い……キールの耳に届く、フレトールの熱い呼気…少し震えた声が、グッと何かを堪えている様で、聞いているだけで何故だか身体の力が抜けそうになる。
「じゃ、じゃあ…さっきの、キスも、俺が欲しいから…?」
「そう……そう思ってくれていい。キール……」
もう一度、フレトールはキールに触れる。今度は優しく宥める様に…
「男同士で番ったって…子はできないのに…?」
「キール…以前にも話しただろう?これは愛情表現だ。ただ、子供が欲しいだけなら、健康な女を抱けばいい。が今俺が欲しいのは、女でも無く、子供でも無い。」
「……それじゃ…お前の子孫が残らない…」
これだけフレトールが熱烈に口説いていても、キールは頬を赤くしてフレトールの言葉に反応していても、素直にフレトールの愛情を受け取ろうとはしない。
「キール。人は理にのみ縛られて生きているわけじゃない。子孫を残す事は重要だがそれは俺で無くてもいい。俺が何を無くしても、譲れないものがキールだ。キールはどうだ?子孫を残す為に女と番いたいか?」
「…女と…?」
女のエルフはもういない…世界中どこを探しても…ならば、人間の女と番う?エルフの子孫を残すためだけに?
ホクホク、ホカホカしていたキールの心がスーッと覚めていくのがわかる。フレトールの腕の中は暖かくて、心地がいいのだ。この熱を他の者に求めたいかと聞かれたら…それが人間というだけでキールの心の熱が一気に冷めて行くのが分かった。
最初の頃の様に人間に対して持っていた嫌悪と警戒心の凝り固まったものが、迫り上がって来る様にキールの心を占領して行く。
「絶対に無理だ……」
はっきりと言い切ったキールの顔が青い。
「ふふ…では、俺とは?俺と触れ合うのは?」
「無理じゃ……ない……」
「そう!そういう事だ、キール。嫌ではない事が全ての答えだと俺は思いたいんだ。」
優しくキールを抱きしめているフレトールの腕にグッと力が入る。
「何で…フレトールは俺が欲しい?」
「キールは恋愛を知らないと言ったな?」
「う…うん…?」
「俺の言った心を捧げるとは、愛情を含んだものだ。エルフの言葉を借りるなら………キールと番たいとも思っている……キールが愛する事を知らないならば、俺が一から教えよう。俺が望むのは子孫繁栄じゃない。俺の心にある人と共に生きる事だ。」
「俺と…フレトールは生きたいのか……?」
「出来る事なら今は心から、それを望んでいる…」
微風そよぐ緑の中で、人間のフレトールがエルフと共に生きたいとそんな事を言ってくる。フレトールの緑の瞳が木々の中ではいつもよりも色濃く光る。その瞳はいつも真剣でキールに偽りを話している様には決して見えなかった。
「な……に…今の……」
初めての刺激と濃厚なフレトールの香りにすっかりと身体の力も抜け切ってグッタリとしているのはフレトールの腕の中にいるキールだ。
「…キスを知らない?」
まさか、という思いしかないフレトール。
「知らない……あんなの、した事ないし…」
自分の身体の反応に気付いたキールは素早くフレトールのマントで身を包んで丸まってしまう。輝く様な白い肌は先程の名残を色濃く残して色付いていて…そっと触れると酷く熱い…
「エルフは…どうの様にして番うのだ?」
戯れに近いキスだってあるだろうに、キールはそれすらもした事がないと?
「知らないよ!俺に番は居ないって言っただろ?皆んな番う時に教えてもらってたんだから。」
番う時には男女で子供を成す為で、そのための方法をお祝いの代わりに教えてもらうのだ。そしてキールには番いはいないし、エルフ間の中では同性の番の事は聞いた事はなかった。
「エルフに性欲は無いのか…?」
キールに無体を強いたのはフレトールの方なのだが、真っ赤になって恥ずかしそうに丸まってしまったキールが余りにもそちらの面で奥手であって、やり過ぎたかと頭を抱えたくなる。
「それは、番う相手に捧げるものだろう?」
誰彼構わずそんな欲を出していたら動物にも劣る存在になる。森の王とも呼ばれるエルフ達はそんな無作法はしないのだ。
「なるほど。では覚えていて欲しいキール。」
フレトールの膝の上で丸まってしまったキールの耳元に低く優しくフレトールの声が響く。
「人は番では無くても、思いを捧げる者に一番強く欲が動く。俺はキールに心を捧げると言っただろう?心だけでは無くて、この身も全てキールの物だし、キールの全ても俺は欲しい………」
熱い……キールの耳に届く、フレトールの熱い呼気…少し震えた声が、グッと何かを堪えている様で、聞いているだけで何故だか身体の力が抜けそうになる。
「じゃ、じゃあ…さっきの、キスも、俺が欲しいから…?」
「そう……そう思ってくれていい。キール……」
もう一度、フレトールはキールに触れる。今度は優しく宥める様に…
「男同士で番ったって…子はできないのに…?」
「キール…以前にも話しただろう?これは愛情表現だ。ただ、子供が欲しいだけなら、健康な女を抱けばいい。が今俺が欲しいのは、女でも無く、子供でも無い。」
「……それじゃ…お前の子孫が残らない…」
これだけフレトールが熱烈に口説いていても、キールは頬を赤くしてフレトールの言葉に反応していても、素直にフレトールの愛情を受け取ろうとはしない。
「キール。人は理にのみ縛られて生きているわけじゃない。子孫を残す事は重要だがそれは俺で無くてもいい。俺が何を無くしても、譲れないものがキールだ。キールはどうだ?子孫を残す為に女と番いたいか?」
「…女と…?」
女のエルフはもういない…世界中どこを探しても…ならば、人間の女と番う?エルフの子孫を残すためだけに?
ホクホク、ホカホカしていたキールの心がスーッと覚めていくのがわかる。フレトールの腕の中は暖かくて、心地がいいのだ。この熱を他の者に求めたいかと聞かれたら…それが人間というだけでキールの心の熱が一気に冷めて行くのが分かった。
最初の頃の様に人間に対して持っていた嫌悪と警戒心の凝り固まったものが、迫り上がって来る様にキールの心を占領して行く。
「絶対に無理だ……」
はっきりと言い切ったキールの顔が青い。
「ふふ…では、俺とは?俺と触れ合うのは?」
「無理じゃ……ない……」
「そう!そういう事だ、キール。嫌ではない事が全ての答えだと俺は思いたいんだ。」
優しくキールを抱きしめているフレトールの腕にグッと力が入る。
「何で…フレトールは俺が欲しい?」
「キールは恋愛を知らないと言ったな?」
「う…うん…?」
「俺の言った心を捧げるとは、愛情を含んだものだ。エルフの言葉を借りるなら………キールと番たいとも思っている……キールが愛する事を知らないならば、俺が一から教えよう。俺が望むのは子孫繁栄じゃない。俺の心にある人と共に生きる事だ。」
「俺と…フレトールは生きたいのか……?」
「出来る事なら今は心から、それを望んでいる…」
微風そよぐ緑の中で、人間のフレトールがエルフと共に生きたいとそんな事を言ってくる。フレトールの緑の瞳が木々の中ではいつもよりも色濃く光る。その瞳はいつも真剣でキールに偽りを話している様には決して見えなかった。
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