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人との関わり
7 考古学者カーン
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考古学者と名乗ったカーンは変な人間だ。最初に会った時は別にして、何やらずっと紙面に向かって書き込んでいる。
エルフの仲間にも物知りや探究心旺盛な者はいた。というか、皆んなが長寿なのだから自分からそう求めなくても物知りくらいにはなるだろうが。その中でも群を抜いて知識を蓄えている仲間もいた。しかしエルフは皆に分け与えるのだ。知り得た知識や技術を自分の知識を深めるだけに留めてはおかない。皆と共有し、分かち合い、理解し合う。何でも話し合い解決していくのだ。だからエルフは歳若いうちから自分の事は何でも自分で出来るようになる。家を作ることも、服を作ることも、狩も、料理も自分達の産まれから死ぬその時まで全てを皆で共有してきたのだから。
だからキールは目の前のカーンのやり方に非常に違和感を感じるというか、理解不能というか、キールの行き着いた答えは人間は変だ、だった。
カーンのキール達エルフの事を知りたいと言っていた言葉の通り、カーンはキールの話す事一つも漏らすまいと真剣に聞いている、ここまでは良い。好きな食べ物や、嫌いな物、好きな事などを聞くのも良いのだろう。
「お名前をお聞きしても?」
少し人間について考え込んでいたキールはカーンに何度かそう聞かれて、やっと名前を名乗った。
「キール…」
「キール殿ですね?確認ですが、キール殿は男性で宜しいですか?」
キールの見た目は一般の男性よりも背がずっと低い。着ている衣類は木綿製で手足を隠す様なデザインだ。線も細く見た目だけなら人間の女性にも見えなくはないのだ。
「そうだけど?」
「脱いでもらっても?」
「?」
「ソレクト卿!!」
脱いで?何をだ?服をか?何故に?キールはカーンの要望が分からない。そして、その発言に火をつけたように食ってかかってる騎士団長フレトールの様子も解せない。
「なんで?」
「いえ、エルフの身体の構造が人間と一緒なのかと思いまして。」
「ソレクト卿!もし、女性だったらどうするんですか!?」
「俺は男だけど?」
エルフの集落では川や泉で身を清める習慣がある。ちゃんと綺麗に洗っているし、見た目的にも汚くはない。だから見せるのは構わない。皆んなで水浴びだってしていたんだから、なんの障害もないのだが……
「そうだと、分かってはおりますが…!」
「確認のためですよ?身体的な記述は残されていないのです。ですから…」
「人間ってやっぱり変だな………水浴びでもないのに、そんな事をして俺に何の得がある?仲間でもないのに。」
「キール殿!嫌だと思うのでしたらやめて下さい。ソレクト卿も無理強いなどなさらずに!」
「ほう!水浴びをするのですか?いつ?どこで何を使ってどんな風にしていました?」
キールの困惑は全て外に追いやられて、カーンは次々と矢継ぎ早に質問してくる。キールは学者という人間が嫌いになりそうだ……
「さっきも言った…これらに答えても俺に何の得もない。」
だからつい、フンとそっぽを向きたくなる。キールにしてみればこれは当然の言い分だ。寝ている所を知らないうちに無理矢理に連れてこられて、帰れない事に納得しろ、しかしエルフの情報は洗いざらい話し尽くせと言われて誰が納得できようか。
「そこを何とか……」
振り出しに戻ってまた説得大会が始まりそうな雰囲気である。
「では、こうしましょう、キール殿。私がかけた迷子探索魔法を他の物と書き換えます。どうです?」
「……………」
ピクリとキールの耳が動く。迷子探索。森の王とも言われているエルフにとって、迷子になどなり得ない。そんなキールにとっては、迷子の子供のように扱われるなど屈辱でしかない。
「本当に?解除するのか?」
ジトリ、と疑いの目でキールはフレトールを見つめる。
「はい。解けますよ。完全に自由にとは出来ませんが、一つだけ貴方に枷をつけさせて下さいね。」
「だからそれは何?」
「魔封じになります。」
「なるほど…!」
ぽん、とカーンは掌を打った。
「なにそれ?」
「キール殿も魔法を使われるでしょう?我が国にいる時にも自由にお使いくださって大丈夫です。ただし…」
その後のただし、が曲者なんだ…!
「人間に向かって放ってもその効力は得ないという物です。」
「………?」
「ふふ、難しいですかね?キール殿に外で大暴れされては大変なことになります。友好的な関係を築きたいのですが、人間から敵対視されてしまうこともあるかもしれません。ですからキール殿が放った魔法が人間にとっては目眩しのようにしか感じられないという物です。人間には危害はでませんから何かあった時には思い切り放ってくださっても構いません。どうです?」
う~~ん、としばしキールは考え込む。
「よし、乗った!で、脱げばいいんだな?」
言葉が早いか行動が早いか、納得したらキールは即行動に出るタイプなのだろう。カーンとフレトールが見ている前でキールはポイポイと服を脱いでいく……
エルフの仲間にも物知りや探究心旺盛な者はいた。というか、皆んなが長寿なのだから自分からそう求めなくても物知りくらいにはなるだろうが。その中でも群を抜いて知識を蓄えている仲間もいた。しかしエルフは皆に分け与えるのだ。知り得た知識や技術を自分の知識を深めるだけに留めてはおかない。皆と共有し、分かち合い、理解し合う。何でも話し合い解決していくのだ。だからエルフは歳若いうちから自分の事は何でも自分で出来るようになる。家を作ることも、服を作ることも、狩も、料理も自分達の産まれから死ぬその時まで全てを皆で共有してきたのだから。
だからキールは目の前のカーンのやり方に非常に違和感を感じるというか、理解不能というか、キールの行き着いた答えは人間は変だ、だった。
カーンのキール達エルフの事を知りたいと言っていた言葉の通り、カーンはキールの話す事一つも漏らすまいと真剣に聞いている、ここまでは良い。好きな食べ物や、嫌いな物、好きな事などを聞くのも良いのだろう。
「お名前をお聞きしても?」
少し人間について考え込んでいたキールはカーンに何度かそう聞かれて、やっと名前を名乗った。
「キール…」
「キール殿ですね?確認ですが、キール殿は男性で宜しいですか?」
キールの見た目は一般の男性よりも背がずっと低い。着ている衣類は木綿製で手足を隠す様なデザインだ。線も細く見た目だけなら人間の女性にも見えなくはないのだ。
「そうだけど?」
「脱いでもらっても?」
「?」
「ソレクト卿!!」
脱いで?何をだ?服をか?何故に?キールはカーンの要望が分からない。そして、その発言に火をつけたように食ってかかってる騎士団長フレトールの様子も解せない。
「なんで?」
「いえ、エルフの身体の構造が人間と一緒なのかと思いまして。」
「ソレクト卿!もし、女性だったらどうするんですか!?」
「俺は男だけど?」
エルフの集落では川や泉で身を清める習慣がある。ちゃんと綺麗に洗っているし、見た目的にも汚くはない。だから見せるのは構わない。皆んなで水浴びだってしていたんだから、なんの障害もないのだが……
「そうだと、分かってはおりますが…!」
「確認のためですよ?身体的な記述は残されていないのです。ですから…」
「人間ってやっぱり変だな………水浴びでもないのに、そんな事をして俺に何の得がある?仲間でもないのに。」
「キール殿!嫌だと思うのでしたらやめて下さい。ソレクト卿も無理強いなどなさらずに!」
「ほう!水浴びをするのですか?いつ?どこで何を使ってどんな風にしていました?」
キールの困惑は全て外に追いやられて、カーンは次々と矢継ぎ早に質問してくる。キールは学者という人間が嫌いになりそうだ……
「さっきも言った…これらに答えても俺に何の得もない。」
だからつい、フンとそっぽを向きたくなる。キールにしてみればこれは当然の言い分だ。寝ている所を知らないうちに無理矢理に連れてこられて、帰れない事に納得しろ、しかしエルフの情報は洗いざらい話し尽くせと言われて誰が納得できようか。
「そこを何とか……」
振り出しに戻ってまた説得大会が始まりそうな雰囲気である。
「では、こうしましょう、キール殿。私がかけた迷子探索魔法を他の物と書き換えます。どうです?」
「……………」
ピクリとキールの耳が動く。迷子探索。森の王とも言われているエルフにとって、迷子になどなり得ない。そんなキールにとっては、迷子の子供のように扱われるなど屈辱でしかない。
「本当に?解除するのか?」
ジトリ、と疑いの目でキールはフレトールを見つめる。
「はい。解けますよ。完全に自由にとは出来ませんが、一つだけ貴方に枷をつけさせて下さいね。」
「だからそれは何?」
「魔封じになります。」
「なるほど…!」
ぽん、とカーンは掌を打った。
「なにそれ?」
「キール殿も魔法を使われるでしょう?我が国にいる時にも自由にお使いくださって大丈夫です。ただし…」
その後のただし、が曲者なんだ…!
「人間に向かって放ってもその効力は得ないという物です。」
「………?」
「ふふ、難しいですかね?キール殿に外で大暴れされては大変なことになります。友好的な関係を築きたいのですが、人間から敵対視されてしまうこともあるかもしれません。ですからキール殿が放った魔法が人間にとっては目眩しのようにしか感じられないという物です。人間には危害はでませんから何かあった時には思い切り放ってくださっても構いません。どうです?」
う~~ん、としばしキールは考え込む。
「よし、乗った!で、脱げばいいんだな?」
言葉が早いか行動が早いか、納得したらキールは即行動に出るタイプなのだろう。カーンとフレトールが見ている前でキールはポイポイと服を脱いでいく……
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