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人との関わり
8 入浴 1
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二人の目の前に晒されたキールの肢体は見事な程に整っていて…細いと思われている身体には無駄な脂肪は一切なく、程良く筋肉がついていた。それにも増して仄かに発光しているような輝く様に白い肌が成人していると言っていたキールの身体を成長途中の少年の様にも見せて、不思議な色気を醸し出している様な裸体…
「これでいい?どこも汚れてないだろ?」
つい先日祖母を弔う前にちゃんと水浴は済ませてあったのだから。
「…………」
「……………」
どうやら二人とも言葉が出ない様である。
「ちょっと?」
「はい……結構です。ちゃんと男性の姿でしたね……ありがとうございました。」
一足先に我に帰った考古学者カーンは搾り出す様な声を出した。
「約束!迷子探索魔法を解いて!」
そのままでいい、という様に裸のままでキールは騎士団長フレトールに詰め寄った。
「わ、わかりましたから…まずは、服を着ませんか?」
同じ性別だというのに、何をこんなにも動揺しているのだろうかと自問自答したいくらいにフレトールはキールの裸体を直視できなかった。パッと目に入ってきた所は確実に男性を示す物も確認できたのだが……
「折角脱いだのだからこのまま水浴びしてくる。人間の家は少し暑いからな。何処に川や泉がある?」
スタスタとそのままキールは窓の方から外を眺め出した。見たところ、外は人の手が入っている庭園の様で、生えている植物の間を縫う様に小道が整えられていた。が、キールが求めている様な大きな川や泉は見当たらない…
「キール殿!外では困ります!」
「え?水浴びならば外だろう?人間はおかしいのか?」
家の中で水浴びしたら家が水浸しになるじゃないか…!
「違いますよ。人間も時には水浴はしますが、普段は家の中にある浴場を使うのです。」
何故かキールの方を見ないフレトールが必死に人間の入浴方法を説明し出す。
「本当に、人間って面倒臭い事をしているんだな……」
フレトールの必死の説明の後のキールの感想が面倒臭い、だった。
わざわざ家の中に水を引き入れてそれを沸かし、湯船に運んで入浴をするという…キールにとっては何とも無駄だらけにしか見えない。
「今からご案内しますからまずは衣類を着てください。」
「また脱がなきゃならなくなるのに!?」
信じられない!というキールの声に、何と言って服を着せたら良いのかフレトールは言葉が出てこなかった。
「キール殿、人間達は非常に保守的なのです。特に女性は見知らぬ男性の裸などきっと見たくもないと思いますよ?そんな姿で城の中を歩き回っては、城中至る所で悲鳴が上がるでしょう。」
「それは五月蝿そうだな………」
大人しく、調和を愛し、物静かな民であるエルフならでは大騒ぎは御免である。渋々ながらパッと衣類を身につけたキールにフレトールはそっと近づいていった。
「私がお側に行ってもよろしいですか?」
今更だろう。人間の王太子はごめん被るが、もう既にキールをここまで連れてきて魔法までかけた相手だ。キールはとっとと自分にかけられている迷子探索魔法を解いてもらいたい。
「できればさっさとしてほしいし、水浴びがしたい。」
森で入ったばかりだが、人間の言うところの入浴も少し気になり出している。どんな無駄をしているのかときっと呆れ返るばかりだろうけど。
「では、失礼します。」
おずおずと言うようなフレトールの手がキールの額にそっとかざされた。痛みはない。なんだかホワンとした暖かさが額に感じられただけで……
「はい。よろしいですよ。」
少しだけ目を瞑っていたキールはフレトールのその声で瞳を開ける。変わった所は今の所なさそうだ。
「………?」
「さ、行きましょうか?」
首を傾げているキールから目を逸らす様に、フレトールは部屋を出ようと前を歩き出す。
「何処に?」
「浴場にご案内します。しばらくこちらでお過ごしになると思いますから。こちらへどうぞ。」
キールの先に立ってゆっくりとキールを先導していくフレトール。背丈はずっとキールよりも高く、騎士団長というものをしているフレトールは体躯もがっちりとしている様だ。人間の城の事など全く分からないキールはフレトールの後をゆっくりとついていった。
「この部屋は離れになっております。キール殿の為の家と思っていて下さってかまわないでしょう。ここに入れる者も極少数のみとなっておりますからキール殿に煩わしさを感じさせる事も少ないかと。」
「まだ人間がくるの?」
キールは既に辟易としている。同じ種族でない人間達は色々な色を纏っているから目が疲れるのだ。出来れば近くにいてほしくはない。
「こさせないでよ。」
「しかし、身の回りの事をする者は必要ですから。」
「自分でできる。衣食住全て自分でしてきたんだから問題ない。」
「いえ、例えそうであったとしてもここは森ではありませんから、勝手が違いますでしょう。ですのでここにいる間は食事や必要な物はこちらで用意させていただきます。さ、着きましたよ。」
無駄に長い廊下をまっすぐ進み左に折れた所で新しい部屋の扉があった。
「これでいい?どこも汚れてないだろ?」
つい先日祖母を弔う前にちゃんと水浴は済ませてあったのだから。
「…………」
「……………」
どうやら二人とも言葉が出ない様である。
「ちょっと?」
「はい……結構です。ちゃんと男性の姿でしたね……ありがとうございました。」
一足先に我に帰った考古学者カーンは搾り出す様な声を出した。
「約束!迷子探索魔法を解いて!」
そのままでいい、という様に裸のままでキールは騎士団長フレトールに詰め寄った。
「わ、わかりましたから…まずは、服を着ませんか?」
同じ性別だというのに、何をこんなにも動揺しているのだろうかと自問自答したいくらいにフレトールはキールの裸体を直視できなかった。パッと目に入ってきた所は確実に男性を示す物も確認できたのだが……
「折角脱いだのだからこのまま水浴びしてくる。人間の家は少し暑いからな。何処に川や泉がある?」
スタスタとそのままキールは窓の方から外を眺め出した。見たところ、外は人の手が入っている庭園の様で、生えている植物の間を縫う様に小道が整えられていた。が、キールが求めている様な大きな川や泉は見当たらない…
「キール殿!外では困ります!」
「え?水浴びならば外だろう?人間はおかしいのか?」
家の中で水浴びしたら家が水浸しになるじゃないか…!
「違いますよ。人間も時には水浴はしますが、普段は家の中にある浴場を使うのです。」
何故かキールの方を見ないフレトールが必死に人間の入浴方法を説明し出す。
「本当に、人間って面倒臭い事をしているんだな……」
フレトールの必死の説明の後のキールの感想が面倒臭い、だった。
わざわざ家の中に水を引き入れてそれを沸かし、湯船に運んで入浴をするという…キールにとっては何とも無駄だらけにしか見えない。
「今からご案内しますからまずは衣類を着てください。」
「また脱がなきゃならなくなるのに!?」
信じられない!というキールの声に、何と言って服を着せたら良いのかフレトールは言葉が出てこなかった。
「キール殿、人間達は非常に保守的なのです。特に女性は見知らぬ男性の裸などきっと見たくもないと思いますよ?そんな姿で城の中を歩き回っては、城中至る所で悲鳴が上がるでしょう。」
「それは五月蝿そうだな………」
大人しく、調和を愛し、物静かな民であるエルフならでは大騒ぎは御免である。渋々ながらパッと衣類を身につけたキールにフレトールはそっと近づいていった。
「私がお側に行ってもよろしいですか?」
今更だろう。人間の王太子はごめん被るが、もう既にキールをここまで連れてきて魔法までかけた相手だ。キールはとっとと自分にかけられている迷子探索魔法を解いてもらいたい。
「できればさっさとしてほしいし、水浴びがしたい。」
森で入ったばかりだが、人間の言うところの入浴も少し気になり出している。どんな無駄をしているのかときっと呆れ返るばかりだろうけど。
「では、失礼します。」
おずおずと言うようなフレトールの手がキールの額にそっとかざされた。痛みはない。なんだかホワンとした暖かさが額に感じられただけで……
「はい。よろしいですよ。」
少しだけ目を瞑っていたキールはフレトールのその声で瞳を開ける。変わった所は今の所なさそうだ。
「………?」
「さ、行きましょうか?」
首を傾げているキールから目を逸らす様に、フレトールは部屋を出ようと前を歩き出す。
「何処に?」
「浴場にご案内します。しばらくこちらでお過ごしになると思いますから。こちらへどうぞ。」
キールの先に立ってゆっくりとキールを先導していくフレトール。背丈はずっとキールよりも高く、騎士団長というものをしているフレトールは体躯もがっちりとしている様だ。人間の城の事など全く分からないキールはフレトールの後をゆっくりとついていった。
「この部屋は離れになっております。キール殿の為の家と思っていて下さってかまわないでしょう。ここに入れる者も極少数のみとなっておりますからキール殿に煩わしさを感じさせる事も少ないかと。」
「まだ人間がくるの?」
キールは既に辟易としている。同じ種族でない人間達は色々な色を纏っているから目が疲れるのだ。出来れば近くにいてほしくはない。
「こさせないでよ。」
「しかし、身の回りの事をする者は必要ですから。」
「自分でできる。衣食住全て自分でしてきたんだから問題ない。」
「いえ、例えそうであったとしてもここは森ではありませんから、勝手が違いますでしょう。ですのでここにいる間は食事や必要な物はこちらで用意させていただきます。さ、着きましたよ。」
無駄に長い廊下をまっすぐ進み左に折れた所で新しい部屋の扉があった。
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