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第三章 旅

女使いの初仕事

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朝食を終えて、テントの撤収作業をする平和な朝に、ルミさんの緊張した声が響き渡った。

「後方6時の位置、5名の人間が猛スピードで接近中。冒険者チームと思われます。至急戦闘態勢を取ってください」

全員が作業の手を止め、すぐに戦闘態勢に入る。

「対人戦の準備よ。フォーメーションは昨日と同じAで行くわ」

フローラさんがメンバーに指示を出す。

「敵3名散開しています。魔法攻撃来ます」

ルミさんが敵の新たな動きを報告した。

リンズの6人はすでに敵を迎撃可能な隊形となっていた。

2時12時10時の方向に爆音とともに巨大な火柱、水柱、雷柱が立ち上り、3本の柱が合体して轟音を発しながら、こちらに向かってくる。

「あれは、ラリル合体魔法、シックスダイスですわっ!!」

カトリーヌさんが叫びながら前に飛び出し、飛んできた魔法を身を挺して全身で受けとめる。

「おーほほほほほほっ」

魔法が全身を貫いているはずだが、カトリーヌさんは満面の笑みで豪快に笑っている。

「鉄壁のカトリーヌ」

全ての攻撃をまともに受けてもびくともしない驚異の防御力を誇るタンク。

魔法を上手く逃がす術をもっているのだという。

リンリンの後ろで爆音が鳴り響いた。

振り返ると、フローラさんが同じように火柱、水柱、雷柱を作り出し、合体させた魔法を放っていた。シックスダイスが3人がかりで放った魔法の柱よりも数倍以上も大きい。

「爆炎のフローラ」

放つ魔法は火系統を得意とするが、フードから見える表情は氷の微笑み。

まだ双方の距離は300メートルほどで、もうしばらくは遠距離攻撃戦になるはずだ。

シックスダイスに襲いかかるフローラさんの高エネルギー波に対し、敵のタンク役が前面に躍り出た。ピンクの髪のツインテールが、なんとあの強大な魔法を手に持っている奇妙な箱の中に吸い込んでしまった。

あれ? あの姿、誰かを思い出すな、と思ったら、脳内に念話で話しかけられた。

「おーい、少年」

(え? ラクタさん? それとも、タンクの人ですか?)

「え? 何を言ってんのよ。美人のラクタさんですよ。やっと延長許可が下りたよ。ほんと、お役所仕事ってだめね。あ、また時間なくなっちゃう。重要なことだからよく聞いてね。あれ? もう姉さん来てるじゃん。やば、間に合ったような、間に合っていないような。少年、まずは逃げてっ」

(え? どういうことですか)

「あれは私の姉よ。今のあなたたちじゃ勝ち目はないわ。えーとね、そこの洞窟に入ってちょうだい。私が次元の壁を作って、座標を操作して見つからないようにするから」

(わかりました)

女使いとして、何をどうすればよいかは、不思議なことに頭が理解している。

「女使いの名において、我が妻たちに命ずる。撤退! 4時の方向の洞窟に退避せよ」

リンリンが初めて女使いの詔を発した。

フローラ、カトリーヌ、ルミの子宮から熱い力の奔流が生まれ、瞬発力が瞬時にMAXとなる。また、何をすべきかを頭ではなく、体で感じ、3人はすぐに行動する。

カトリーヌはユカリを担いで即時に戦線を離脱し、洞窟に向かう。ルミはマリを小脇に抱えて、同じく洞窟へと走る。フローラはリンリンを後ろから抱擁し、そのままバックステップで敵の魔法に応戦可能な体勢をとりながら、洞窟へと撤退した。

シックスダイス側からは、リンズの6人が瞬時に消えたように見えるぐらい、超高速の動きであった。

シックスダイスのタンク役のインストは、ラクタの姉だ。容姿は双子と見まがうぐらいラクタに酷似している。ツインテールのピンクの髪、ピンクの目、ピンクの唇の整った顔立ち。ちょっといたずらっぽい雰囲気までよく似ている。ただし、胸の大きさは妹の半分しかなかった。「ああ、胸の小さい方ね」と言われるのが、インスタは嫌いだった。

「あれまあ、逃げ足の速いこと。あなたたち、洞窟を探してきてくれる?」

シックスダイスの他の4人は、インストのチャームの魔法で操られている。ララ、リリ、ルルの3人が洞窟内の捜索に向かった。
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