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アイドル編

第38話

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 私は1度、芸能界を引退したのだが、Marinaが改名と称して私に成り済まし、再デビューを果たしていた。仕方なしに私も再び芸能界へと、舞い戻ってしまったのだ。不本意だけど、これはMarinaの為だから。
「なぁ、Marinaちゃん、良くないか?」
「いやぁ、俺はやっぱりMizukiちゃんだよなぁ」
「Marinaちゃんは、何とも言えない妖艶さが良いだよ。色っぽくて」
「うーん、俺は清純派のMizukiちゃん派だな」
「馬鹿言え。結婚してて清純派もクソも無いだろう?どうせ旦那とヤりまくってるんだぞ?」
 引退復帰が2人によるデュエットと話題性は十分で、元々高い人気を誇っていたMizukiだから、世間の注目の的だった。
 世間では、Mizuki派かMarina派かに分かれてアイドル業界の人気を二分していた。
 Mizukiが決して行わなかったセミヌード写真集を、Marinaは出版した。2人の見た目は全く同じであるから、Mizukiの裸を連想させ、このため世界限定1億部の写真集の予約は、ネットでの受付開始から僅か5秒で即完売した。これはまだまだ、Mizukiの人気の高さを物語っている出来事だった。
「しかしヤバいよな~Marinaちゃん、小麦色の肌で胸も大きくて形も良いし。しかもニプレスで、乳首を隠してるだけのこの写真…俺、何回抜いたか分からないよ」
 クラスでそんな話をしている男子を、白い目で女子達は見ていた。
「本当、男子って馬鹿よね?芸能人のアイドルなんて、皆んな枕やって食ってるだろうに、夢見ちゃって可哀想」
「あーヤダヤダ。モテない女のひがみって…」
 クラスの男子と女子の仲が悪くなったのも、M&Mのせいだと言われた。女性は現実を見抜く目を持っている。確かにアイドル達の大半は枕営業やヤリコンに参加して生活費を稼いでいた。
 デビューした頃のMizukiもやらされていた。この世界で生き抜く為には、仕方のない事だったのだ。でもそんな事をしなくても良い様に、事務所がレールを敷いてあげるべきだ。タレントを食い物にしたり、使い捨てにしたりしていてはダメだ。
 私達の個人事務所は、綾瀬が社長兼マネージャーだ。私達が所属している事によって、入所や移籍希望のタレントが増えた。綾瀬は、彼女達の面接で忙しそうにしている。
 私達くらいになれば、仕事を取りに行く必要は無く、殺到したオファーのスケジュール調整に四苦八苦する。なんとも贅沢な悩みだ。枕をやらされた経験があるからこそ、仕事がある事の有り難さが身に染みる。例え睡眠時間が2時間以下でもだ。
 正直、これほどブラックな仕事なんて無いだろうと思う。過労死させられるレベルで働かされ、仕事が無ければ枕営業と言う名の売春を斡旋させられる。
 ヤリコンなんて、12、3歳の女の子も参加している。相手は最低でも5、6人で、多いと10人前後の男達が参加しており、全員に抱かれるまで帰る事が出来ない。完全に児童買春で、犯罪だ。
 私はヤリコンには参加しなかったが昔、小百合達がそんな事を言っていた。その話を聞いた時は高校生だったが、彼女達は中学生の頃から参加していたと言っていた。
 時々フォーカスされてバレてしまう事がある。アイドルは16歳で、相手の男は38歳だとかで年齢差があり過ぎて、ファン達はなんでそんなオヤジと?とショックを受ける。ヤリコンの相手だなんてバレたら、もっと体裁が悪い。だから口裏を合わせて、「交際していましたが、もう別れました。これからは心を入れ替えて、ファンの為に尽くします。もう一度だけ、私にチャンスを下さい」なんて事を言う。1度も付き合った覚えは無いし、身体だけの関係だし、何なら他に彼氏がいるし…。今回の件で枕やってたのが彼氏にバレて、キレられて別れちゃったし、散々だよ。とまぁこんな事は日常茶飯で、芸能界では珍しくも何ともない。発覚した時、自分もしているから口をつぐむが、「あー、ヤリコンがバレたのね?」と他の芸能関係者は皆んな分かっている。知らぬは世間だけだ。
「ふふふ…」
「どうしたの?麻里奈」
「いえね。楽しいなぁって。それに、世間的に結婚してる瑞稀と違って、私は結婚してない事になってるから、モテちゃって…うふふふ」
「何なのそれ?浮気するつもりなの?」
「逆に浮気って、何なの?戸籍的には、あなたの旦那なんだから、私は遊んでも自由じゃないの」
「私のイメージにも影響するんだから、ハメを外さないでよ?」
「分かってわよ。複数相手とかしないから安心してよ」
「複数って…お願い、マジで止めて」
「それなら、来夢を貸してよ」
「貸すとか貸さないとか、本人が聞いたらキレるわよ?」
「私だって来夢としたいんだもん」
「だもんって…」
 別に来夢は私のものではない、と言おうとして言葉を飲んだ。多分、来夢は私のものだと思ってる。それなのにそんな事を言えば悲しむだろうし、怒るに違いない。
 来夢は私が精神安定剤となって、他の生命体を喰らう事を止めてくれた。機嫌を損ねて暴れ出したら大変な事になる。
「うーん、どうしよう」
 取り敢えず来夢には、麻里奈がHしたいって言ってると、伝えてみよう。来夢が嫌なら無理強いをしなければ良いだけだ。
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