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第三章 同居開始で溺愛されてます

四十一話

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 心臓が大きく跳ねる。

 カップを持つ手が震える。


「キャッチ&ハグの皆さんには、新曲『アセロラ畑で掴まえて』を歌ってもらいます!」

「桃澤さん、この曲はどんな曲なんですか?」

「はい、この曲は、片想いしてる女の子が、勇気を出して男の子にアタックするという、かわいい歌になってます!」


 さらさらの長い黒髪をツインテールにした、ピンクを基調とした衣装を身に着けた彼女がにこにこと答える。

 こいつが、この女が。

 俺から雄介を奪った女。


「おおー、そうなんですね!ちなみに桃澤さんは恋はしたことは……」

「そういうのは今まで全然無くて!いつか素敵な方と出会えたらいいなぁって思ってます」


 全身の血液が沸騰しそうだった。

 俺から雄介を奪っておいて何を言っているんだこいつは。

 どうしてこんな奴に雄介はホイホイと乗り換えたんだ。

 雄介を支えていたのは俺なのに……!


「しゅん兄ちゃん!大丈夫!?火傷してない!?」


 はっと意識が戻ると、俺はホットココアを太腿にぶち撒けていた。

 じわりと感覚が浮き上がってくると、温く濡れた気持ち悪さを覚えた。


「……だ、大丈夫!冷めてたし、カップも割れなくて良かった……着替えてくるな」

「本当?冷やさなくて大丈夫?」

「大丈夫だって、ありがとな、もう今日はこのまま着替えて寝ちまうわ」


 そう返しながら俺は自室へ向かった。

 衣装ケースから適当なスウェットと下着を取り出し着替え、軽く歯を磨いて、そのままベッドに横たわった。
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