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第144話 ゴミと化した想い出

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 佐野の目測通り、ゴミ袋は足りた。可燃と不燃、二種類の袋が数個ずつ二人の足元に並んでいる。
「あーあ、ついにゴミとなっちまったか」
 ユキがため息まじりに軍手を外しながら言う。
「ベッドの下から引っ張り出した時は、どんなに汚れていようが、カビていようが、ゴミって感じはしなかった。でもこうして分別して袋詰めしたら、もう完全にゴミにしか見えん。何でだろうな。謎だ」
「うーん……それはもしかして、中身を解体しているうちに田上課長の心の整理がついたからではないでしょうか」
「……かもな」
 納得の表情でユキは小さく笑う。そしてスコップの先で袋の一つをぺしぺしと軽く叩いた。
「ったく、こいつらのせいでAとのデート中はいつも
腹が減ってしょうがなかったぜ。でもAに嫌われるのが怖くて、必死で平静を装ってた。その間、いつ腹が鳴ってしまうか、ずっとヒヤヒヤしてたものさ」
 そこで佐野は、以前ユキがAとのデートについて語っていたのを思い出す。
 庶民的な飲食店を心底嫌悪し、食事中の姿勢やテーブルマナーにもうるさいAは、いつもユキを高級レストランへ連れて行った。そのせいでユキは自分が食べたいものではなく、品良くきれいに食べられるメニューを選ばなければならなかった。結果、小皿に盛られた前菜のような腹の足しにもならないものを注文する羽目となり、デートの最後まで空腹をこらえていたのだと。
「当時は必死だったから気づかなかったけど、はたから見れば、さぞかし滑稽な二人だったろうよ。けれどもう、それら全部ひっくるめてゴミになったんだ……ケイ、手伝ってくれてありがとうな」

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