104 / 334
第104話 大根役者の即興寸劇
しおりを挟む
『誰だ、今のは。田上か』
独りよがりの怒髪演説を中断された社長が、ムッとして聞く。
「はい。田上課長です」
肩書きをわざと鮮明に発音する。佐野なりの抵抗だ。
「ん? もしかして電話、会社の人?」
そこですかさず大根役者ユキが玄関から大声で言う。もちろんスマホへ音が充分に入る音量でだ。
「はい。当社の社長です!」
大根役者その2の佐野が声を張り上げる。
「おお! それなら私に代わってくれないか。ぜひとも新年の挨拶がしたいので」
ユキはそう言ったあと、足音を意図的にドシドシと大きくたてながらこちらに戻って来る。
「はい! 少々お待ちください。社長、お話の途中すみませんが、田上課長が新年のご挨拶をしたいとのことで」
佐野はスマホを机の上から持ち上げ、自分の作業服のこすれる音や、周囲のノイズを社長に聞かせる。ハンズフリー通話であることを隠すためだ。
『ふん……じゃあ、代われ』
何も知らない社長はチッと舌打ちしたあと、面倒くさそうに命令する。
ユキが、ガタピシとやかましい音を発しながら椅子に座る。佐野はその騒音の中、手にしたスマホを再び机の上に置く。
寸劇終了――ユキがニヤリと笑う。
独りよがりの怒髪演説を中断された社長が、ムッとして聞く。
「はい。田上課長です」
肩書きをわざと鮮明に発音する。佐野なりの抵抗だ。
「ん? もしかして電話、会社の人?」
そこですかさず大根役者ユキが玄関から大声で言う。もちろんスマホへ音が充分に入る音量でだ。
「はい。当社の社長です!」
大根役者その2の佐野が声を張り上げる。
「おお! それなら私に代わってくれないか。ぜひとも新年の挨拶がしたいので」
ユキはそう言ったあと、足音を意図的にドシドシと大きくたてながらこちらに戻って来る。
「はい! 少々お待ちください。社長、お話の途中すみませんが、田上課長が新年のご挨拶をしたいとのことで」
佐野はスマホを机の上から持ち上げ、自分の作業服のこすれる音や、周囲のノイズを社長に聞かせる。ハンズフリー通話であることを隠すためだ。
『ふん……じゃあ、代われ』
何も知らない社長はチッと舌打ちしたあと、面倒くさそうに命令する。
ユキが、ガタピシとやかましい音を発しながら椅子に座る。佐野はその騒音の中、手にしたスマホを再び机の上に置く。
寸劇終了――ユキがニヤリと笑う。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
81
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる