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第105話 社交辞令を本気にするな
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「お電話かわりました。橋本建設の田上です。いつもお世話になっております。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます」
ユキが愛想よく挨拶する。
『ああっ、田上課長! こちらこそどうぞよろしくお願い申し上げます。本来ならば私がそちらに出向いてご挨拶するところをお電話でまことに失礼いたしまして』
社長が回りくどい敬語と甲高い声で言う。先ほどまでの陰険極まりないダミ声とは大違いだ。
『うちの佐野がお世話になっておりますが、至らぬ点はありませんか。何せまだ経験が浅いもので』
それよか星崎の至らぬ点に早く気づけ。佐野は腹の中で毒づく。
「どうかご心配なく。佐野さんはとても真面目に仕事をしております。技術レベルも高くて、こちらも非常に助かっております。なので今しばらくはこちらにいてもらおうかと考えております」
『そうですか! ありがとうございます! そう言っていただけると嬉しいです。となれば、あの――その件で、ちょっとご相談したいことがございまして。少々お時間よろしいですか』
何だ、唐突に。佐野は警戒する。
「はい。かまいません。どのようなことでしょう」
『去年の年末に、うちの星崎がそちらへ伺った件なのですが』
「ほう?」
ユキの右眉が上がる。
『佐野の契約金額、再度見直しをお願いできませんでしょうか。派遣期間が延長となれば、話も変わってきますので』
調子に乗るな。がめついにもほどがある。そして社交辞令を本気にするな。
佐野は恥ずかしさと怒りで額から汗が吹き出る。
ユキが愛想よく挨拶する。
『ああっ、田上課長! こちらこそどうぞよろしくお願い申し上げます。本来ならば私がそちらに出向いてご挨拶するところをお電話でまことに失礼いたしまして』
社長が回りくどい敬語と甲高い声で言う。先ほどまでの陰険極まりないダミ声とは大違いだ。
『うちの佐野がお世話になっておりますが、至らぬ点はありませんか。何せまだ経験が浅いもので』
それよか星崎の至らぬ点に早く気づけ。佐野は腹の中で毒づく。
「どうかご心配なく。佐野さんはとても真面目に仕事をしております。技術レベルも高くて、こちらも非常に助かっております。なので今しばらくはこちらにいてもらおうかと考えております」
『そうですか! ありがとうございます! そう言っていただけると嬉しいです。となれば、あの――その件で、ちょっとご相談したいことがございまして。少々お時間よろしいですか』
何だ、唐突に。佐野は警戒する。
「はい。かまいません。どのようなことでしょう」
『去年の年末に、うちの星崎がそちらへ伺った件なのですが』
「ほう?」
ユキの右眉が上がる。
『佐野の契約金額、再度見直しをお願いできませんでしょうか。派遣期間が延長となれば、話も変わってきますので』
調子に乗るな。がめついにもほどがある。そして社交辞令を本気にするな。
佐野は恥ずかしさと怒りで額から汗が吹き出る。
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