103 / 334
第103話 不気味な笑顔で了解の意を伝える
しおりを挟む
ユキがメモを佐野へ渡す。
〈通話交代。俺が声をかけるから、芝居してこっちに回せ〉
佐野は横目でユキを見た。嬉しそうにニンマリと笑っている。
嫌な予感しかしない。父親ほどの年齢の社長を相手に、今度はどんな喧嘩をふっかけるつもりなのだろうか。
けれど佐野は警戒しつつも、これから起こるであろう聞くに堪えない舌戦が待ちきれない。
元旦早々、不謹慎。だがこれも佐野の根性悪のなせる技。なので意識せずとも自動的に口角は上がり、不気味な笑顔でユキへ了解の意を伝える。
するとユキは静かに席を立ち、物音を立てぬよう抜き足差し足で玄関へ向かう。
何をするつもりか。佐野は怪訝な顔でユキの背を目で追う。
『おい! 聞いてんのかッ』
一方、スマホからは社長の怒り声。
「はい。申し訳ございません」
佐野は即座に謝る。しかし棒読みだ。謝罪する必要のない事柄ゆえ、腹の底からバカバカしく思っているからだ。
それよかユキの行動の方が謎過ぎて気になる。ソロソロと中腰で歩く後ろ姿も実に滑稽。吹き出さないようにするのが一苦労。なので延々と続く社長の怒れるダミ声は佐野にとってはすでに馬耳東風。
ユキが玄関に到達した。くるりと体の向きを変え、佐野を見る。
「佐野さーん! 悪いけど梱包材、持ってきてくれないか――あ、電話中か。すまん」
なるほど。そのシチュエーションか。
佐野の頭の中で、通話交代のシナリオが猛スピードで立ち上がる。
〈通話交代。俺が声をかけるから、芝居してこっちに回せ〉
佐野は横目でユキを見た。嬉しそうにニンマリと笑っている。
嫌な予感しかしない。父親ほどの年齢の社長を相手に、今度はどんな喧嘩をふっかけるつもりなのだろうか。
けれど佐野は警戒しつつも、これから起こるであろう聞くに堪えない舌戦が待ちきれない。
元旦早々、不謹慎。だがこれも佐野の根性悪のなせる技。なので意識せずとも自動的に口角は上がり、不気味な笑顔でユキへ了解の意を伝える。
するとユキは静かに席を立ち、物音を立てぬよう抜き足差し足で玄関へ向かう。
何をするつもりか。佐野は怪訝な顔でユキの背を目で追う。
『おい! 聞いてんのかッ』
一方、スマホからは社長の怒り声。
「はい。申し訳ございません」
佐野は即座に謝る。しかし棒読みだ。謝罪する必要のない事柄ゆえ、腹の底からバカバカしく思っているからだ。
それよかユキの行動の方が謎過ぎて気になる。ソロソロと中腰で歩く後ろ姿も実に滑稽。吹き出さないようにするのが一苦労。なので延々と続く社長の怒れるダミ声は佐野にとってはすでに馬耳東風。
ユキが玄関に到達した。くるりと体の向きを変え、佐野を見る。
「佐野さーん! 悪いけど梱包材、持ってきてくれないか――あ、電話中か。すまん」
なるほど。そのシチュエーションか。
佐野の頭の中で、通話交代のシナリオが猛スピードで立ち上がる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
81
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる