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第152話 残酷な末路
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ウィルをはじめとした軍人たちにより、アナスタシアは牢屋に連行された。近いうちに皇都へと連れていかれ、殺人を犯した罪人として正当な方法で裁かれることだろう。南部の覇者である夫を殺害する巧妙な計画を立て、実行するという事件は、帝国中を震撼させるものとなるはずだ。
「胸中の霧が晴れた気分だ」
アデルが頬杖をつきながら、瞑目する。
「あぁ、ラダベル。ちなみにだが教えてやろう」
アデルのウォーターブルーの瞳が開かれる。ラダベルをまっすぐと見据えた。
「僕にお前と婚約破棄するよう助言したのは、あの罪人だ」
まさかの事実に、ラダベルは驚愕した。
アナスタシアが、アデルに婚約破棄の助言をしていたなんて。そのおかげでアデルと別れることができたし、死ぬ未来を回避することができた。ラダベルは、アナスタシアに少しだけ感謝したのだった。
アデルの詳しい説明としてはこうだ。ラダベルと婚約をしている際に南部を訪れた頃のこと。彼女とそろそろ結婚したいが、その一線を越えてしまえば確固たる地位が手に入ったからといって、彼女が自分に執着してくれなくなるのではと懸念を抱き、葛藤していたらしい。自分に執着心を見せてほしい、とアナスタシアに偶然相談したところ、「押してダメなら一旦引いてみてはいかがですか?」と助言を受けたらしい。そのため皇城にてラダベルに対し、婚約破棄を申し出た。すぐに軌道修正を図ろうとしたが、その前にラダベルが自らの意見を押し通してしまったため、結局婚約破棄となってしまったのだ。
「我が妹の単なる嫉妬だな……。帝国には伯爵夫人の噂が広まっていただろう? アナスタシアは愛する人と結婚できなかったのに、帝国屈指の悪女であった伯爵夫人は、当時の愛する人である元帥と結婚できるのか、と嫉妬に駆られたんだ。だから、元帥に的外れな助言をしたのだろう……。それに騙されるあなたもあなたですが」
オースター侯爵がアデルを横目で見ると、彼は頬を真っ赤にして顔を勢いよく背けたのであった。
もしかしてオースター侯爵は、分かっていたのだろうか。アナスタシアは、救いようがない妹だということを。唯一の妹を失う羽目になって、オースター侯爵も苦しいだろうに。それなのに、なんて理性的な人なんだろうか、とラダベルは感心する。
きっとアナスタシアからしたら、ほんの少しの出来心だったのだ。それがまさか、自身の首を絞める末路となるとは、彼女も想像していなかっただろう。自身の助言を真に受けたアデルがラダベルと婚約破棄して、その結果ラダベルはアナスタシアの想い人であるジークルドと結婚してしまったのだから。星の巡り合わせは、彼女を残酷な末路へと導いた。彼女の人生は何から何まで上手くいかない。ラダベルも相当だが、心から愛するジークルドと一緒になれたことが何よりの救いだ。
「僕は明日にでも皇都に向けて出発する。罪人と一緒にな。それで良いな? オースター侯爵」
「はい、構いません。アナスタシアの保護者として私も皇都に参りましょう」
アナスタシアは一体どうなってしまうのか。何かしらの裁きは避けられないであろうし、極刑も免れることはできないかもしれない。震えそうになった時、ジークルドに手を握られた。
「ラダベルが心配することは何もない」
そう言われ、ラダベルは息を吐いた。
「元帥、オースター大将。妻が長旅で疲れてしまっているのでこの辺りで失礼させていただいてもよろしいでしょうか?」
ジークルドに肩を抱かれる。彼のたくましさに、ラダベルは胸を高鳴らせた。
「フン、勝手にしろ!! このバカ夫婦め!!!」
「元帥、醜い嫉妬は妹の二の舞になりかねません」
オースター侯爵の言葉に、アデルが顔を真っ赤にして憤慨する。ふたりを置いて、ジークルドはラダベルを連れて部屋から出たのであった。
「胸中の霧が晴れた気分だ」
アデルが頬杖をつきながら、瞑目する。
「あぁ、ラダベル。ちなみにだが教えてやろう」
アデルのウォーターブルーの瞳が開かれる。ラダベルをまっすぐと見据えた。
「僕にお前と婚約破棄するよう助言したのは、あの罪人だ」
まさかの事実に、ラダベルは驚愕した。
アナスタシアが、アデルに婚約破棄の助言をしていたなんて。そのおかげでアデルと別れることができたし、死ぬ未来を回避することができた。ラダベルは、アナスタシアに少しだけ感謝したのだった。
アデルの詳しい説明としてはこうだ。ラダベルと婚約をしている際に南部を訪れた頃のこと。彼女とそろそろ結婚したいが、その一線を越えてしまえば確固たる地位が手に入ったからといって、彼女が自分に執着してくれなくなるのではと懸念を抱き、葛藤していたらしい。自分に執着心を見せてほしい、とアナスタシアに偶然相談したところ、「押してダメなら一旦引いてみてはいかがですか?」と助言を受けたらしい。そのため皇城にてラダベルに対し、婚約破棄を申し出た。すぐに軌道修正を図ろうとしたが、その前にラダベルが自らの意見を押し通してしまったため、結局婚約破棄となってしまったのだ。
「我が妹の単なる嫉妬だな……。帝国には伯爵夫人の噂が広まっていただろう? アナスタシアは愛する人と結婚できなかったのに、帝国屈指の悪女であった伯爵夫人は、当時の愛する人である元帥と結婚できるのか、と嫉妬に駆られたんだ。だから、元帥に的外れな助言をしたのだろう……。それに騙されるあなたもあなたですが」
オースター侯爵がアデルを横目で見ると、彼は頬を真っ赤にして顔を勢いよく背けたのであった。
もしかしてオースター侯爵は、分かっていたのだろうか。アナスタシアは、救いようがない妹だということを。唯一の妹を失う羽目になって、オースター侯爵も苦しいだろうに。それなのに、なんて理性的な人なんだろうか、とラダベルは感心する。
きっとアナスタシアからしたら、ほんの少しの出来心だったのだ。それがまさか、自身の首を絞める末路となるとは、彼女も想像していなかっただろう。自身の助言を真に受けたアデルがラダベルと婚約破棄して、その結果ラダベルはアナスタシアの想い人であるジークルドと結婚してしまったのだから。星の巡り合わせは、彼女を残酷な末路へと導いた。彼女の人生は何から何まで上手くいかない。ラダベルも相当だが、心から愛するジークルドと一緒になれたことが何よりの救いだ。
「僕は明日にでも皇都に向けて出発する。罪人と一緒にな。それで良いな? オースター侯爵」
「はい、構いません。アナスタシアの保護者として私も皇都に参りましょう」
アナスタシアは一体どうなってしまうのか。何かしらの裁きは避けられないであろうし、極刑も免れることはできないかもしれない。震えそうになった時、ジークルドに手を握られた。
「ラダベルが心配することは何もない」
そう言われ、ラダベルは息を吐いた。
「元帥、オースター大将。妻が長旅で疲れてしまっているのでこの辺りで失礼させていただいてもよろしいでしょうか?」
ジークルドに肩を抱かれる。彼のたくましさに、ラダベルは胸を高鳴らせた。
「フン、勝手にしろ!! このバカ夫婦め!!!」
「元帥、醜い嫉妬は妹の二の舞になりかねません」
オースター侯爵の言葉に、アデルが顔を真っ赤にして憤慨する。ふたりを置いて、ジークルドはラダベルを連れて部屋から出たのであった。
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