番とは呪いだと思いませんか～夫が5人とは私をビッチ属性にしたいのでしょうか～

２５章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気

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　ルークが自分の部屋に戻ろうと２階へと続く階段に足を掛けたところで下から声を掛けられた。

「ルーク。シェリーに謝ってきなさい」

　父親であるオリバーが地下の部屋から上がってきてルークに声をかけたのだった。しかし、ルークはというとオリバーを一瞥しただけで、そのまま二階に上がろうとする。

「ルーク」

「僕が子供だからって、黙っていたんだよね」

「何を拗ねているかわからぬが、シェリーにあの態度はしてはならない」

「姉さんも父さんも僕のことを馬鹿にしているじゃないか！！」

　そう捨て台詞を言ってルークは二階の自分の部屋に戻っていった。
　その姿にオリバーは首を傾げる。なぜ、ルークがあのように怒っているか、本当にわからないようだ。

「何だか大変なことになってるねー」

「ヨーコか」

　オリバーの背後にいつの間にか立っていた人物の名を呼ぶ。まるでそこに居るのが当たり前だと言わんばかりの態度だ。

「反抗期だよね。陽子さんの弟も色々こじらせてグレちゃって、同じ様な仲間とつるんでいたの思い出しちゃったよ」

　陽子はウンウンと頷きながら、勝手知る屋敷の中を歩き出した。

「今すぐ言っても、きっと聞く耳持たないよ。時が解決してくれるか。第三者に期待するかだね。じゃ、陽子さんはササっちを慰めてくるよー」

　今すぐは解決出来ないという陽子の背中を見て、オリバーは視線を２階に向けてため息を吐く。ルークの態度は己には理解できないことだと、地下に戻っていった。



　翌朝、シェリーは早く起きてルークの為に朝ごはんを作っていた。いや、ただ寝れなかったのだ。ルークに嫌われた事が相当堪え、陽子に『そのうちいつも通りのルークくんになるよ』と言われたものの、その内というものはいつの事だろうかと、落ち込み、しくしくと泣き、今のシェリーは目を泣きはらし酷い顔だ。
　それでもルークの為に朝ごはんを作っていたのだ。

　そのルークがダイニングに顔を出した。

「ルーちゃん！おは「当分家に戻らないから」」

　シェリーの言葉を遮るように、ルークから衝撃的な言葉が出てきた。

「え？」

　シェリーはルークが何を言っているか理解できないでいた。

「ライターさんのところでお世話になるから、冬期休みの間は戻らない」

　その言葉に流石のシェリーも膝から崩れ落ちる。ルークの存在が生きがいだと言っても過言ではないシェリーだ。昨日の大嫌い発言に続き、家に戻らない発言だ。

「それじゃ」

　と言って去っていこうとするルークに、手をのばす者がいた。

「家族のことだから、口は出さないでおこうと思っていたが、これは流石に無視することはできない」

　カイルだ。ルークの首根っこを掴み、出ていこうとするのを引き止める。

「何するのですか？カイルさん。カイルさんは関係ないですよね」

　体格差は歴然のカイルに首根っこを掴まれながらも、ルークはカイルに関係ないと言い切る。

「関係ないだと？」

　その言葉にカイルは怒りを顕わにする。

「番であるシェリーを泣かせて、それでもシェリーの弟だからと我慢していたが、これは流石に我慢ならない」

　大気が悲鳴を上げる。まだ、雪が降るには少し早いのに、室内で息が白くなってきた。
　そのことに気がついたシェリーは慌ててカイルとルークの側に駆け寄ろうとする。

「カイルさん！ルーちゃんは悪くないです！」

「ヨーコさんちょっとシェリーを引き取ってもらえるか？」

　カイルは何処ともなく声を掛けた。そのカイルの言葉に『いいよー』と軽い返事が帰ってきて、駆け寄ろうとしていたシェリーの姿が光に包まれ、この場から消えて行った。

「姉さん！」

　いきなり光に包まれ、姿を消した姉の姿に思わずルークはその場所に駆け寄ろうとするが、カイルに首根っこを掴まれたままなので、動くことはできなかった。

　そのルークを引きずるようにカイルは移動し、ダイニングのテーブル席につかせた。

「シェリーが、ルークの為に作った食事だ食べろ」

　有無を言わさない威圧的な視線でルークに食べるようにカイルは言う。そのカイルの言葉にルークはガタガタと震えながら、カトラリーを手にする。
　カイルの威圧的な態度もそうだが、この室内は氷点下まで下がっていたのだった。


　いつもなら、温かい食事は冷え切っており、一部は凍りついている物もある。
　ルークはこれでは食べることも出来ないと食べるように言ったカイルを睨みつける。

「カイルさんは何がしたいのですか？これでは食べれないです」

　ルークとカイルの周りにはキラキラとダイヤモンドダストが舞っている。

「シェリーが食事を作り始めたのがいつからか知っているか？」

「なんです？朝早くからと言えばいいのですか？」

　ルークはそんな事、いつもシェリーが作っているのだから、何を当たり前の事を聞いているのかと鼻で笑うような態度だ。

「３歳だ。３歳の頃から、家族の為に食事を作っているんだ」

「え？」