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13章 死の国

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 翌朝?シェリーが目が覚めるとまだ薄暗かった。魔時計で時間を確認しようとすれば、手が動かない。いや、体が動かない。

「起きたいのですが?」

「ん?暗いからまだ早いんじゃないのか?」

 後ろからグレイの声が聞こえて来たということは、この息苦しさから前にいるのはオルクスかと判断したシェリーはスキルを使って無理やり前から抱きついている人物を引き剥がし、ベッドから蹴り落とす。

 自由になった手で魔時計を確認すると、3刻6時を少し過ぎたばかりの時間だった。秋に入ろうかという時期にこの時間にしては暗すぎる。やはり、太陽の陽は地上に届きにくいようだ。

「おはよう、シェリー。起きたのかな?」

 オルクスを蹴り落とした音で、シェリーが起きた事がわかったのかカイルが入っていた。

「おはようございます。今日も4刻8時にここを立つようです。」

 ブライかノートルの伝言を持ってスーウェンが入っていた。どうやら、今日はこの二人が見張りをしていたらしい。

「今日には王との謁見はできるかな?あまりこの国には長いしたくないからね。」

 そう言ってカイルはベッドの上のシェリーを抱き寄せ、口付けをする。

「そうだよな。あんなのに追いかけられるのは懲り懲りだ。」

 グレイは起き上がり、シェリーに近寄って口付けをする。

「対処のしようがないモノは困りますね。」

 スーウェンは少し屈み、シェリーの唇をついばむ。

「おはよう。シェリー。」

 と言いながら、蹴り落とされたオルクスはベッドに這い上がり、シェリーの膝の上でゴロゴロ言い出した。

 シェリーは毎朝の事だが、これは必要な行動なのかと疑問に思いながら、オルクスの首根っこを掴み床に投げ捨てた。

 4刻8時に宿の外に出れば、何故か疲れた様子のノートルと困り顔をしたブライ、少し緊張した様子のイリアが黒い馬車の前で待っていた。

「今日の予定が決まった。」

 ブライが唐突に話し始めた。

「先程、この国の外交官がここに来て、本日10刻20時にモルテ王との謁見が決まったと言ってきた。確かに、2日前に先触れの者を出していたが、直接向こうから出向いて謁見の時間を指定して来たなんて異例だ。いつもなら、王都に着いてから指定の宿場で2日は待たされるというのに、一体何があるんだろうな。」

「私に聞かれても知りませんよ。」

「いつもと違うのは、シェリー・カークスがいることだ。」

「そこの馬車の中の人物を忘れていますよ。」

「忘れていない。はぁ。取り敢えず王都に向かうか。」

 そう言って、ブライは廃墟の街からでるため王都の方向に向かって歩き出した。

「あの外交官が自ら動いたなんて恐ろしい。」

 そうポソリと呟いてノートルもブライの後に続いた。

「シェリーちゃん。あの外交官とモルテ王は怒らせないでね。絶対ね。」

 イリアはシェリーに念押しをして行った。あの外交官?その情報はシェリーの中にはなかった。


 相変わらずの荒野が続く大地を見ながら騎獣で飛ぶこと4刻間8時間本日の目的地、モルテの王都にたどり着いた。
 王都と言っても、王都を守るための外壁もなければ、出入りを制限する門もない。建物の残骸があちらこちらに散らばり、王都で建物が存在するのは、木々に覆われた宿と真っ黒な王城のみ。まるでそれ以外を破壊したかのような有様だった。

 瓦礫しかない王都の中を通り、宿の前にたどり着いた。そこには金色の髪に青い目をした長身の男が、一行を待っているかのように立っていた。

「お待ちしておりました。黒の聖女様。」

 男は黒い聖女を待っていたと言った。その言葉を指すのはシェリーのことなのだろうが、今のシェリーは黒髪ではない。しかし、男はシェリーを見て言ったのだ。

「待っていたとはどういう事だ。」

 グレイが男に尋ねる。今回のことは同行人数は言っているはずだが、シェリーが同行するとは言っていないはずだ。

「我が君がおっしゃったのです。黒の聖女が面白いモノを持ってくるそうだと。あの様にはっきりと物事をおっしゃられたのは本当に久しぶりのことでしたので、余程重要な事と捉えました。」

 男は目を細めシェリーを観察するように見る。

「それはモルテ様の言葉でしょうか?」

 シェリーが男に王の言葉の意を尋ねた。傍から聞くと王の言葉かと念押しの言葉に捉えられるが、男はおかしそうに笑いながら答える。

「くくく。ええ。モルテ様からの御言葉です。我が君は楽しみだとおっしゃられておました。」

 その男の言葉からシェリーは死の神モルテが王にシェリーが訪ねて来ることを神託したらしいことがわかった。

「では王におっしゃった通り贈り者があります。と伝えてください。」

 男はシェリーにこうべを下げ敬意を示す。

「モルテ様の神言は絶対。我々は黒の聖女様を歓迎いたします。」

 そう言って男は影に溶けるように消えた。

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