番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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13章 死の国

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「で、あれは誰です?」

 シェリーはブライに尋ねた。しかし、ブライは『マジで?この国に太陽の陽が差すんじゃないのか?』と頭を抱えており、ノートルは『ありえな。本当に何なんだ?』と青い顔をしてシェリーを見ている。イリアは頬を赤く染めて『流石、破壊神シェリーちゃんです。』と言っている。

 誰も答えてはくれなさそうなので、仕方がなく先に宿に入った。
 宿はやはり昨日泊まったところと同じく帝国風の内装になっており、従業員も全員人族で奴隷石が額に埋め込まれていた。
 ここでも一人、人族であるシェリーに対する待遇は良く、最上級の部屋に通された。その時に従業員が『レガートス様から9刻半7時にお迎えにあがりますと伝言をうけたまわっています。』と言ってきた。
 シェリーは首を傾げながら

「レガートス様というのは誰ですか?」

 と尋ねれば、その従業員は顔を引きつり、ふるふると震えだした。

「さ、先程の御方でございます。」

「名前が分かってもどういう方か全く分からないのですが?」

「ひっ!」

 何故か、従業員が怯え出し、そのまま去って行ってしまった。
 従業員の怯えようはおかしな反応だった。シェリーが知らないことに対して、問題がある風ではなく、まるで何か自分のミスを咎められるような怯えようだった。
 シェリーは部屋の中を視た。先程従業員が怯えた目線の先を・・・テーブル。シェリーはカイル達に部屋の入り口で待つように伝え、ダイニングテーブルの前に行き、とある場所の椅子に座った。

「で、どういう方か分からないのですが?」

 シェリーは大きな一人言のように正面に向かって話しかけた。

「おや?何故、分かってしまったのでしょうね。」

 声だけがしたかと思えば空間が歪み先程の金髪の男性が現れたのだった。

「答えなくてもお分かりになるのでは?神兵軍第一部隊長のレガートゥスティラー様。」

 シェリーは今は存在しない神兵というものと先程従業員が言った名前に似た名を言った。

「くくく。懐かしい名前ですね。ラースの姫君。誰に聞きましたか?」

 シェリーの言った名前を懐かしいと言い、肯定も否定もされなかった。

「マリートゥヴァ様から聞きました特徴と先程の方から聞きました名前から推測しましたが、合っていたようですね。」

「懐かしく、二度と聞きたくない名前の方からですか。今は外交を勤めておりますレガートスと申します。」

「シェリー・カークスです。それで、どのようなご用件でしょうか?」

 お互いが名乗り、シェリーはこの様に隠れていた理由を問う。

「少し気になりましてね。我が君から聞き及んだ特徴と合っていませんでしたから、どういうことかと思いましてね。観察をしようと思っていたのですよ。」

「悪趣味ですね。」

「我が君に害を及ぼすモノは近づけたくありませんからね。」

 確かに王に不審者を近づけるわけにはいかない。

「その昔あなた達が行った事が、理由を変えて未だに行われているからですよ。」

「それは申しわけないことをしてしまいましたね。あれは我々にとって過ちだったと認めていますよ。我々が苦しんでいても手を差し伸べてくれなかった。白き神などを崇め、我々を苦しみから解放してくださった。闇の神の色である黒を迫害していたことは過ちでしたよ。」

 人々の深層に刷り込む様に黒を纏う者に対して差別意識が存在するするのは、魔人というものが出現する前から白き神の名のもとに広大な国土を広げ、信仰を広めてきたカウサ神教国が黒というモノを排除してきたからだ。

「黒を纏った姿を見せてくださいますかね。黒の聖女様。」

「モルテ様の言葉は絶対でしたね。そのモルテ様の言葉を疑うのですか?」

 レガートスは笑った。顔を歪めながら滑稽そうに笑った。

「くくく。確かに。確かに言いましたね。ハハハ。ここが我らの国だと分かってその言葉を言っているのか?」

 レガートスの雰囲気がガラリと変わり、シェリーを威圧した。カイルが素早くシェリーの後ろに付き、グレイ、オルクスは剣の柄に手をかける。スーウェンは己の身長程の杖を取り出していた。
 しかし、シェリーは手で制止、やめるように言う。

「私はモルテ様からあなた達が望めば死のない生から解放していいと言われています。しかし、ここで貴方がその様な脅しをすると言うなら、貴方から解放してあげてもいいですよ。その後どうなるかは知りませんが。」

 シェリーは逆にレガートスを脅す。死ぬことのが無いと思っているから、強気でいられるのだ、それが常識が覆るとすればどうだろう。

「モルテ様が我らを見捨てると?」

「さぁ。私にモルテ様の意など汲み取ることは出来ません。ただ、彼等が望めば解放をしていいと言われただけです。聖女という者は神の手となり世界に干渉することですから。」
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