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2章 闇と勇者と聖女
━━勇者ナオフミと黒髪の幼女━━
しおりを挟む~序章のナオフミと黒髪の幼女の初対面の会話~
序章より
「後産の処置がまだなので、その汚ならしい格好を清めてもらえませんか。あなたの番が汚れてしまいますよ。それから、左に持っている者は本人の身体のところに返しておいてくださいませんか。泣かない赤子と一緒にしておきますので、勇者コジマ ナオフミさん」
これ以上近寄らないよう言葉を放つ、勇者ナオフミ に似ている容姿をしている幼女の瞳は桜の色に揺らめいていた。
4半刻後再び扉が開き服を着替えたのか、綺麗な身なりになった勇者ナオフミが入って来た。
「キレイにしてきたけど、嬢ちゃん誰や。」
「血縁上はあなたと聖女ビアンカの娘です。5歳です。」
「5歳ゆうたら、確かにあのとき産まれてきた子供になるんやろなぁ。でも、そないなことしゃべる5歳児って怖いわ。」
「そうですね。やはり実際に見て確信しましたけど、小嶋さん、◯△商社の受付嬢の井上さんに二股されていた小嶋さんであってますか。」
「ダブルブッキングデート思い出すからやめてや。」
「噂のド天然美人の井上さんに同じ日、同じ時間、同じ場所にデートに誘われて彼氏が二人ならんで彼女を待っていたという。私の職場でも噂になっていましたから。」
「もう、勘弁してや。で、あんた誰や。」
「取引先の佐々木といえばわかりますか、散々脅しのように買い叩かれて、利益ギリギリ出るかという単価まで落とされ、これだけを毎月5年契約するからサンプルもらえないかといわれ、サンプルぐらいならと思い承諾すれば、サンプル百個はないですよね。
一箱はサンプルではありません。商品です。
初めて一人で任された仕事で、いっぱいいっぱいだった頃の私には言えなかったので今言いました。」
「え、それが言いたかったんか。そのためにこの世界に来たんか?」
「そんなわけないでしょ。」
「そうやな、最後に会ったのは、おおきゅうなったお腹抱えて、産休に入るってゆうてたもんな。」
「そのあと病気で死んで、ここに生まれかわってきたのですよ。そんなことで、母さんは1週間ほど出血があるので栄養のあるものを食べさせてあげてください。」
「おう。いきなり話が飛んだ。一緒に来るんやろ、そのとき詳しゅうゆうてくれたらええで。」
「わたしは一緒には行きませんよ。どうやらわたしには、やることがあるらしくその準備をしなければなりませんので。」
「何をするんや。手伝おか。」
「小嶋さんとの仕事は相性が悪いので結構です。」
「いや、いままでのはたまたまやと思うで。」
「わたしのステータスを見ると、メインジョブが異郷の聖女となっているので聖女としての役割があるのだと思うのです。
そして、わたしの使うステータス看破のスキルは真理の目というのです。その人の名前がわからなくても基本ステータスは見れるのですが本名が分かれば本人自身も知らないステータスをみることができるのです。」
「なんや。」
「ここからが本題です。」
「前置き長っ。」
「わたしはその人の番が誰かわかるのです。聖女ビアンカの番は3人。勇者ナオフミと魔導師オリバーと賢者ユーリウス」
今まで砕けていたナオフミの表情が一気に殺気をおびた。
「なんやて。ユーリウスって誰や。そもそもオリバーも番やったて?番は一人じゃなかったんか。」
「文句はそれを設定した白い人に言って下さい。」
「それ誰や。」
「何もかも真っ白い人です。人の夢に介入してきて、名前の確認をされましたね。
ああそうそう。多分、真名を知られると無意識下に世界からの干渉をうけることになります。
例えば、こちら側を選択した方が都合が良くなりそうとか。魔王討伐のときに小嶋さんが選択したことで都合がよくなったことが多々あると聞きました。覚えないですか?」
「めっちゃあるわ。」
「因みに私は本名を名乗っていません。小嶋さんにもです。」
「はぁ?偽名かいな。」
「いえ。旧姓のままの方が仕事をするのに都合がよかったので、仕事では佐々木のままです。」
「そおきたか。」
「その白い人がツガイの設定をし、裏で都合のいいように誘導していると思われます。なので、人の都合ではなくその人の都合です。因みにユーリウスはギラン共和国の賢者の塔に住む賢者です。」
「ギラン共和国なぁ。じゃぁビアンカをつれて帰ることにするわ。佐々木さんおおきにな。」
ナオフミは眠っているビアンカを抱き上げ、殺戮者のような形相で出ていった。
「小嶋さんあなたのユーリウスに対する行動で私もツガイに対する行動を決めさせてもらいますよ。」
相手がいない部屋にシェリーの声だけが響く。
「さて、オリバーにはこれから沢山働いてもらわなければならないのに、首をバッサリ切られてたんじゃ、『聖女の祈りは神の奇跡』じゃ時間が経ちすぎて生き返らないか。『聖者への隷属の棘』で生き返らすことになるのか。」
そんな、一人言を言いながら足元にあった篭を持ち上げ部屋を後にした。
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